第九段

 今()れ五藏の疾有るや、(たとえ)(なお)刺すがごとく、(なお)(けが)るるがごとく、(なお)(むす)ぼるがごとく、(なお)()づるがごとくなり。刺すは(ひさ)しと(いえど)も、(なお)()くべし。汚るるは久しと(いえど)も、(なお)(すす)ぐべし。結ぼるは(ひさ)しと(いえど)も、(なお)解くべし。()づるは(ひさ)しと(いえど)も.(なお)(さく)るべきなり。或は久しき疾の取るべからずと言うは()の説に(あら)ざるなり。()れ善く鍼を用うる者、其の疾を取るや、(なお)刺したるを()くがごとく、(なお)汚れたるを(すす)ぐがごとく、(なお)結ぼれたるを解くがごとく、(なお)閉じたるを(さく)るがごとし。疾久しと(いえど)も、(なお)(つく)すべし。治すべからずと言うは、未だ()の術を得ざるなり。

諸熱(しょねつ)を刺すは、手を以って湯を探るが(ごと)く、(かん)(せい)を刺すは、人の行くことを欲せざるが如し。陰に陽疾有るは、之を下陵(げりょう)の三里に取る。(まさ)に往きて(あや)ぶむこと無かれ、気下って(すなわ)ち止む。下らざれば(また)始む。疾高くして内なる者は、之を陰の陵泉に取る。疾高くして外なる者は、(これ)を陽の陵泉に取るなり。

 

  

 

(原文) 今夫五藏之有疾也.譬猶刺也.猶汚也.猶結也.猶閉也.刺雖久.猶可拔也.汚雖久.猶可雪也.結雖久.猶可解也.閉雖久.猶可決也.或言久疾之不可取者.非其説也.夫善用鍼者.取其疾也.猶拔刺也.猶雪汚也.猶解結也.猶決閉也.疾雖久.猶可畢也.言不可治者.未得其術也.刺諸熱者.如以手探 湯.刺寒清者.如人不欲行.陰有陽疾者.取之下陵三里.正往無殆.氣下乃止.不下復始也.疾高而内者.取之陰之陵泉.疾高而外者.取之陽之陵泉