エルメート・パスコアルの世界 ライブレポートのおまけ
最終更新日 2002年9月16日



"True People's CEREBRATION" レポート & 観光日記など

"True People's CEREBRATION" では、「新旧‘伝説’のアーティストが集結。 JAZZ, JAM, DANCEの枠を越え「本物とは?」という純粋なテーマを探究する、21世紀型インプロ・ミュージック・フェスティバル」 というスローガンのもとに、世界中からユニークなミュージシャン達が集った。ぼくはエルメート・パスコアルが目当てだったわけだが、その他にも様々な刺激的な音楽を聴くことが出来たので、ここに備忘がてら、イベントについての報告と、観光日記を記す。




2002年6月中旬、ブラジル音楽に造詣の深い JohndoesHP の管理人さんからメールが届いた。なんと"True People's CEREBRATION" というイベントに出演するためにパスコアルが来日するそうなのだ。早速、紹介していただいたサイトを確認したところ、確かに出演者の欄にパスコアルの名前がある。

絶対に行きたい! …ところがどっこい、なんとも運の悪いことに、イベントの開催日と、自分のライブが重なっている。ぼくはこの春から毎月第二日曜に明石のライブハウスに出演していたのだった。正直、ぼくのピアノの腕前は、レギュラーでライブハウスに出演したり、金が取れるほどのものではない。それにも拘わらず、ぼくを見込んでバンドに誘ってくれたリーダーの I 氏には非常に感謝していたし、バンドのメンバーや、音も、とても気に入っていた。安易に穴を空けるわけにはいかない。

嗚呼、折角パスコアルが日本にやって来るというのに、これがもう最初で最後のチャンスかもしれないのに、諦めなければならないのか…と落ち込んでいたが、なんと明石でのライブスケジュールが急遽変更となった。パスコアルを聴きに行ける! ぼくは無神論者なのだけど、この時ばかりは誰に感謝して良いのか分からなかったので、とりあえず神様に感謝しました。

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そうこうするうちに、"True People's CEREBRATION" のウェブサイト上でチケットの先行予約が始まった。イベントは9月7日、8日の2日間。パスコアルがどちらに出演するのか、まだ分からない。しかし、明石ライブの予定が突然変わったということは、もう「あんたはパスコアルを見に行きなはれ!」と言われてるようなもんだ、と勝手に解釈して、思い切って 2日通し券を予約してしまった。\18,500也。う〜ん、キビシイ。 ぼくは事情が合って、非常に給料が少ないのだ。しばらくは節約しなければならないなぁ。

東京でのライブなので、他にも交通費や宿泊費なと相当な出費が予想される。ちょっとでも節約するために深夜バスを検討していたのだが、友人から、疲れてライブどころではなくなるからそれだけは止めておいた方が良いと言われ、素直に従い、新幹線で行くことに決めた。

駅前探検倶楽部 という非常に便利なサイトがあり、出発駅と到着駅を入力すると、かかる時間や費用、どこで乗り換えれば良いかなどを瞬時に表示してくれる。これによると、当日11時によみうりランド内にある会場に入るためには、阪急豊中駅(ぼくの最寄り駅)を6時に出発すれば良い。問題は帰りだ。 8日の内に帰る積もりなら、京王線よみうりランド駅を19時53分に出発しなければならない。もしも、パスコアルがイベントのトリだったら、ライブの途中で抜け出さなければならないかもしれない。仕方ないので、万が一を考えて、9日の月曜日は休暇を取った。ちなみにぼくが病気以外の理由で会社を休むのは、4年前に千里浜へライブしに行った時以来だ。 まあこのくらいは許されるでしょう。

つぎなる問題は宿泊先だが、ぼくには子供の頃から一度カプセルホテルなる施設に憧れていたのだが泊まる機会が無かった。小さなカプセル内で寝るというシチュエーションに、SF的な近未来の大都会のイメージを見ていたのだ。やたらと狭いのも何だか楽しそうだ。この際、カプセルホテルに泊まることにすれば、子供の頃からの夢が叶う上に、安くて済むじゃん、ということで、早速 「旅の窓口」で調べると、おおっ、結構色んな所があるじゃないですか。とりあえず交通の便が良くて清潔そうな「グリーンプラザ新宿カプセルホテル」に泊まることに決定。しかも「旅の窓口」で予約すると割引になる。このサイトは仕事で良く使うんだけど、ホントに便利ですな。

そうこうするうちに、イベントのタイムスケジュールの発表があり、パスコアルは二日目の16時30分からの出演であることが分かった。うん、これなら余裕を持って8日の内に大阪に帰ってこれる。勢いでイベントの2日通し券を購入してしまったわけだが、なかなか面白そうなイベントのようだし、折角だから全部観てやろう。

チケット\18,500-. 交通費はディスカウントの店を利用して往復\25,000-. 宿泊費\3,500.- ということで、食費や雑費なども全て合わせて5万円で収めることが出来るかどうかといったところ。大変残念なことに、イベントが昼前から夜まで続くので、折角東京まで行くのに、他のことをする余裕が全く無い。仮に一泊多く泊まることになったとしても、9日は大阪で自分のライブがあるので、夕方までに帰らなければならない。パスコアルを見るためだけに、わざわざ東京まで行って帰ってくる、という感じになる。まあそれもいいでしょう。そして、新幹線の中で聴くためのMDを作ったりしつつ、万全の準備を整えて、イベントの当日を心待ちにするのであった。

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9月7日、午前 5時半起床。イベントのある日は、何故か目覚ましの鳴る5分くらい前に目が覚めたりするものだが、この日はしっかり熟睡してました。慌ただしく支度をして駅へ。 天気は曇り。天気予報によると東京の降水確率は30〜50%。 野外でのライブなので雨が心配だ。荷物になるので傘は敢えて持って行かないことにしたが、大丈夫だろうか…。予定よりほんのすこしだけ早く家を出て一本早い電車に乗ったら、大阪駅での乗り換えがスムーズにいって、新幹線も一本早いのに乗ることができた。

