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■砲手の役割
----アリサ:大砲関係の話になりましたので、次は砲手についてお願いします。
カティエ:一言でいえば狙って撃つ!
----アリサ:・・・あはぁ、シンプルですね。もう少し具体的にお聞きしてよいですか?
シスカ:まずは戦車長から目標の方向と距離、種類などが伝達されると、砲手はその方向へ大砲を向ける。
カティエ:これがまた重労働なんだなー。あの砲塔は人力で回しているんだよ。
----アリサ:人力だったんですか!?
シスカ:T−34は人力。電動式も開発中らしいと聞いたことはあるけど。ちなみに、ドイツ戦車は人力式もあるしエンジンで回していることもある・・・らしい。
カティエ:ひたすら左手で砲塔旋回ハンドルを回し続けるんだ、ぐ〜るぐるっと。
そして右手では砲身の俯仰角…つまり縦方向の角度を調整するハンドルを回してね。
----アリサ:そうして、狙いを定めるわけですね。といっても2000メートル以上離れた目標を狙うんですよね。
シスカ:そう、だから、ただ狙えばいいというものではない。
目標を照準に入れてるだけじゃダメ。風向き、目標までの距離、主砲のクセ…そういった要素を把握して微調整する。
----アリサ:この微調整というのが、なんだか難しそうですね。
シスカ:そう、こればっかりは砲手の経験と勘が頼り。
----アリサ:なるほど、ボロディン少尉が言っていた、サーシャさんが優れた砲手だというのはそういうことだったんですね。
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カティエ:狙いを定めたら撃つ!、ずど〜ん!
シスカ:違う、戦車長の「撃て」の指示で撃つ。
カティエ:…そうでした。二号車は戦車長が頼りになんないから…。
■機関銃手兼無線手の役割
----アリサ:機関銃手兼無線手というのは?
シスカ:それも読んで字のごとく。
----アリサ:機関銃と無線機を操作する担当なんですね。
シスカ:…そう。でも我が小隊にはその役目をしているメンバーはいない。
----アリサ:なるほど、T−34を4人とか3人で動かす場合、とりあえず欠員でも大丈夫なポジションなのですね。
シスカ:まぁそう。でも、いればそれに越したことない。整備を手伝ってもらったり、操縦を手伝ってもらったり。
----アリサ:なんか、機関銃や無線とあまり関係のない作業が…
シスカ:…あなた、やってみる?
----アリサ:え、遠慮しておきます…。キツそ〜…
カティエ:戦車乗っててキツくない仕事なんてないよ。
■操縦手の役割
----アリサ:それでは最後に残った操縦手について、お話してください。
カティエ:よっしゃ!私の出番!
----アリサ:…ミハリク軍曹、お願いします。
カティエ:…。
シスカ:どうということはない。戦車長の指示に従って戦車を移動させるだけ。
カティエ:どうということはないってことないでしょ、だって周りもよく見えないのに走らせるんだよ。
シスカ:そこは戦車長の指示をきちんと理解すれば大丈夫。それに、確かに周りは見えないけど…
シスカ:レバー越しに伝わってくるエンジンや履帯(いわゆるキャタピラ)の振動から地形の様子を予想することはできる。
敵の位置も…、殺気のような物を感じるから…
----アリサ:…え?、わかるんですか?
カティエ:…いやいや、シスカ軍曹が特別なんだよ。全ての操縦手がこんな人ってわけじゃないから。
シスカ:上級軍曹殿にはわからないの?
カティエ:残念ながら…わかりません。
シスカ:そうか…
(沈黙)
シスカ:ちょっと待ってて。
(数分後)
シスカ:隊長の許可が下りた。
----アリサ:何かするのですか。
シスカ:動く戦車に乗せてあげる。
カティエ:じゃぁ、私が操縦する〜。
シスカ:今回はダメ。お客さんが危ない目に遭う。
----アリサ:わ、わたしもミハリク軍曹の操縦が見てみたいです。
カティエ:なんだよぉ、二人とも…
シスカ:じゃぁ、ヴァーノア上級軍曹殿、お客さんを特等席へ。
カティエ:特等席…?、なるほど。了解。
(中略)
----アリサ:
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わたしは車体左側のフェンダーに足を掛け、砲塔に寄りかかるような体勢で、T-34/85の上に立ちました。
ここから見えるのは、タンクデサント(戦車跨乗歩兵)の視界なのでしょう。
まもなくミハリク軍曹がエンジンを始動させました。凄まじい振動とエンジン音。
わたしは思わず手すりを握る手に力を込めました。
ごく軽い衝撃を伴って、T-34/85は前進を始めました。ゆっくり、ゆっくり…。
ミハリク軍曹の優しい心づかいが伝わってくるかのようでしだ。
T-34/85は、兵営の周囲をゆっくりと進んでいきました。ところどころ木々が茂る平原…。
左手には河が見えました。このように言っては不謹慎ですが、のどかな光景でした。
猛烈な振動と音の中にもかかわらず、わたしは安らいだ気持ちでその景色を見ました。
でも、昨日ここに居た者は、どのような景色を見たのでしょうか?
明日ここから見える景色はどのようなものでしょうか?
わたしはそれを知らず、またそれを正しく想像することも叶いません。
・・・これが、15分ほどの乗車体験の間にわたしが考えていたことです。
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シスカ:お疲れ様。
カティエ:どうだった?
----アリサ:こう正直に言っていいものか…気持ちよかったです。
シスカ:そう、それは良かった。
----アリサ:ありがとうございました。
シスカ:…どういたしまして。
カティエ:じゃ、またなっ!
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今回は戦車に乗車させてもらったのですが、
もちろん動く戦車は何度も見ています。実は、取材で乗ったこともあるんですよ。
(その時は正直、あまり気持ちの良いものではありませんでした)
今回は安らいだ気持ちで乗っていました。ミハリク軍曹の操縦のおかげでしょうか。
でも、もちろん戦場では戦車も乗員も、全く違う様相を見せるのでしょう。
最近、ドイツが降伏し、遂に戦争が終結しました。
ボロディン小隊の戦いも、ひとまずはこれで終わりです。
これで彼女たちの心にも平穏が訪れることを願ってやみません。
さて、「それいけ!ロシア女子戦車小隊」も次回で遂に最終話。
私のレポートも、もう一回はありますので是非お付き合いくださいね!
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