SHM-CDとBlu-Spec CDは表現に差はあるが、どちらも従来のCDより高音質・高品質な事を主張している。
・(SHM-CD)
マスタークオリティに限りなく近づいた”高音質”CD。
・(Blu-Spec CD)
マスターテープと同等のクオリティで原音を再生する”高品質”CD。
[開発・推進元]
・SHM-CD:ユニバーサルミュージックとビクター
・Blu-Spec CD:ソニー・ミュージックエンタテインメント
アプローチは多少異なるものの、成形素材やスタンパの製造工程等が違うだけで記録仕様は従来のCDと同じため、全てのCDプレーヤーで再生可能な点は共通している。
・(SHM-CD)ただ、「”高音質”はマスターに対する髙忠実再生の意味」(SHM-CDの場合)と断り書きがあるため、マスターの音を聴けない一般の購入者には判断材料が無いことになり、メーカーの独りよがり的な宣伝文句の懸念もある。
成形素材を変えた事で、どの程度の製造品質と音質になったのか興味が湧いたのと、手持ちのCDと同じ音源の物が発売されていたので、遅ればせながら独自に検証を行った。
検証は、サンプルのCDを音だけで比較すると、エラーレートの差による音質の優劣が出て、製品自体の比較にならない事もあるため、 プレクスター プレミアム(PX-W5232TU)による 「PlexTools Professional」 を使った 「Q-Check C1/C2 Test」データを基に行った。
項目 |
1.製造品質 |
2.音質比較 |
3.結果と考察 |
(2010/1 掲載)
「注意」
これは2010年1月掲載の 「音楽CDの品質と音質(SHM-CD/Blu-Spec CD)」 初版です。
製造品質に関する内容が現在の判断基準と合わない部分があります。
現行の「音楽CDの品質と音質(SHM-CD/Blu-Spec CD&CD2)」の補足(参考)として再掲載。
結論に影響が無い範囲で文章修正をしています。 (2018年1月)
フォント"sans-serif"指定追加に伴いグラフ脇の文章の再配置並びにページ表示の整合を図る。 (体裁の変更は無し) (2024年8月)
■検証対象(サンプル)
SHM-CDは5枚、Blu-Spec CDは1枚(二枚組)を新規購入。
SHM-CDは、ユニバーサルミュージックが4枚、ワーナーミュージックが1枚。
Blu-Spec CDは、ソニー・ミュージックエンタテインメント。
従来のCDは同一音源の物を選定。(既に持ち合わせている物)
■検証方法
「Q-Check C1/C2 Test」データを基に製造品質と音質を検証。
[製造品質]
「Q-Check C1/C2 Test」データから判断。
判断基準は「PLEXTOR Premium(PX-W5232TU)・音楽CD品質検証」並びに”高品質な従来のCD”とのデータ比較。
1.[製造品質] :グラフ全体のC1/C2エラーレートから製造品質を判断。
2.[データ評価]:グラフのC1/C2エラーのピーク値推移から音質を推定。
[音質比較]
ヘッドホンを使用して再生音を聴き比べ、同一音源の音の聞こえ方の違い等で判断。
エラーレートの差による音質の優劣の影響がないように、「Q-Check C1/C2 Test」データからC1エラーレートが同程度の領域を比較する。
注1)
「Q-Check C1/C2 Test」グラフの縦軸は単位時間当たりのC1/C2エラー訂正数を表すが、説明ではC1/C2エラーとして表記している。
注2)「Q-Check C1/C2 Test」データは、測定したドライブでのみ有効です。
CD内容 | 2001年のリマスター盤紙ジャケット仕様をSHM-CD化した物。 ディスクには元のリマスター盤の品番が刻印してある。 |
製造品質 | CDエラーレベル:3 C1エラーはやや多めで製造品質は並のレベル |
データ評価 | エラーレートが高い領域を除けば、ある程度の高音質を期待できる。 エラーレートが高い所では音質が劣る。 C1エラーの少ない領域でSHM-CDの音質評価が出来る。 |
(注)グラフの軸目盛りについて
横軸:時間(分)
縦軸:単位時間当たりのC1/C2エラー発生数
(グラフ表示)
(C1エラー)/緑色
(C2エラー)/青色
※上のグラフでは、C1エラーのみでC2エラーの発生は無い。
CD内容 | 2001年のリマスター盤紙ジャケット仕様をSHM-CD化した物。 ディスクには元のリマスター盤の品番が刻印してある。 |
製造品質 | CDエラーレベル:9 C1エラーが全領域で多く製造品質は悪い。 ”高音質を優先した作り込み” でこの程度では従来のCDと大差なく、ただの宣伝文句と云われても仕方ない品質レベル。 |