新幹線は、土曜の早朝なので乗客も少なくくつろげた。外の景色は、曇り空で少々どんよりしているが、久しぶりの遠出なので、気分は爽快。BGMは、先日K氏にいただいたイヴァン・リンスの80年代(?)のアルバム。う〜ん、悪くは無いが、やっぱり70年代の古い作品の方が良いなぁ。しかし、何度か聴いているうちに良くなりそうな予感もする。

曇っているせいで、見晴らしは良いとは言えないが、それでも外を流れる景色を眺めるのは楽しい。ぼくは出張や旅行で他所の土地を訪ねる時、必ず「もしここで生まれ育っていたら、どんな人生だったろう」とか「ここで暮らすことになったら、どんな毎日になるんだろう」ということを考える。車窓の風景を眺めながら、ずっとそういうことを考えていた。

仕事柄、しばしば地方の小さな村を訪れることがある。一年くらい前だったか、某県の山間の村に行った時、腹が減ったので、食べ物屋を探した。地方のことなので、もちろんコンビニなどは最初から期待していなかったが、コンビニどころか飯屋もスーパーも何も無い。車で散々走り回った末、単線の小さな駅の前にある喫茶店を見つけた。早速入ると、昼時なのに客は地元の人らしいオジサンがひとり居るだけ。漫画雑誌を読みながらカレーライスを食べたりなんかしているが、この喫茶店ではちゃんと採算が取れているの?

まあ不便なのは仕方が無いだろうが、ここで生活する人たちは、どこで何をして働いて収入を得て、そして毎日どのように過ごしているんだろうか? 少なくとも車を持っていないと話にならないだろう。しかし子供たちは? 学校は? 病院は? やはり、誰も通らない道路を作ったり、やたらと豪華な公民館を建てることも時には必要なのだろうか?

いま政治は高速道路の建設を凍結するかしないかで揉めていて、ぼくは当然無駄な道路など作るべきではないという意見なのだけど、田舎での生活を考えると、そんなに単純なものなのか、という気もしてくる。亀井静香というオッサンは嫌いだったのだけど、最近、彼の主張を真面目に聞いてみると、なかなか興味深いことを言ってるような気がしてきた。でもそろそろ根本的なシステムを変える時期なんじゃないかな。道州制などは十分検討の余地があると思うんだが。ところで次の民主党の党首は誰なんだろう?

などと、ボンヤリと日本の将来を憂えているうちに東京に入った。何じゃそれ。

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東京に来るのは高校以来だ。仕事で動くのは広島〜名古屋くらいまでの範囲だし、旅行らしい旅行も滅多にしないので、内心ワクワク。流石に大阪より大都市という感じだな。しかし生憎の悪天候で、雨こそ降っていないものの、見晴らしは極めて悪い。高層ビルや東京タワーも上部は霞んで見えなくなってしまっている。ライブ中に降らなきゃ良いが…。

まずは東京駅から中央線で新宿へと向かう。見慣れない景色を見るのは楽しい。しばらく東京に住んで、この辺一帯をぶらぶらと散策したいなあ。やっぱりぼくは田舎より都会の方が好きだな。東京は散策のし甲斐がありそうだ。建築中のビルがいくつかあり、大阪と比べれば活気のある印象だ。というか大阪が不景気すぎるからなぁ。

予定よりも早く新宿に着いたので、駅の周辺を散策していると、雨がポツポツ降ってきた。ちょっと嫌な雲行き。駅のまわりではホームレスの人々が非常に多いのに気付いた。ついさっき、景気が良さそうだと感じたばかりだったのだが。 女のホームレスが多いのと、5〜6人のグループがいくつかあって、楽しそうに歓談しているところが、大阪とは大分違う印象を受けた。きょうびのことだから、もちろん大阪でもホームレスは多いわけだが、みんな一人ぼっちで、もっと寂しそうだったような気がする。あくまでぼくの主観的な印象だけれども。

新宿周辺をウロウロしている時、何枚目かのMDで武満徹のオーケストラ作品集3「秋」を聴いていたのだが、新宿の雑踏と、武満のオーケストラが見事にマッチしてビックリする。普段、景色と音楽がマッチしているかどうかなんて考えることなんて滅多に無いが、この時に限って目に映る光景と音楽がピタっとはまっているように感じた。

ゆっくりしている時間は無いので、そそくさと京王線でよみうりランド駅へ。ちょっと迷子になりつつ京王新線の新宿駅からの出発。電車はしばらく地下を走り、やがて地上に出たが、都心を少し離れると、ビルどころか山も谷も無く、平板な住宅地が延々と広がっている。巨大なビル群は、ほんの数キロ内に固まって林立しているだけだった。

11時前に、よみうりランド駅に到着。雨は相変わらずポツポツといったところだが、いつ本降りになってもおかしくないような雲行き。開演時間が迫ってきているので、まばらに人の流れは出来ているものの、まったく並ばずにロープウェーに乗ることが出来た。よみうりランドのある高台へと、あっという間に昇っていく。グランドで巨人の選手が練習している。曇り空で見通しは悪いが、平板な住宅地がひたすらベターっと続いているのが見えた。 電車で感じたそのまんまの印象。こういうところで暮らすのはどうなんだろうな。散策する時は少々起伏がある方が楽しいのだけど。

程なくよみうりランド内にあるOpen Theter EASTに到着。会場では、チック・コリアとボビー・マクファーリンのデュオアルバムが大音量でかかかっている。客席は、まだ空席が目立つが、後ろの方からぞくぞくと人が集まってきている。腕や背中に刺青のある、怪しげな若者が大勢いる。普段ぼくが行くようなライブとは明らかに客層が違う。そうこうしているうちに小雨が降ってきたので、会場内でレインコートを購入。500円也。ついでにパスコアル Tシャツも購入。3,800円也。むむっ、予定していた総予算の5万円をいきなりオーバーしてしまったよ。露店でビールと串焼ステーキを買い、会場のちょうど真ん中あたりの席で、開演を待つのだった。

