牛乳パックに代表される紙パック(1000ml)は、屋根型と呼ばれるポピュラーな形の物で、紙パックの製造工程や歴史等はメーカーのサイトに詳しい説明が載っている。
このページでは、一般に余り知られていない屋根型紙パックの全形や組み立て構造等を主に取り上げる。
牛乳パック(紙パック)の組み立て前の全形を見るには底面を開かなければならないが、接着が強固で開くのは容易ではない。
中身の牛乳や果汁が漏れだしては困るので接着が強固なのは当然の事としても、これを裏付けるように紙パックのリサイクルマークの図は底面の周囲をハサミで切って開く形になっている。
この様な事から一般には紙パックの組み立て前の全形を知る人は少ないと思われる。
牛乳パック(紙パック)は外見上どれも似た形で、紙パックメーカー毎の違いは無いように見えるが、実際には底面にメーカーで異なる組み立ての秘密が隠れている。
最近になり洗った牛乳パックを半年ほど自然乾燥してから接着部分を指の爪で剥がすやり方で、ようやく破れずに開けるようになった事から牛乳パック(紙パック)のページとして日の目を見た。
屋根型の紙パックを製造しているメーカーは数社あり、大抵は紙パックの開け口(注ぎ口)の反対側に名称や商品名、ロゴマーク等が印刷されている。
手に入る範囲の牛乳パックなどから確認できる紙パックメーカーは以下の通り。
ロゴマークの画像は紙パックに印刷された物で紙パックに使用されたインクでロゴの色も異なる。
1)日本テトラパック株式会社
テトラパック (Tetra Pak)
Tetra Rexは商品名
2)日本製紙株式会社 紙パック営業本部(2017年6月 紙パック事業本部から変更)
エヌピーパック(NP-PAK)
日本紙パック株式会社当時の2008年1月に名称がNP-PAKになった。
ロゴマークは変わったがロゴの下の文字はピュアパック時代と同じ”NIPPON PAPER-PAK”の表示。
右側のロゴマークは2012年10月に日本製紙と合併するまで使用された物でロゴサイズが合併後の物より若干大きい。
左側のロゴマークは合併後の物でロゴの下の文字は”NP-PAK”に変わった。(~現在)
この会社のサイトは個人向け情報が最も充実している。
NP-PAKの実質的な製造会社は、
「日本製紙リキッドパッケージプロダクト(株)」(2017年10月)
(日本紙パック株式会社)
ピュアパック(PURE-PAK)
日本紙パック株式会社時代の2008年以前の名称とロゴマーク。
(※2007年12月ELOPAK社との提携解消)
3)北越パッケージ株式会社
※2018年7月 ビーエフ&パッケージ(株)から元の社名に再変更)
トーエーパック(TOHEI-PAK)
4)大日本印刷株式会社
エルカートン(Lcarton)
紙パック担当部門は関係会社と思われるがサイトには個人向け情報が少なくハッキリしない。(※エルカートンも載っていない)
5)石塚硝子株式会社
アイピーアイパック(IPI PAK)
アイピーアイ株式会社を吸収合併後のロゴマーク。
名称は引き継いだ形。
(旧アイピーアイ株式会社)
石塚硝子の子会社時代のアイピーアイ株式会社のロゴマーク。
パック名称と云うより会社名ロゴだが2010年6月の吸収合併により消滅。
6)CRESCO(クレスコ)
雪印メグミルクの子会社で韓国パッケージ(※韓国の企業)の日本代理店。
ロイヤルパック(Royal Pak)
屋根型の紙パックは外見上どれも同じに見えるが、実際には紙パックメーカーによって組み立て構造が微妙に異なっている。
紙パックの底面を見ると接着面の形が異なっているのが分かるが、これが組み立て構造の違いになる。(※製造工程を溯れば抜き型の違い)
所々凹んだ部分は底面接着の際に圧着した跡(※圧着金具の型の跡)と思われ、紙パックは同じで も飲料メーカーで形が異なる事がある。
