解析結果

   ノーマル3Dウイング(FW−24型) における、各部の静圧分布          共通条件  走行速度:180 km/h

                                                                                                                

 下図はゲージ圧(相対圧)を示した図であり、緑部を標準気圧(相対 0気圧)とすると、赤部が正圧、つまり

面を押す作用をする事を示す。同様に青部が負圧、つまり面を引っ張る、もしくは吸うように作用する事を示す。

 とすると、深緑、水色、青、紺の領域で揚力が発生していると考える。 また、黄、赤、橙、桃の領域でドラッグが

発生していると考える。  しかし、ウィングの上面に発生する正圧はダウン・フォースとして作用している点を

忘れるわけにいかない。

 

  地上 630mm 断面  (タイヤ直径:660mm)

 (相対圧)

 考察

  現代のレース・カーでは、ダウン・フォースこそが馬力を地面に伝える手段なのに、皮肉にもサイド・ポンツーンの真上

であるとか、タイヤの真上には揚力が発生している。多分これを気にしての事だろうが、2000年頃のマシーンはこぞって

インダクション・ボックスの脇に「イヤーズ」と呼ばれる小型のフィンを装着したが、2003年のマシーンは、同箇所に左右を

貫通する穴を開けているのが目立つ。これは、リタイヤ時にクレーンで釣る際のロープ穴だと推察するが、空力的効果が

無ければ「イヤーズ」を廃止しないのではないかと考える。

 また、インダクション・ボックスの直後では正圧が陣取っているが、これはドラッグとして作用してるはずだから、なんとか

したいだろう。2003年後半では Williams Fw-25 が、インダクション・ボックスの後端に垂直のフィンを追加したが、これも

黄色の正圧を追い出す工夫かもしれない。

 

  地上 800mm 断面

 (相対圧)

考察

  リア・ウィングの翼端板を境に、内側では正圧となり、外側では負圧となっている。これは、この部位に翼端渦が

存在している事を窺わす。(フロント・ウイングでは、翼端板の外側に小さなパーツを装備して気流を制御しているようだ)

渦を発生させるためには流れのエネルギーが必要である。逆の言い方をすれば、渦が発生する部位からは抵抗という

形でエネルギーが浪費されているわけだ。

  2003年の Renault R23 は、馬力で劣るが空力で勝った好例である。そのルノーが持ち出した変形リア・ウイングは

3種類ほど有るが、前年から使用している、端を切り落とした八角形のウィングでは、この翼端渦を捻じ伏せ、ドラッグを

軽減するのが狙いのようだ。 また、2003年の McLaren MP4/17D がやった方法で、翼端に上半角を設けたウィング

(ルノーもブラジル、オーストリア、カナダ、そしてフランスで使用)は、飛行機で言うところの「翼端失速」のような現象、

つまり、「翼端部における気流の剥離」を減少させるのが目的のようである。

(Fulcrum 著)