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"Day of Uninvisible Sun"

1バンド目のlittle tempoが始まった。レゲエを基調とした音楽だ。ステージ前のスペースに多くの若者が集まり、踊りだした。ステージ上では、スティールパンがフロントに2台並んでいるのに目をひかれるが、その他は普通のバンドと同じような構成。スチールギターが良い味を出していた。なかなか心地良いサウンドだが、あまり尖がったところがなくて、少々物足りない気もする。個人的には、アナログシンセサイザーを駆使していた Hakaseというキーボード奏者の演奏が面白く非常に参考になった。やっぱりこういうプレイヤーもちゃんといるのね。

次は、DJ Kazumaのプレイ。 中央ステージの横にDJ 用の小さなテントが作ってあって、メインステージで次のバンドのセッティングをしている間にそこでDJがプレイする、というような構成になっている。ちいさなテントでのパフォーマンスなので目立たなく、従って観客の反応も悪い。あの扱いはちょっと可哀相だな。しかし残念ながらぼくとしても彼のパフォーマンスは印象に残らなかった。というか、彼が一体何をしているのか最後まで良く分からなかった。

さて、メインステージでは、VooREDOMS(ヴォアダムス)の準備をしている。ドラムを3セットとシンセ(?)を、向かい合わせに円状にセッティングしており、なんだか得体の知れない雰囲気を漂わせている。少々セッティングに時間がかかったが(このイベント全体を通してセッティングの手際が非常に悪かった)、出てきた音を聴いてビックリ。 ビュ〜ンと変な音を出しているシンセ(?)プレイヤーに合わせて、3人のドラマーがドコドコとビートを刻むという感じなのだが、これが不思議にポップで、なかなか聴かせてくれるのだ。メロディーらしい旋律が何も無いのに、1時間にわたる演奏で中だるみするところがなかった。スティーヴ・ライヒの音楽に近いような印象を受けた。このグループについては、名前しか知らなかったが、まさかこんなに面白い音楽をやっているとは。非常に良かった。

今度は、ステージ横のテントで、山本精一&勝井祐二のユニットの演奏。ギターとヴァイオリンのデュオで、空間系のエフェクターを深くかけて、茫洋としたアンビエントな世界を作り出している。サティ的とでも言うのかな。しかしああいうのを生で演奏するというのは、面白いといえば面白いのかもしれないが、個人的にはピンと来なかった。

相変わらずぐずついた空模様だが、どうやら雨は上がったようなのでレインコートを脱ぐ。ステージでは、またしてもセッティングに手間取っている。段取り悪いなぁ。

しばらくしてBLACK FRAMES登場。ステージ中央にマリンバとヴィブラフォンが向かい合わせにセッティングしてある。このイベントではユニークな編成のバンドが多いな。基本的には、テナーサックス、ベース、ドラム、パーカッション(ヴィブラフォン)という編成だが、曲によってはベースを除く3人が、マリンバやヴィブラフォンを叩くところなどもある。ヴィブラフォンを中心とした音色感はユニークだし、サックスにディストーションをかけたり色々趣向を凝らしているが、意外性というか奇抜さは感じなかった。何より残念なことに、曲がもう一つ良くない。演奏に関しても、あまり上手さを感じなかったのだが、ドラムの兄ちゃんだけは、黒人らしいタイトでコシのあるグルーブを出していて、なかなか良かったように思う。

続いてDJブースで、こだま和文というトランペッター(?とDJ(?)のパフォーマンスが始まったが、これはイマイチ。観客に呼びかけて、テントステージの方に注目を集めたのまでは良かった。しかし、ビートに乗せて、宇宙ゴミについて語ったり、トランペットを吹いたりしているのだが、メッセージも音楽も、何が言いたいのかサッパリ分からない。今更「宇宙はゴミでいっぱいだ!」と叫ばれても、だから何なの?という感じで、却って稚拙な印象しか受けなかった。ぼくの感性が鈍いだけなのだろうか?

やがてSUN RA ARKESTRAのメンバーが金ピカの衣装に身を包み、歌いながら登場。サン・ラーについて、どういうグループなのかということは雑誌などで朧げには知っていたものの、実際の音を聴くのは、今日が初めてだ。 音はファンキーなフルバン風なのだけど、ヘタウマ系というか(笑)。しかしこれはこれで全然許せてしまう。そういうコンセプトなんだろうし。リーダーのMarshall Allenのフリーキーなソロにつれて、会場も盛り上がりを増していき、みんなそこら中で踊りまくっている。なかなか凄い光景だ。そのうちメンバーがステージを降り、サックスや打楽器を演奏しながら会場を隈なく練り歩いた。ただでさえ時間が押してるのに、予定の演奏時間をオーバーしてもお構いなし。しかし面白いから良し!(笑) CDを買おうとは思わなかったけれど、良い経験をさせてもらった。楽しかった。

雨は完全に上がっていたが、一日中曇っていたので、陽が落ちるにつれ、どんどん肌寒くなって来た。困ったことに、午前中、雨に濡れたせいか、悪寒がする。なんだか頭も痛くなって来た。一応用意しておいたシャツを着たが、それでも寒い。もともと風邪を引きやすい体質ではあるのだが、参ったなぁ。

テントステージでJUANA MOLINA, KABUSACKI, ALEJANDRO FRANOVの演奏が始まる。アコースティックギターの弾き語りに、音響系のギターやキーボードが重なる。今まで濃いライブが多かったので、フアナ・モリナの透明感のある歌声が、とても爽やかで、少々猥雑な雰囲気になっていた会場に涼風を運んでくれた。最後の方で、山本精一&勝井祐二も加わる。昼の彼らのパフォーマンスはピンと来なかったが、フアナの清涼感のある歌に溶け込むと、なかなか良かった。しかし狭いテントに5人も入ると、ギュウギュウ詰めで大変そうだ。