データ評価 | 高音質は期待できない。 このエラーレートでは音質が悪化して元の音が出ない為、SHM-CDとしての音質評価には向かない。 |
CD内容 | 2001年のリマスター盤紙ジャケット仕様をSHM-CD化した物。 ディスクには元のリマスター盤の品番が刻印してある。 |
製造品質 | CDエラーレベル:7 C1エラーが多く製造品質は悪い。 C2エラーが出ているのも問題。 |
データ評価 | エラーレートの高い部分が多いため良い音質は期待できない。 音質の変化が目まぐるしく音質評価には使い難い。 |
CD内容 | 2002年のリマスター盤をSHM-CD化した物。 アルバムタイトルは元の「ザ・ベスト・オブ・キャラヴァン・ライブ」 ディスクには元のリマスター盤の品番が刻印してある。 |
製造品質 | CDエラーレベル:3 C1エラーが少なめで製造品質は比較的良い。(Avg/Sec:0.6) 従来とは違う”作り込み”を謳うなら、最低限この品質レベルを期待したい。 |
データ評価 | 50分前後の領域を除けば高音質を期待できる。 C1エラーの少ない領域でSHM-CDの音質評価が出来る。 |
CD内容 | これまで発売されていたCDとは違い、音のピッチを修正したリマスター盤 |
製造品質 | CDエラーレベル:3 C1エラーが少し多めで製造品質は並のレベル。 |
データ評価 | C1エラーの高い部分は音質的に劣る。 C1エラーの少ない領域でSHM-CDの音質評価が出来る。 |
※手持ちの従来CDは、リマスター以前の音源の為、比較評価から外した。
CD内容 | 2002年のリマスター盤(二枚組)をBlu-Spec CD化した物。 内容的には全く同じ物。 ジャケットからレーベル印刷まで同じで徹底している。 Blu-Spec CDロゴの有り無しでしか外観的に見分けがつかない。 |
製造品質 | CDエラーレベル:1 C1エラーが少なく、製造品質はかなり優秀な部類。 最後のピークが無ければ”超”が付く。 パルスの様なピークの列が少ないのも良い。 |
データ評価 | 全体的に高音質を期待できる。 最後の領域を除けばBlu-Spec CDとしての音質評価が出来る。 データ的にはC1エラー0(ゼロ)の部分が多くあり品質は優秀な部類。 |
CD内容 | 2002年のリマスター盤(二枚組)をBlu-Spec CD化した物。 内容はDisc1と同じ形。 |
製造品質 | CDエラーレベル:5 Disc1は製造品質を期待させる物だが、Disc2は品質的に劣る。 二枚組でも製造品質が同じとは限らない例。 50分過ぎのC1エラーが突出した部分は盤面の傷によると思われ、品質管理に問題有り。 |
データ評価 | 始めから18分当たり迄と後半のC1エラーが突出している所は音質が劣る。 真ん中の領域ではC1エラーが少なく、Blu-Spec CDとしての音質評価が出来る。 22分~48分当たり迄の低エラーレート領域はBlu-Spec CDの素性の良さをうかがわせる。 |
問題は、Disc2のように品質に大きなバラツキが出ること。
Disc1と同レベル品が高歩留りで出来るような製造ラインでないと、高品質CDも看板倒れになる危惧がある。
尚、従来のCDにも同レベルの超優秀盤が有り、Blu-Spec CDが初めてでは無い。
■音質比較評価
音質比較は 「Q-Check C1/C2 Test」の結果、下記のCDを選択。
●SHM-CD
④キャラヴァン「ライブ・アット・フェアフィールド・ホールズ1974~
ザ・ベスト・オブ・キャラヴァン・ライブ」 (UICY-94333)
●Blu-Spec CD
⑦天地真理「コンプリート・シングル・コレクション・アンド・モア」
Disc2 (MHCL-20075)
※Disc1では従来CDのエラーレートが高く比較出来ないため。
●従来のCD(比較用)
・ キャラヴァン「ライブ・アット・フェアフィールド・ホールズ1974」
2002年リマスター盤(UICY-3517)
・ 天地真理「コンプリート・シングル・コレクション・アンド・モア」
Disc2 2002年リマスター盤(MHCL-176)
※音質比較はCD再生音の個人的な感想による判断。
上のリストは「PlexTools Professional」の「CD/DVD Info」で表示されるCDトラック時間のデータ。
音質評価は2曲目と4曲目を使用。
従来のCDでC1エラーが低い領域のための選択。
「Q-Check C1/C2 Test」グラフの時間軸に引いたピンクの帯が各曲の再生範囲(目安)。
「SHM-CD」
音の感想 |
