空力部品の必要性
1.5リッター時代はタイヤの性能(馬力の伝達能力)がエンジンの馬力より高かったので、より大馬力で、
より小さな抵抗が、速く走る条件だったため、とりわけ空気抵抗を軽減する目的で流線型がもてはやされた。
しかし3リッター時代を迎えると、有り余る馬力を如何に地面に伝達するかという問題の結論として、
全車が翼を備えるようになった。
旋回中にかかる遠心力は、二輪車の場合であれば、ライダーが車体を内側に傾ける事でかなり相殺される。
現にバイクは、レースにおいても未だに翼を着けていない。しかし意図的に傾斜角を操れない四輪車の場合は、
遠心力がタイヤと地面の摩擦抵抗(摩擦係数ではない)を上回った時点で、法線方向に放り出されてしまう。
遠心力を決定する初速度は、このような事情に支配される。タイヤ固有の摩擦係数が、さほど向上しないと
なれば、タイヤにかける荷重が増大しないと、タイヤと地面の摩擦抵抗、つまりグリップの向上は望めない。
しかし車両の質量を大きくすると、グリップも増大する反面、遠心力が大きくなる。
(遠心力を捻じ伏せるためにグリップを増強するのだから、遠心力の増大は目的に対して逆効果である)
更に悪い事に、加速時におけるエンジンの負担や、減速時におけるブレーキの負担も増大してしまう。
そこで、重力中心に向けての荷重のみを大きくする方法を、飛行機の翼を上下反転して装着する事で
実現しようとした。この新しい空力セオリーは現在も発展を続けている。しかし当然、翼の分だけ
空気抵抗は増大する。
自家用軽飛行機であれば、時速100km もあれば離陸してしまうが、F1は時速300km〜350km も出すのに
地上に張り付いている事が土台なにかの間違いだ。
(Fulcrum 著)