最後にMEDESKI, MARTIN & WOOD登場! このバンド目当てで来ている人が多いらしく、セッティング時からステージ前のスペースには大勢が詰掛けているし、MMW のTシャツを着ている人数もえらく多い。彼らのCDは3枚(ジョンスコとの共演盤含む)持っていたのだが、3枚も持っている割には熱心には聴いていなかったし、特に気に入ってもいなかった。寧ろ、なんとなく煮え切らないというか、イマイチだという印象の方が強かったくらいだ。ところが今回彼らのパフォーマンスを見て、土下座して謝らなければならないほどの気分になった。とにかくカッコイイ! CDでは地味な印象だったベースのBilly Martinも、ライブで見ると目茶苦茶良いプレイヤーじゃないか。そして、それにも増してMEDESKIのキーボードの素晴らしいこと! オルガンやクラビ、エレピ、生ピアノなどを目まぐるしく弾き倒す。ガブガブッ!と鍵盤に噛り付いているようなワイルドな弾き方だが、オルガンではドローバーを動かしながら繊細に音色をコントロールしている。CDを聴いたときはここまでやってるとは気付かなかった。今度は正座して聴かねば。それにしても物凄いリズム感。左手でも右手と同じようにソロを取っている…どころか左右の手で全く違うことをやったりしている! どうなってるんだ? いやぁ、もうホントに凄くて圧倒されました。流石JAMバンドの雄と言われているだけはある。やっぱりこういうバンドはライブに行かないと駄目なんだなぁ。反省しました。今度大阪に来る時はチェックしておかないと。

MMWの後半の曲で、日本人SAX奏者(little tempo の人?)と、サン・ラーのMarshall Allenとの短いセッションがあったが、どうもとってつけたようで、もう一つだった。このイベントの出演者から考えれば、もっと刺激的なセッションもアレンジ出来た筈だが。MMW は、最後にピアニカ、Wベース、パーカスで、マイクを通さない完全なアコースティック状態でも一曲聴かせてくれた。いやぁ、みんな芸達者やねぇ。 頭痛もすっ飛ぶよ。アンコールこそ無かったものの(サン・ラーが時間オーバーしたせいか?)、大満足なライブだった。

個人的な1日目の総括としては、やはり MMW が圧倒的に素晴らしかったことと、ヴォアダムズというユニークなバンドを知ることが出来たのは大きな収穫だった。 普段から「前衛」という枕書きのあるCDは率先して買うようにしているし、ニッティング・ファクトリーのコンピ CD なども愛聴しているせいか、奇妙なバンドには耐性ができているつもりだったが、それでもまだまだ面白いバンドはあるもんだな。他にも、BLACK FRAMESのような、商業音楽とはちょっと外れたところにあるようなグループも頑張っており、また彼らのようなグループを応援しているファンが少なくないことを知ったのも良かった。

一方、DJと呼ばれる人たちのパフォーマンスが一向に理解できなかったのは残念。 ぼくはシンセサイザー弾きであるし、テクノロジーを駆使した音楽表現には大いに興味があるのだけど、彼らが何をどういう風にしているのかよく分からなかったし、結果として出てきている音楽もハッキリ言ってつまらなかった。あまり知らないジャンル故に、この機会にパフォーマンスに直に触れて、あっと驚かせてくれるんじゃないかと密かに期待を寄せていたのだけど、残念ながら今日に関しては期待外れだったと言わざるを得ない

しかし全体的な雰囲気からすると、明日はパスコアルのライブも含め、十分期待が持てそうだ。とても楽しみ。

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ライブ後、とりあえず新宿に戻り、軽い頭痛が続いていたので、まずはドラッグストアを探す。まあ寝たら治りそうな程度ではあるのだが、万が一こじらせて明日のライブを台無しにしてしまいたくはない。ちなみに欧米の一流企業では、肥満、喫煙者と並んで、風邪をひく者に対しても、自己管理が出来ていないということで厳しい評価をするらしいが(まあ日本でもそうだけど)、そういうところでは出世できそうにないなぁ。

ドラッグストア探しついでに、再び新宿駅の周辺を散策。しかしドラッグストアなんて何処にでもありそうなもんだが、探すとなかなか見付らない。ぶらぶら歩いているうちに小さな薬局を見付けて風邪薬購入。1,000円也。やっぱり色々と出費がかさむ。

今日のライブでは、MMW と他のミュージシャンのセッションがあったので、ひょっとすると明日もMMWとパスコアルが共演する可能性がある。しかし仮にそのセッションが実現した場合、新幹線の時間の都合で途中で会場を去らなければならないかもしれない。何時まで会場で粘ることが出来るのか、青山ブックセンターで時刻表を調べる。 う〜ん、 結局は、駅前探検倶楽部での表示結果通りに動くのがベストのようだ。遅くとも19時40分には会場を出なければ、8日中に大阪に帰れない。もう一泊するかどうかの判断は、明日演奏を聴きながらすることにしましょう。

さて、飯を食うところを探そうということで、また新宿駅を中心にその週辺をウロウロ。ホテルが歌舞伎町にあるので、その界隈も歩き回ってみた。昔、リドリー・スコット監督が「ブレードランナー」を撮るときに、歌舞伎町でロケをしたがっていたという噂があって(実は単なるデマらしい)、どんな街なんだろうと思っていたが、何のことはない、確かに大阪の繁華街より規模はデカイが、特別なことは何もなかった。 まあ、ブレードランナーから20年も経ってるんだから、そういうところを探そうとする方が間違っているんだろうが。そうこうするうちに雨が降ってきたので、結局ホテル近くのロッテリアでハンバーガー。味気ないねぇ。それにしてもハンバーガーが安くて助かる。

雨が本降りになりそうな雰囲気だったので、小走りにホテルを目指す。途中、ホームレスが雨に打たれるままに歩道の脇で眠っていた。彼は、一晩中雨に打たれ続けるのだろうか?