1) Tetra Pak(テトラパック)
[写真]
テトラパックの底面
中央の台形状の部分に特徴がある。
2) NP-PAK(エヌピーパック)
[写真] 標準形のNP-PAK底面[写真] 特殊形状のNP-PAK底面左の標準形は中心の上と下で見える形が異なるが上は外側の接着で下が内側の接着。
内側は金型の形が浮き出ている。
右の特殊形状は形の違いからテトラパックとは外側に出た方向が逆になっていて凹みの跡も標準形の物とは異なる。
NP-PAKには形の違う二種類あるが底面を見れば紙パックの種類を判別できる。
[写真]
改良形NP-PAKの底面 (乳酸菌飲料の物)
NP-PAKの改良形カートン (2017年7月確認)
底面にテトラパックと同様な幅広の溝がありNP-PAKの標準形とは見た目が異なる。
圧着金具の跡も従来には無い形になっている。
この改良形カートンはIPI PAKの改良形カートンの問題点を改善した形で構造的には決定版に思える。
※特殊形状のカートンは改良形カートン登場以降見かけなくなった。(2021年/6月 記)
3)TOHEI-PAK(トーエーパック)
[写真]
トーエーパックの底面 (果汁飲料の物)
基本的にNP-PAKと同じ形なので似ている。
凹み方の違いは充填機の組み立て金具の違いと思われる。
4)L carton(エルカートン)
[写真]
エルカートンの底面
基本的にNP-PAKと同じ形なので似ている。
この例は凹みが同じため同じ型を使用している事が分かる。
5)IPI PAK(アイピーアイパック)
[写真]
アイピーアイパックの底面(標準形)
基本的にNP-PAKと同じ形なので似ている。
[写真] アイピーアイパック(改良形)の底面
果汁飲料の物でタブに切り込みを入れ中央部分を折り曲げた改良形。
写真の二つはカートンの抜き型は同じで底面の組み立て金具が異なっている。
右側の物は折り曲げたタブがある中央上の部分が少し膨らんでいる。
6) Royal Pak(ロイヤルパック)
[写真]
ロイヤルパックの底面
基本的にNP-PAKと同じ形なので似ている。
牛乳パック(紙パック)を観察した結果を元にして紙パックメーカー別にその構造等を説明する。
メーカー間の違いは底面の組み立て方の違いと四角い筒の接着部分に現れている。
紙パック形状には大きく分けて二つあり、それが”テトラパック”と”NP-PAK”で、紙パック業界としては、”テトラパック”対”NP-PAK”連合と云うような図式になっています。
NP-PAK連合には、”エルカートン、”アイピーアイパック”、”トーエーパック”が参入。
連合と云ったのは基本的な形が同じためで、これに各会社独自の改良などが施されています。
トーエーパックはテトラパックにも参入する両睨み戦略ですがカートンの基本構造はNP-PAKです。
(※以上の説明は分かり易くするための例えです。)
紙パックの形や構造等はメーカー側の説明が無いため、今のところ現物の紙パックを観察して補い推測するしかありません。(※推測なので外れもあると思う。)
年を追うと改良の跡などが見て取れるので、その辺も考慮しています。
[写真]
テトラパックの全形。
テトラパックはこの形しか見当たらない。
屋根の封止部分は底面タブと同じ面にあり、商品名の印刷面も同一面。
底面を折り畳むときに矢印Bのタブが対向面の矢印Aの内側に入り、矢印Aのタブが外側を押さえる形になる。
矢印Dの接着部分は幅10㎜。 赤丸Eの部分はストレート形状。
形としては絶妙で組み立ても他メーカーに比べて無駄が無い感じです。
底面の重ね合わせ面積(B部分)が少ないため底面の強度は弱めになる。
(端の折り返し)
[写真]
テトラパックの四角い筒の貼り合わせ部分の拡大。
(貼り合わせ部分を剥がした状態)