・高域のレベルが少し高めで華やかな印象があり、高音が耳につく。 ・高音の余音が長く、余分な音がまとわりつく感じになる。 ・低音が軽く、量感はあるが力強さとローレンジの伸びに欠け、ドラムの音に厚みが不足。 ・音の重心が高い感じを受ける。 ・C1エラーレートの差で音質が異なり、低いほど高音質になる。 ・C1エラーレートが0(ゼロ)のレベルでは、音場の広さ、音像の鮮明さ、音の質感等が他のレベルより大きく向上する。 |
「従来のCD」
2002年リマスター盤の 「Q-Check C1/C2 Test」データ。
製造品質はSHM-CDより悪い。
音の感想 |
・高域のレベルは控え目で華やかさは余りないが、ハイレンジの伸びはある。 ・低音は量感がありローレンジも伸びて、ドラムの音に厚みがある。 ・低音を土台にした音のバランスで安定感があり、音の重心が低い。 ・C1エラーレートの差で音質が異なり、低いほど高音質になる。 |
[比較結果]
「SHM-CDは音のバランスが悪く、音質の優位性を確認できなかった。」
上のリストは「PlexTools Professional」の「CD/DVD Info」で表示されるCDトラック時間のデータ。
音質評価は6曲目、14曲目、15曲目を使用。
「Q-Check C1/C2 Test」グラフの時間軸に引いたピンクの帯が各曲の再生範囲(目安)。
Disc2では C1エラーレートが0(ゼロ)部分の音質チェックが難しいため、Disc1で確認した。
「Blu-Spec CD」
音の感想 |
・高域のレベルが少し高めで華やかで、明るい印象になる。 ・高音は余音が長く耳につく。 ・低音は量感はあるがローレンジの伸びに欠ける。 ・音の重心が高く上から音が聞こえるような不自然さが出る事がある。 ・C1エラーレートの差で音質が異なり、低いほど高音質になる。 ・C1エラーレートが0(ゼロ)のレベルでは、音場の広さ、音像の鮮明さ、音の質感等が他のレベルより大きく向上する。(Disc1を聴いた感想) |
「従来のCD」
2002年リマスター盤の「Q-Check C1/C2 Test」データ。
製造品質はBlu-Spec CDより悪い。
音の感想 |
・高域のレベルは控え目で華やかさは余りないが、ハイレンジの伸びはある。 ・低音は量感がありローレンジも伸びて、ドラムの音に厚みがある。 ・低音を土台にした音のバランスで安定感があり、音の重心が低い。 ・C1エラーレートの差で音質が異なり、低いほど高音質になる。 |
[比較結果]
「Blu-Spec CDは音のバランスが悪く、音質の優位性を確認できなかった。」
※Blu-Spec CDと従来のCDでエラーレートに差があり、低エラーレート領域での比較が出来ないため、エラーレート差をなくすために少し高い部分で最終確認をした。
優劣比較 | |||
製品 | 品質 | 音質 | 総合 |
従来のCD | × | ○ | ○ |
SHM-CD | × | × | × |
Blu-Spec CD | ○ | × | × |
高域のレベルが高めで華やかな印象があり、これにエラーレートの違いによる音質の差が重なると、音が良いと錯覚しやすいと思われる。
尚、SHM-CDの場合、”音質に関する評価は再生環境等により異なります”と書いてあるため、従来のCDに対して絶対的な優位性が無いことを予め認めていると思われる。
製造品質はSHM-CDとBlu-Spec CDで違いがある。
SHM-CDは従来のCDとさして変わらず優位性は無いと判断。
Blu-Spec CDは技術的な優位性があり、低エラーレートの製品を均一に生産できる可能性を持っているデータが得られたため、優位性有りと判断。
一番の問題は、マスタークオリティ並の高音質を主張している点にある。
これは、検証結果から
・マスタークオリティ並の音にするには、C1エラーレートを殆ど0(ゼロ)にしないとその音質の域に達しないと思われるが、今の製造品質はそのレベルまで到達していない。
・新しい成形素材の影響と思われる音のバランスが崩れる現象が出ている。
等の問題があり、高音質とは程遠い状態のためマスタークオリティ並の高音質云々は無謀な誇大宣伝の類と思わざるを得ない。
-----------------------------------------------------------------------
音質・品質的に最も良いのは、Blu-Spec CDの極微細加工カッティング技術を従来のCDに応用すること。
-----------------------------------------------------------------------
従来のCDで音質の悪い物はC1エラーレートの高さに原因があり、それは製造品質が悪い事に起因する。
従来の成形素材で低エラーレートのCDを作ることが高音質CDの近道な事を、これまでも高品質に出来上がったCDがとっくの昔にその音質で証明している。
※”高品質=低エラーレート”として説明しています。