程なくグリーンプラザ新宿カプセルホテルに到着。隣りのコンビニで酒を買って早速中に入った。チェックインを済ませると、まずはロビー横のロッカールームへ。ここで浴衣に着替え、荷物は全てロッカーに入れてから、カプセルには身体一つで入る、というようなシステムらしい。しかしロッカーが狭い。ぼくのように遊びで来てる者はともかく、出張中のビジネスマンだと、このスペースに全ての荷物を入れるのは不可能だろう。

入浴前にとりあえずカプセルを見ておこうということでカプセルエリアへ入る。ううむ、凄い光景だ。廊下の奥まで幅、高さ共に1m強くらいのカプセルの入口がずらっと並んでいる。ミツバチの巣のようだ。寝るだけの施設なので、ところどころで微かな鼾が聞こえるものの、しんと静まり返っている。近未来の世界の、地下に追いやられた労働者階級の人々の住居という感じ…ってちょっと妄想働かせ過ぎ? いやぁ、なんか楽しいな。迷った振りをして歩き回るが、似たような光景が延々と続いているので、ホントに迷いそうになる。しかしカプセルホテルごときでこれだけ大ハシャギ出来るとは、我ながらお目出度い。

カプセルを確認した後、大浴場で入浴。大浴場の隣りにマッサージルームがあって、数人のおばさんが働いているのだが、彼女達からは更衣室も浴場の中も丸見え。セクハラなんて生易しいものじゃないよ。浴場近くではみんなパンツ1枚で歩きまわり、休憩室ではオジサン達がだらしの無い格好でぐったりしている。実に男臭い施設である。ウィリアム・ギブソンの「棺桶(コフイン)ホテル」って日本のカプセルホテルが元ネタかと思っていたが、違うような気がしてきた。

入浴後は酒をカプセルに持ち込み、そのまま落ち着く。なかなか快適。天井が低いのや幅が狭いのは良いのだが、奥行もないため、横になるとゆっくりと足を伸ばせないのは困った。特に長身なわけでもないぼくですら足を曲げなければならないくらいだから、バレーボールやバスケの選手は、ここで寝るのは至難の技だろう。

横になると、具合の良い位置にテレビがあるので付けてみる。こっちの深夜番組は、大阪と違って吉本の若手芸人が出たりはしていない…ってそりゃそうか。女の子がたくさん出ている変なアニメをやってたので見てみたが、う〜ん、ターゲットが分からん。深夜に放送してる割には内容が幼稚な感じだし、何より妙なノリに付いていけない。去年、「千と千尋の神隠し」で賞を獲った宮崎駿が「今のアニメはコピーのコピーだ。 日本アニメの先行きは暗い」と言ったそうだが、同感だなぁ。昔の「母をたずねて三千里」とか「アルプスの少女ハイジ」とか凄かったんだけどなぁ。ああいう児童文学に真っ正面から取り組んで、見事にアニメ化出来るような人材は、もういないんじゃないだろうか。でも、昔は良かったなんて言うのは、年を取った証拠なんだよなぁ。 そういえば「千と千尋」まだ観てないなぁ。

…などと酒を飲みながら考えているうちに寝てしまった。

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9月8日、午前7:00起床。昨晩飲んだ風邪薬が効いたのか、頭痛や身体のだるさはきれいに取れていた。カプセルを出て、外の様子を見てみると、ああ、雨が降ってるよ。ガックリ。天気予報をチェックしたら降水確率は50%前後。参ったなぁ。かといってチェックアウトの時間までカプセル内に潜んでいるのも勿体無いので、とにかくホテルを出ることにした。

ホテルの隣りのコンビニで傘を買い、とりあえずは朝飯が食えるところを探す。日曜の朝だが結構人通りはある。大きなカラスが我が物顔にゴミ袋をつついている。近づいても逃げない。馴れているというよりも人を舐めきっているようだ。流石に昨日の晩から歩き回っているので、大分周囲の様子が分かってきた。まあこんなところの様子が分かった所で意味が無いのだけど。

朝から開いてる店などそれほどあるわけでもなく、仕方なくマクドナルドで朝食。不味いが、安い。ところで、テレビのCMで、子供がマクドナルドのハンバーガーを食べて「美味しいね!」と言うやつがあるのだけど、あれを観ると腹が立つんだよね。まず、子供にマクドナルドのハンバーガーなんか食わせるなよというのがひとつ。アメリカでもマトモな家庭では、子供にハンバーガーなんか食わせないそうじゃないか。もうひとつは、マクドナルドのハンバーガーって絶対に不味いよ。あれを美味しいと思うのは、舌がどうかしてる。しかし、マクドナルドの恐ろしいところは、ぼくのようなアンチ・マクドナルドでさえ、たまにあの不味いハンバーガーを食べたくなるんだよね。一体どうしてなんだろう?

朝食を終えて外に出ると、雨が激しくなって来たので、慌てて新宿駅に逃げ込む。都庁でも見物しようかと思っていたのだけど、この雨じゃなぁ…。暇を持て余して新宿駅の地下をウロウロ歩き回る。結構広いじゃないか。地下通路で各線に連絡できるようになってるのはどこの都市も同じなのね。隅々まで見て回ったので、また東京に来ることがあれば、新宿駅での乗り換えはバッチリだ!…って、何やねん、それ。

あれっ? 今朝コンビニで買った筈の傘は何処へ行った? …参ったな、どこかに置き忘れてきたらしい。まあいいや。朝っぱらから散々歩いたので、また探しに行くのも面倒くさい。

どの店もまだシャッターが下りているし、そのうち見る物が無くなったので、喫茶店でコーヒーを飲みながら、本を読んで時間を潰した。いやぁ、「小公子」は面白いねぇ。しかし、いい年こいて喫茶店でこんなの読んでるのも何だか。

適当な時間になったので店を出ると、いつの間にか雨は上がり、日が射している。邪魔な傘が無くなって、却って良かったよ、などと強がりを言いつつ駅へ。そのまま真っ直ぐよみうりランドに向かう。