矢印は端の折り返し部分で、これによって液体の横からの浸透をラミネートされたポリエチレンが防ぎ、中からの液漏れを防ぐ構造。
因みに、これはNP-PAKで説明されている部分でテトラパックでは何も説明が無い。
テトラパックはこの接着部分を剥がすと折り返しが直ぐに剥がれて浮き上がる。
このため、抜き型上の貼り合わせ部分は15㎜幅で、折り返し部分の全幅は10㎜。
折り返し部分の内側を薄く削り(※ラミネート層が削られ紙の層が出る)、半分に折り曲げて残っている元の厚みの部分(5㎜幅)に突き合わせると、10㎜幅の筒の貼り合わせ接着面になる。
半分に折り曲げた内側は紙の層で接着力が無い事から、筒の接着部分を剥がすと折り返しが直ぐに剥がれて浮き上がる。
接着強度を期待できる幅が5㎜のためテトラパックは紙パックの筒の強度が構造的に低いと考えられる。 尚、これは実用上の問題の指摘では無い。
(その1) 標準形
[写真]
NP-PAKの標準的なカートンの形(全形)。
底面を折り畳む時に左の矢印Aのタブが筒の内側に入り、外側を対向面の矢印Bのタブが押さえる形になる。(※テトラパックとは逆になっている。)
矢印Aの部分は重ね合わせで筒の内側にある三角形に折り畳まれた部分の下になりガッチリ固定されて底面の強度を保つ事に成る。
矢印Aのタブの赤丸部分は直線ではなくR(アール)が付いている。
矢印Dの接着部分は幅10㎜。
赤丸Fの斜めにカットされた所は、組み立て時に矢印Eの斜め部分とは重ねの層が異なり間接的に対向する形になる。
[写真]
NP-PAKの四角い筒の貼り合わせ接着部分の拡大。(貼り合わせ部分を剥がした状態)
矢印は端の折り返し部分で、少しめくれているのでそれと分かる。(幅5㎜)
目的は液体のカートン断面のパルプ層への浸透を防ぎ中からの液漏れを防ぐため。
NP-PAKは接着部分を剥がしてもテトラパックとは違い簡単には浮き上がらない。
大抵は上に薄く紙が残る事が多く、目視では確認しづらいが、光に透かすことで分かる。
[写真]
後ろから光を当てて透かした状態。
折り返したラインが綺麗に判別できる。
この部分はスカイブ加工と呼ばれ、貼り合わせ部分の一部をを削り取り折り返す加工。
輸送距離や賞味期限の延長に寄与する。
(※参考資料:NP-PAKism Vol.5)
このため、抜き型上の貼り合わせ部分は15㎜幅で、折り返し部分の全幅は10㎜。
テトラパックと同じに見えるが、NP-PAKのスカイブ加工は薄く削り取る幅が異なる。
内側の薄く削り取る部分は右端から幅8㎜で残る元の厚みの部分は幅7㎜になり、端の折り返しは幅5㎜なので右から幅5㎜で折り返すと幅2㎜分が元の厚みのラミネート層に重なる。
この重ね部分がNP-PAKのスカイブ加工の特徴で前身のピュアパックも同じ形。
ラミネート層と重なった部分は接着力が有るので筒の接着部分を剥がしても折り返し部分は貼り付いたままで簡単には浮き上がらない。
接着強度を期待できる幅が7㎜になるため、NP-PAKは紙パックの筒の強度が構造的に高いと考えられる。
(その2) 特殊形状カートン
[写真]
NP-PAKの特殊形状カートンの全形
NP-PAKの中でも底面が特殊な形状の物で明らかに標準形の物とは構造が異なる。
四角い筒の接着部分は左側に有る。
赤丸Tのタブは底面の組み立てで外側に折り曲げられ接着(圧着)される。
尚、折り曲げがカートン製造段階か底面組み立て時かは不明。
[写真]
NP-PAKの特殊形状カートン。
この紙パックを普通に開くと写真の状態になる。(※折り曲げ部分は貼り付いたまま)
今のところ、このタイプが使用されている商品は少ない。
四角い筒の接着部分(矢印D)は左側で幅10㎜。
特徴的なのは底面の折り畳みでタブが外側に折り曲げられて(赤丸T’の部分)、筒の内側に紙の層の断面が露出しない形なっていること。
