私のたまらん坂〜坂道探訪〜
                    多摩蘭坂拡張について(どんちゃん画報vol.59より)

 清志郎ファンなら誰でも一度は訪ねておきたい、聖地多摩蘭坂。言わずと知れたRCサクセションの名曲のタイトルでもある。「たまらん、たまらん」と口に出してしまうほどのキツい坂ではないが、なかなか趣のある坂道だった。そんな雰囲気を醸し出していた要素の一つに、登り切る手前右手の石垣がある。そしてそこに書き残されたファンの人たちのメッセージ。ところが、その石垣の奥に大型マンションが建設されるに伴い、道路が拡張されるという。従ってファンの想い出手形でもあるあの石垣も取り壊される事に?! 坂自体が無くなるわけではないにしても、“多摩蘭坂”という表示はどこにもありゃしないあの道で、初めて訪れたはいいが「ココはホントに多摩蘭坂なの?」と不安になりつつ登っていった時、あの石垣を目にし、「やっぱココだ!」と確信、それと同時に喜びがこみ上げてくるのを感じたファンも少なくないハズだ。そんな思いを受け止め続けたあの石垣が無くなってしまうとしたら、やっぱり切ない。なんとかならんものかと行政の窓口をあたるうちに、工事を直接請け負う東京建物(株)さんに、話を伺う事ができた。以下そのときの内容をまとめました。
 多摩蘭坂が拡張されるのは事実。認可が下り次第2月中旬には着工する予定との事。ただし、すでに東京建物(株)さんにもファンの方達から{石垣を取り壊さないで」という熱い要望はたくさん届いており、検討を重ねた結果、当初の予定を大幅に変更して、なるべく今の雰囲気を壊さないように石垣は一部をそのままに、それ以外の部分は後ろに引っ込め、新しい石で石垣を組むとの事。つまり“石垣”はあの坂に引き続き存在していくのである。ところが、そのまま残される石とは坂の上の方の事で、取り払われてしまう大部分の石とは、それより下の方の石、すなわちファンのメッセージがたくさん刻まれたものなのだ・・・。
 東京建物(株)さんはそこに建設するマンションを販売するところでもある。ファンにとっては思いのかけらだとしても、新しく入居する何も知らない住人にとっては、ただの“イタズラ描き”にしか映り得ない石垣のメッセージ。せっかく真っさらに近い状態になった石垣に、それをまた新たに描かれることを助長しかねない計画だというのに、忌野ファンの声を尊重して下さったというワケだ。何でもない土手とかにすれば、コストも手間も入居者からのクレームも、その分は省けていたものを。石垣が残るように働きかけたファンの皆様にもほんとうにありがとうと言いたいが、それを真摯に対応して下さった東京建物(株)さんにも感謝したい。ここまで書けばカンの良い皆さんの事、何を言わんとしているかはもわかりですね。ここは一つ、東京建物(株)さんのご厚意にお応えして、もうメッセージを書くのは・・・じゃなかった、そこに建つマンションの全118戸を、忌野ファンだけで占めようぜ! ビバ!!ユートピア!! これで石垣のメッセージもへっちゃらさっ!

 FCとしても、多摩蘭坂を愛する皆さんの為に何か出来る事はないだろうかと考えた末、取り払った石を20〜30コでも引き取って希望者にプレゼントしようと、東京建物(株)さんに打診してみた。すると、「もちろん結構ですよ。でもそうなるとダンプカー1台はチャーターして頂かないと・・・」って、えぇ〜っ?!あの石、大きいものでもせいぜい漬け物石程度のもんだろうと高を括っていたのだが、うまっている部分が相当デカいらしい。「ま、現場とも相談してみて、表面の部分だけ削り取れるようだったり、小さ目の石があったらお渡しします。」とのご返答を頂いたので、ご希望の方はハガキに「イシほしー」と書いてふぁんくらぶっまで送って下さい。

 次号よりこのコーナーでは、各界著名人をお迎えして、坂にまつわるエピソードをご紹介しつつ、坂道探訪を繰り広げたいと思います。第1回めの登場は、あの忌野清志郎さんを予定。皆様をめくるめく坂道の世界へとお導き致します。乞う御期待!


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