会場内の食べ物がどれも酷かったので、駅近くのコンビニでおにぎりを購入。昨日より人が多いようで、ロープウェーではかなり並ばなければならなかったが、一気によみうりランドのある高台へと昇っていくと、晴れたお陰で、昨日は見えなかった都心のビル群が見えてきた。ふと「コインロッカー・ベイビーズ」を思い出す。

会場に入ると、開演時間が 15分早まったとのアナウンスが聞こえてきた。おそらく昨日セッティングの段取りが悪くて、だいぶ時間が押してしまったからだろう。パスコアルTシャツを着ている人が大勢いる。ちょっと嬉しい。既に客席の中央部分はほとんど埋まっていたので、ステージへ向かってやや左寄りの、前の方の席に座って開演を待つのだった。

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"Wizard's Daydream"

イベント2日目はTHE SLIP の演奏からだ。ギター(兼ボーカル兼キーボード)、フレットレス・ベース、ドラムのトリオだが、結構良いじゃないか。ぼくもフレットレス・ベース弾きなので、自ずとベーシストに目が行くが、なかなか上手い。パーシー・ジョーンズ系か。ギタリストは、ギターの構え方がジョンスコそっくりなのに、アウトしてくれないので何かムズムズする(笑)。メンバーはバークレー音楽学院出身とのことだが、まさしくそんな感じのちょっぴり生真面目なファンクを聴かせてくれた。機会があったらCDを買ってみてもいいかな。

続いてDJブースでTBAが始まったが…、何してるの? 普通にジャズのCDをかけているだけのようにしか見えない。最後は、何故かパット・メセニー・グループの"imaginary day"に入っているフラメンコ調の曲をそのままかけて終わったが…。一体何だったんだ?

昨日に続いてセッティングで手間取っている。しばらくバタバタしてからメインステージでUAが始まった。UA は大学の頃に3〜4曲コピーしたことがあって、その時の印象は悪く無かったのだけど、はっきり言って今日のステージはもうひとつに感じた。やりたいことは何となく分かるんだけど、バンドのメンバーの音楽性と噛み合ってないというか、全体的にとても中途半端。 ウッドベースのピッチも悪いような気がした。もちろんそれなりに良いところもあって、例えばアップテンポの曲での、UA の声の伸びは流石だった。もっとアップテンポの曲を中心に選曲した方が良かったんじゃないかな。ひとつ注意を引かれたのは、朝本浩文のキーボードから、浮遊感のある不思議な音色が出ていたのだが、ひょっとしてオンド・マルトノ? 確認は出来なかったが、気になるな。

UAがTHE SLIPの熱烈なファンだとかで、一曲だけTHE SLIPの3人が加わって演奏した。THE SLIPのギタリストが、とても一生懸命にソロを弾いていた。純粋に音楽が好きな青年という感じだ。3人とも礼儀正しくて好印象。

昨日とは打って変わり、ジリジリと日差しが強くなってくる。帽子を持って来て良かった。更に首筋がやけるのでタオルをかける。ぼくにしては珍しく用意周到。

次はDJブースでレイハラカミの演奏だが、結構良いじゃないか。いかにもテクノという感じの電子音と機械のビートが全体を支配するが、細野晴臣のテクノにも通じるような、飄々とした間合いとポップなセンスが同居している。これは気に入った。彼は、弁当箱くらいの小さな箱をいじっており、手元の動きと音がシンクロしているので、これまでのDJ以上に「ちゃんと演奏している」という感じがした。しかしやっぱり何をどう操作しているか分からないので少々もどかしい。今度の休みは楽器屋に行って機材をチェックすることにしよう。

Black Framesは、変なマスクをかぶって登場。このイベントでは2回目のパフォーマンスとなるわけだが、演奏の方は、昨日よりも気合が入っているように感じた。心なしか客のテンションも高いようだ。当然ながら構成を変えてきているが、昨日ウケの悪かったクィーカのロングソロを、クィーカとサックスとのバトルに変更して盛り上げたりと、流石にプロやねぇと思わされた。ただ、やはり曲がイマイチだという感じが否めない。惜しいなぁ。 

小さいステージでのJUANA MOLINA, KABUSACKI, ALEJANDRO FRANOV + Yamamoto & Katusiは、読んだまんま、昨日のフアナのユニットに、最初から山本&勝井のコンビを加えており、音も昨日の聴いたのと同じ。しかし、イベント全体の構成を考えれば、このタイミングでの彼女達のパフォーマンスは、一服の清涼剤のような役割を果たしていると言えるかもしれない。それにしてもテントが狭くて可哀相だ。あれは何とかならなかったのかなぁ。 

さてさて、高まる期待の中、Hermeto Pascoal の出番がやってまいりました! パスコアルのライブについては、”そして新たな伝説が生まれた −パスコアル・ライブレポート 2002”で、詳細にレポートしているので、そっちを読んでください。 

パスコアルの終演後、アンコールの手拍子をかき消すように DJ Klockのパフォーマンスが始まった。おおっ、これはぼくがイメージしてる DJ の王道的なプレイとでも言おうか。なかなかカッコイイような気がしたが…、実はパスコアルを観た興奮が冷めやらなかったのと、帰りの時間が気になり始めたのとで、気が散ってしまって、どんなだった良く覚えてなかったりして。

とうとうイベントのトリであるMEDESKI, MARTIN & WOODが登場。やっぱり上手いねぇ。混沌としたフリースタイルで始まったが、ウッドベースから女声ボーカルのような不思議な音が出ている。何を使っているんだろう? 全体的に、昨日に比べてややファンク度が低くなり、そのかわり前衛度が高くなったような印象を受けた。さてはパスコアルに触発されたな(?)。

MMWは、昨日に続いて素晴らしい演奏を聴かせてくれているが、当然ながらぼくの最大の関心は、パスコアルとのセッションが実現するのかどうかということだ。しかし会場を出なければならない時間は無情にもどんどん迫ってくる。パスコアルとのセッションはあるのかないのか…、ああイライラするなぁ。