三角形になる部分を折り畳むと赤丸Aが対向する矢印A’の上に乗り、同じく赤丸Bが矢印B’の上に乗り、更にその上を矢印Cのタブが覆う形になる。
カートンの内側に入るタブが無いと、その分底面の貼り合わせ強度は弱くなるが、赤丸Aと赤丸Bの部分を外側に貼り合わせる事で補強していると思われる。
このカートンは紙の層の断面が内側に露出しないため、風味を保つ点でも優れている。
この紙パックは標準形と同じ手順では底面を開く事が出来ず、きれいに開くのが難しい構造になっている。(※底面を開くのにかなり手間が掛かる)
特殊形状カートンは改良形カートンが出てきてから使われなくなり過去の物となった。
(その3) 筒の貼り合わせ部分が幅広
[写真]
四角い筒の貼り合わせ接着部分が幅広の物。
果汁飲料に使われていた物で端の折り返しもある。
果汁用でも折り返しがある形での幅広タイプは珍しい。
(2012年の物)
(※写真の物は底面部分に手で開いた際の欠損がある)
(その4) 筒の貼り合わせ部分の端の折り返し無し
[写真]
四角い筒の貼り合わせ接着部分に端の折り返しが無い物。
(スカイブ加工がされていない)
接着部分の幅は15㎜。(矢印A)
2014年春頃の物でカートンとしては古い形。
基本的に四角い筒の接着部分の断面(紙の層)が内部に露出する構造のため液体の浸透に弱い。
※断面が溶けたポリエチレンで完全に覆われているとは限らないため。
(その5) 新形状カートン
[写真]
”NP-PAK+R”と云うデザイン重視で作られた新形状のカートン
(カートン自体の発表は2012年)
カートンの抜き型面積は従来の屋根形と変わらないが、屋根部分の折り方が曲線的で片側が更に下に位置するため充填容量は900ml台と少ない。
(2014年秋)
(矢印A)
従来の屋根形の折り位置
(矢印B)
NP-PAK+Rの片側折り位置
折り位置が下がり矢印Bのラインまでしか充填出来ないため従来カートンより容量が少ない。
2024年現在、このカートンは使われていない様で過去の物となった。
(その6) 改良形カートン
[スキャン画像]
標準形の底面タブの中央に切り込みを入れた改良形カートンの全形。
※赤丸印の部分。
IPI PAKの改良形カートンと異なるのは、切り込みの長さが約半分しかなく、折り曲げた部分が筒の内部に重なる形で入る点。
これで底面部分の強度を保ちながら果汁等の浸透を防ぐ事が出来る。
懸念は段差が大きくなった重ね合わせ部分を熱で溶かしたポリエチレンでコンスタントに覆えるかと云う点にあるが、その難題を解決した模様。
(2017年7月確認)
同業メーカーならIPI PAKの改良形カートンの構造を見れば、強度的にはタブを半分の長さで折り曲げた方が良いと思い付くのも容易と考えられる。
ただ実際に製品化するには大きくなる段差の問題をクリアする必要がある。
カートンを置いたときの安定性を加味した解決策が従来とは異なる底面の圧着形状に成っていると思われるが、溝の深い形はテトラパックに似ている。
「同様なカートンを使用した商品例」 (2021年5月 現在)
・北海道牛乳 (◎みなさまのお墨付き) --- [TOHEI-PAK]
・KIRIN 無添加野菜 48種の濃い野菜 --- [NIPPON PAPER INDUSTRIES]
(その7) IPI PAKの改良形カートンの同形
[スキャン画像]
IPI PAKの改良形カートンと同じ形の物。
(赤丸印の部分が同じ)
NP-PAKも他社カートンと同じ形状の物を供給し始めた事が分かる。
(2018年6月確認)
(その1) 標準形
[写真]
トーエーパックの標準的なカートンの全形。
(矢印A):四角い筒の接着部分
基本的にはNP-PAK(標準形)と同じだが、些細な違いとして赤丸部分が直線的な形になっている。