とうとうタイムリミットの19時40分になった。東京にもう一泊するか、駅へと走るかの決断を下さなければならない。ステージでは白熱の演奏が続いているが、パスコアルは、まだ登場する気配を見せない。ここで、ぼくは「MMWとパスコアルとのセッションは無いに違いない」と結論を出した。全く根拠は無いのだが、何故か確かなことのように思われた。というわけで、まだ演奏は終わらなかったが、走って会場を出て、ロープウェーを目指したのだった。

さて、イベント2日目の総括だが、ただただパスコアルが素晴らしかった。まあ、パスコアルについては、こっちで、十分過ぎるほど熱く語っているのでここでは繰り返さないけれど、ぼくなんかパスコアルを見るためだけに大阪からわざわざ来たようなもので、それはもう過剰なくらいの期待を寄せていたわけだが、それに十分応えるだけの素晴らしいステージを見せてくれたことには心底感動した。いやぁ、本当に来て良かった。

MMW の演奏は昨日に引き続いてこれまた良かったし、The Slip もなかなか。 レイハラカミの音楽も面白かった。あくまでファンク寄りのグルービーなバンドが主体だったので、「インプロ」を前面に押出すにはちょっと弱い気もするが、それでも「21世紀型インプロ・ミュージック・フェスティバル」と自負するだけの面白いメンツを揃えていたように思う。

意欲的なイベントであるし、全体的には高く評価したいところだが、セッティングの手際が悪かったのと、テントステージの扱いが悪いように感じたのがマイナス点かな。

個人的な予想だけど、もしも再びこのイベントがあるとしたら、更にファンク度を高めて、P-Funk周辺のミュージシャンなんかを集めてくるような気がする。オーネット・コールマンあたりの大御所も呼べたら凄いんだけどなぁ。果たして実現するだろうか?

何はともあれ楽しいイベントでした。主催者に感謝。

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会場を後にしてロープウェー乗り場へと急ぐ。とっくに日は落ちて、あたりは真っ暗だ。ちらほらとだが既に帰途についている客がいてビックリする。まだMMWの素晴らしい演奏が続いているというのに…。ロープウェーは動きがトロくて少々イライラさせられたものの、ゆっくり東京の夜景を見ることが出来てよかった。昨日は、進行方向の逆向きに座らされたために、夜景を殆ど見ることが出来なかったから。しかしひとり静かに夜景を見てると、不思議に落ち着くね。

ロープウェーを降り、そのまま走ってよみうりランド駅に駆け込んだのが19時51分。53分発の電車に乗らなければならなかったので、きわどかったがギリギリセーフ。

ああ何とか今日中に帰ることが出来たな、などと早くも余裕をこいていたが、あれっ?、おかしい。53分になっても電車が来ないぞ。まさか駅前探検倶楽部が間違っていたのかと思い、駅の時刻表を確認してみたが、やはり電車が到着しなくてはいけない時間を過ぎている。

一人でやきもきしていたが、ようやく5分遅れで電車が到着。「人身事故の為、5分ほど遅れております」とのアナウンス。 何てこった、こんなことは計算外だ。更にアナウンスは続く。「この電車は調布で特急に連絡する予定でしたが、事故で遅れたため、特急は先に出ました。御急ぎのお客様には大変申し訳ございません。」

おいおい、参ったなぁ。かなりタイトな乗り換えスケジュールなので、この調子だと新幹線に乗り遅れそうだ。こんなことなら、MMWを最後まで観るんだった。ひょっとしたらパスコアルとのセッションもあったかもしれないのに・・・。無駄に一泊しなければならないのか・・・。

一応、明大前で特急に乗り換えたものの、本来なら乗る予定だった新宿20時14分発の快速もとっくに乗り逃がしてしまっている。少々ガックリ来ていたが、もう一度乗り換えスケジュールを確認。現在20時20分。新幹線の出発時刻は20時50分。駅前探検倶楽部では、乗り換え時間に若干の余裕があるから、ひょっとすると、乗り換えのときに全力で走れば、間に合う可能性があるんじゃないか?!

当初の予定では、もう一泊するくらいはやぶさかじゃなかったのだが、MMW(とパスコアル?)を振ってまで会場を出たというのに、無駄な一泊になってしまうことが悔しかったので、とにかく駄目で元々、出来るだけやってみようと決心。不意のアクシデントをちょっぴり楽しむ気分もでてきた。

京王線新宿駅に到着次第、JR新宿駅に向かって猛ダッシュ。非常にきわどかったが、運良く19時30分発の快速に乗ることが出来た。しかし本来の予定より16分も遅れている。新幹線に乗れるかどうか、まだ分からない。

やがて東京駅に到着。新幹線の出発まであと4分だ! 新幹線のホームに向かってダッシュ! いやぁ、本気で走った甲斐がありました。なんとか19時50分発の新大阪行きに乗り込めた。新宿でも東京駅でも、少しでも歩いたり迷ったりしていたら間に合わなかっただろう。最初の電車が遅れたからといって、諦めてしまわずに良かった。

新大阪行きの最終だったが、乗客はそれほど多くもなく、ゆっくりと座ることが出来た。 弁当はともかく、土産を買う時間が全く無かったのが残念だ。 バンドメンバーに何か買って帰ろうと思っていたのに仕方ない。きわどいタイミングで間に合ったことに気を良くして、ちょっと奮発して車内販売のウナギ弁当を買ってやった。大して美味くないなあ(俺は食べ物に関する文句ばっかりだ)。そして更なる災難があることも知らずに、のんびりと過ごすのだった。

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MDを聴きながら弁当を食べていると、何故か小田原駅で停車した。ここで停まる予定は無い筈だが…。何かアナウンスがあったようだが、MDを聴いていたので聞き逃してしまった。まあどうせ大したことじゃないだろう。安心しきって食後のコーヒーを飲む。しかし新幹線のコーヒーは不当に高いな。そのうち、おかしいと気付き始めた。いくらなんでも停車時間が長すぎる。MDを止め、アナウンスを待つ。