矢印Aの接着部分は幅10㎜。
(その2) 筒の貼り合わせ部分が幅広
[写真]
四角い筒の貼り合わせ接着部分が幅広の物。
幅は15㎜。 端の折り返しもある。
エルカートンに似ているものの底面タブの形はトーエーパックの標準形。
(その3) 特殊形状カートン
[写真]
NP-PAKの特殊形状カートンと同じ物
果汁飲料に使われていた物で形状はNP-PAKのそれと同じ。
二社で製造されていると何処が作った紙パックなのか判断がつかない。
使用されている事実のみが分かる。
※写真の物は底面部分に開いた際の破れがある。
(その4) テトラパック形
[写真]
テトラパックと同じ形状の物
見た事がある形と思ったらテトラパックと同じだった。
果汁飲料に使われていた物。
形状は飲料メーカーの充填機に合わせた物と思われる。
[写真]
テトラパックと同じ形状の物
注ぎ口側にTOHEI-PAKのロゴがありテトラパックとは印刷位置が異なる。
このため反対側には印刷が無い。
形はテトラパックでも筒の接着部分の端の折り返しはNP-PAKと同じ構造。
カートンの基本構造はNP-PAKで抜き型をテトラパックの形に変えた物。
当然の如く紙パックの筒の強度はテトラパックより上。
[スキャン画像]
NP-PAKの特殊形状カートンと同じ物ながら紙パックメーカーの印刷ロゴマークが無い物。
※これまでの商品からトーエーパックに分類。
画像は2015年の物だが2014年夏頃から混在するようになり、今は印刷ロゴの無い物になった。
紙パックメーカーのロゴを入れない理由は不明。 (”めいらく”商品のみで確認)
(その1) 標準形
[写真]
エルカートンの標準的なカートンの全形
(矢印A):四角い筒の接着部分
基本的にNP-PAK(標準形)と同じだが矢印Aの幅が15㎜になっている。
端の折り返しが付いた牛乳パックでの接着幅15㎜は珍しい。
筒の貼り合わせ接着面が広い分、紙パックの筒の強度を高くできる点が強み。
(※強度的に優位性がある。)
[スキャン画像]
エルカートンの筒の貼り合わせ幅が10㎜の物。
このカートンはハイバリア容器で牛乳用より容器のグレードが上の物。
(その1) 標準形
[写真]
アイピーアイパックの標準的なカートンの全形
基本的にNP-PAK(標準形)と同じで形状の違いは特に無い。
[写真]
四角い筒の貼り合わせ接着部分が幅広の物。
幅は15㎜。(矢印A)
端の折り返しが無く、牛乳パックとしては奇妙で、2011年の物としては不適当な気がする。
(※形状は乳業メーカーの指定と思われるが紙パックとしては古い形。)
注ぎ口部分にIPIのロゴマークが印刷されている。
[写真]
全形(形状)は同じでも赤丸部分が異なる改良形。
赤丸部分のタブには縦に切り込みがあり、中央部分を外側に折り曲げる形になっている。
改良形と云っても全体の形は変えずにタブに切り込みを入れるという簡単な加工で目的を達している所がミソ。
[写真]
赤丸部分のタブ中央部分を外側に折り曲げて接着(圧着)した状態。
この紙パックを普通に開くと、この状態になる。
(※折り曲げ部分は貼り付いたまま)
タブ中央部分の折り曲げがカートン製造段階か底面組み立て時かは不明。
果汁飲料用に多く見られるが、このタイプはアイピーアイ株式会社の頃からある。
[写真]
IPI CORPORATION
(アイピーアイ株式会社)の頃の物。
2009年の物で改良形と分かる。
この形は底面側の果汁の浸透を抑えるための改良と思われる。
※写真は折り曲げの状態が分かるように、折り曲げ部分が張り付いたままにしている。
[写真]
ロイヤルパックの全形
今の所(2014年)”農協牛乳”のみで確認。
形状はNP-PAK(標準形)と同じ。
紙パックを開く前の底面がどのように成っているかは、底面の外側から光を当てると見えてくる。
下の写真はカートンの外側から照明を当ててカートンの内側から底面を写した物。
輪郭がハッキリしている部分はカートンの内側、ぼやけている部分は外側になる。
紙パックの全形写真と見比べればその折りたたみ構造が分かりやすい。
写真は内側に入る底面のタブが下向きになるように写した物で、この時の筒の貼り合わせ部分は 、”テトラパック”が左下側、”エヌピーパック”系(※)は右上側になる。
(※)エヌピーパック、トーエーパック、エルカートン、アイピーアイパック
[写真]
テトラパック(Tetra Pak)
(テトラパックのロゴは左側)
外側を押さえている台形状のタブがぼんやりと分かる。
カートン内側に入るタブは小さく幅も狭い。
カートンを手できれいに開く際にきついのが、この底面の三角形に折り畳まれた部分で接着が強力なため指先が痛くなる。
これは、底面の組み立て時に熱で溶けたポリエチレンが段差部分を覆っている事も関係している。
[写真]
エヌピーパック(NP-PAK)の標準形
(エヌピーパックのロゴは上側)
カートン内側に入るタブは外側と同じ幅で中に入るタブの面積が広い。 底面の強度は増すが内側に入る断面が長くなる。
[写真]
エヌピーパック(NP-PAK)の特殊形状
(エヌピーパックのロゴは右側)
三角形の頂点部分から下の位置に何もないことからカートンの内側に入るタブが無い。
外側の押さえが折りたたみ部分を覆っている様子がぼんやりと見え、かなり特殊な折りたたみ構造に成っている事が分かる。
[写真]
エヌピーパック(NP-PAK)の改良形カートン
(エヌピーパックのロゴは右側)
折り曲げるタブの長さをIPI PAKの改良形カートンの約半分にして、カートンの筒の内側に入る形にしている様子が分かる。 (※三角形の頂点から下の部分)
IPI PAKの写真と比べると違いは一目瞭然。
[写真]
トーエーパック(TOHEI-PAK)の標準形
(トーエーパックのロゴは上側)
エヌピーパックの標準形と同じに見える。
三角形の折り畳み部分は底面の補強を兼ねているが、内側にあるのは底面タブの貼り合わせ部分を覆ってタブ断面の露出を減らす目的が有ると思われる。
[写真]
エルカートン(Lcarton)
(エルカートンのロゴは上側)
筒の貼り合わせ幅が広い以外はエヌピーパックの標準形と同じ。
筒の貼り合わせ幅の違いは一目瞭然。
幅が広い事による筒の強度の高さが端の折り返し(スカイブ加工)の影から分かる。
[写真]
アイピーアイパック(IPI PAK)の改良形カートン
(アイピーアイパックのロゴは上側)
三角形の頂点部分から下の位置にはタブが無い。
カートン内側に入るタブの中央部分を外側に折り曲げて中に入る部分を無くしている事が分かる。
この構造を可能にしているのが切り欠きで残るタブの両側部分で、三角形の折りたたみ部分の下側に入っている様子がぼんやりと見える。
外側に折り曲げたタブの中央部分は外側を押さえるタブと重なっている。
タブの中央部分が内側に無いため標準形に比べて底面の貼り合わせ強度は弱くなる。
(※実用性の問題では無い。)
紙パックを調べて行くと形の違う幾つかの種類がある事に疑問が湧いてくる。
開いた紙パックを観察した結果から、次の二つの理由が考えられる。
1.特許
紙パックはメーカーが作る工業製品なので普通に思いつく。
現在は特許切れと思われるが資産として形を継承していると思われる。
2.液漏れ対策
組み立て方の違いと使用済み紙パックに残された痕跡からの推測。
例としてアイピーアイパックを取り上げる。
紙パックの断面は紙の層が露出しているため、紙パックメーカーはこの部分からの液体の浸透が大きいとしている。
浸透力が大きい果汁では紙の層の断面から浸透し易く、これが進行すると液漏れする。