「現在静岡、三島間で激しい雨のため、運転を見合わせております・・・」

またかよ! 慌ててスケジュールを確認。本来なら23時43分に新大阪に到着後、JRで大阪駅まで行き、更に阪急に乗り換えて豊中に帰る予定だった。しかしこのペースだと間違いなく終電に間に合わない。参ったなぁ。とほほ。

40分近くも小田原で停車した後、ようやく新幹線は動き出した。雨のため徐行運転で、度々止まったりしており、非常にゆっくりとしたスピードだ。つくづく電車運の無い日だよ。やがて雨が激しく窓を打ち始めた。まあでもパスコアルのライブ中だけは晴れていたんだから良しとしようや。

とりあえず時間はたっぷりあるので家からもって来ていた雑誌をパラパラとめくる。「アーキテクチャ」なるものについて。自動改札機の導入によってキセル乗車が無くなったという例を引きながら、これからの社会は、不正に対して良心に訴えたり罰則を厳しくするのではなく、そもそも不正が出来ないようなシステムへと変わっていく、などということが書いてある。東浩紀の文章だ。そういえば数年前の JCO臨界事故の時、テレビコメンテーターがマニュアルを勝手に改変した会社や担当者を責めるのに対して、専門家が「マニュアルの改変を許した施設の設計と、その設計を承認した科学技術庁に責任がある」と発言していて、流石に専門家の言うことは違うな、と感じ入ったものだった。しかし、そのうち人の心から倫理どころか良心や善意すらも無くなってしまいそうな勢いだな。

それにしても希望を持てるようなニュースが何も無い。一体これからの日本はどうなるんだ!と一人で憤慨しながら雑誌を閉じる。雑誌は読み終えると直ぐに捨てられるところが良い。ぼくは本を捨てるのが下手で、つまらない本でもついつい取っておく悪い癖があるのだ。まあ本好きなら大抵そうだろうけど。

さて、ようやく新大阪に到着。はぁ〜長かった。新幹線は、結局 1時間20分遅れで、時計は既に午前1時 5分をまわっている。さすがにもう電車は無くなっている。同じ新幹線に乗っていた乗客達は一様にやれやれといった表情だ。「御休み戴けますように新幹線を一台寝台用として用意しております」とのアナウンス。敢えて新幹線で一泊するのも一興かなとも思ったのだが、新大阪から豊中まで歩いて帰ることにする。タクシーの行列を横目に、新大阪駅を出た。

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ぼくは無類の散歩好きで、阪急の豊中駅の近くに住んでいるのだけど、12kmほど離れた梅田駅まで、電車なら13 分なのだが、わざわざ2時間かけて歩いたり、それどころか暇な時は、万博公園あたりまで行くこともある。新大阪から歩いて帰るくらいどうってことないのだ。新大阪から豊中まで直線距離で8km。ゆっくり歩いても午前3時くらいまでには帰り着けるだろう。

歩き始めて間もなく、最後のMDをセット。スクリャービンのピアノ練習曲全集。おおっ、これで今回用意したMDを全て聴くことになる。余裕を見て、多めに持ってきたつもりだったのに。幻想的なピアノをBGMに、深夜の街をテクテクと歩く。

新大阪から江坂周辺にかけては、たまに散歩することがあるし、近くの東淀川にあるレイズスタジオへも自転車でよく来る。それなりに土地カンがあり、迷ったりすることなどないが、しかしながら、あんまりあっさりと家に帰ってしまったのではつまらないので、車道をなるべく避け、わざと分かりにくい住宅地の中を歩く。車道近くでは、深夜と言えど車が絶えることはないが、住宅地に足を踏み入れると流石に静まり返っている。

ぼくはたまに深夜に散歩することがあるんだけど、静まり返った夜の町をぶらぶら歩くというのは、女の子には味わえない愉しみだろうなぁ。最近は物騒だし。こんな時間に一人で歩いていると、人の姿を見た時は、安心よりも寧ろ警戒心が働く。向こうにすればぼくの方こそ挙動不審者に見えるのかもしれないけど。

神崎川をわたり、出来るだけ車の少ない静かな道を選びながら豊中を目指す。スクリャービンを聴き終わったので、次は東京の雑踏に異様にマッチしていた武満の「秋」を再びかけてみた。いやぁ、やっぱりいいねぇ。個人的には、有名な「ノーベンバー・ステップス」よりも「秋」の方が好きだ。しかし夜遅く人通りの無い道を歩いている時に、いきなり耳元でベベン!と琵琶が鳴ったり風のような尺八の音が聞こえてきたりするのは雰囲気がありますなあ。

ある建物の前を通る時、何気なく看板を見ると、「高川図書館」とある。こんなところにあったのか。高川図書館は前から探していたのだ。たまに通る道だったのだが、ここが図書館だったとは気が付かなかった。何で昼間に通る時に気付かなかったのだろう? 図書館マニアとしては、また是非来なければならんな。

そうこうするうち176号線に出て、後は車道沿いに歩いて帰宅した。帰宅時間は午前3時。途中のコンビニで買ったビールを飲む。ふう、流石に疲れた。そりゃ、東京で散々うろつき回った上に、新大阪から豊中まで歩いて来たんだから当たり前か。一応休暇を取っておいて良かった。

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ということで、ぼくのパスコアルライブ鑑賞旅行は、ここに幕を閉じるのでありました。それにしても「パスコアルを見に東京まで行って帰ってきました」という、ただそれだけのことに、よくもまあこれだけの長文を書けたもんだ。でもこういうのは数年後に読み返すと、きっと面白い・・・かなぁ。 もしも最後まで読んだ暇な人がいたら、お疲れさまでした!



追記1: 後で確認したところによると、結局 MMW とパスコアルとの共演は無かったそうだ。ライブの途中で席を立ったぼくの判断は間違っていなかった、…と言いたいところだが、その後の災難を考えれば東京でもう一泊しても良かったような気もする。まあ結果として面白かったからいいんだけどね。

追記2: 帰宅したその日にライブがあったのだが、疲れのせいか満足いく演奏は出来なかった。反省。








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by ようすけ