3項で説明した通り、紙パックの底面はタブが紙パックの内側に入る形で組み立てられている。
エヌピーパック系は内側に入るタブの面が長く強度的には有利な反面、果汁の浸透に対しては不利な形になっている。
アイピーアイパックでは、果汁用のカートンに形は同じでも底面のタブに切り込みを入れて中央を折り曲げてから組み立てた物がある。
わざわざ一部を折り曲げる必要があるかを考えると、答えは液漏れ対策になる。
これは想像ではなく使用済み紙パックに残された痕跡が裏付けている。
このアイピーアイパックの改良形はタブの中央部分を折り曲げる事で紙の層が露出する部分を無くした物と考えられる。
折り曲げで内側に接する部分がポリエチレンのラミネート層になるため果汁の浸透を防ぎ、残る両側は折り畳んだ三角形の下に隠れて内側に紙の層が露出する事はない。
NP-PAKの特殊形状タイプは、底面の液漏れ対策にカートン自体の形を変えた物と捉えれば、その形状や組み立て方も納得できる。
この二つの物は内側に入るタブ部分が無い点が共通していて、紙の層が中の液体と接触しない構造は風味を保つ点でも有利と思われる。
紙パックメーカーも見えない部分で問題点を少しでも減らす努力をしている事が覗える。
1.「リサイクルマーク」
[画像]
牛乳パックのリサイクルマークの例。
[画像]
西友PB牛乳のリサイクル広報欄
西友のプライベートブランド牛乳に印刷されている牛乳パックのリサイクル手順。
いつ頃から掲載された物か分からないが、随分前から同じ絵が変わらず載っている。
ただ、牛乳パックに使われている紙の特徴からするとピント外れの部分がある。
※新デザインになったパッケージには広報欄はありません。(2017年6月末現在)
この部分は牛乳パックに使われている紙の特徴からすると意味が分からない。
牛乳パックの紙は表裏をポリエチレンでコーティングしたラミネート原紙のため、水で洗っても中の紙が湿るようなことはない。
張り合わせ部分の表側は紙の断面が露出している部分もあるが、例えここが湿っても開き易くは成らない。
洗うとポリエチレンの表面が濡れるだけで紙や接着面の強度に影響はなく、濡れているうちに開くことのメリットは無い。
これはリサイクルマークの手順でも同じ事。
3.「日本紙パック(株)の環境情報誌NP-PAKismのリサイクル手順」(2007年)
[画像]
紙パックリサイクルの手順を示した記事の一部分。
”紙パックは乾かしてから開けば手も汚れずに簡単です”と紹介されている。
紙パックメーカーは洗ったカートンを乾かしてから開く事を推奨している。
但し、”カートンを開く”は消費者側には必要の無い作業でこの部分は要らない。
紙パックのリサイクルは
「(1)洗って→(2)乾かして→(3)潰して詰める」が合理的な手順。
紙パックを開かないのでハサミ等で切る必要も無く誰でも簡単に手で処理できる所が大きな利点。
別の紙パックの中に手で潰したカートンを詰めるため、いちいち紐で縛る必要も無い。
”NP-PAKism”で紹介されていた海外事例を元にした方法を紹介する。
(※方法としては海外と同じやり方になっていると思います。・・・たぶん。)
[写真]
潰したカートンを詰め込んだ牛乳パック
洗って乾かした別の牛乳パックを入れ物として使い、手で潰したカートンを中に詰め込んだ物。
リサイクル収集日にこのまま出せば良い。
牛乳パックのほぼ一杯に詰め込んでいるので中の物が簡単に抜け落ちる事は無い。
[写真]
入れ物の牛乳パック(紙パック)の中身。
潰したカートンが10個入っている。
全部で11個分になり割と重い。
紙パックに詰め込めば散らばる心配も無く保管場所も余り取らない。
1.「カートンの潰し方」
[写真]
説明用の牛乳パック。
製品名がある面を(表)、反対側を(裏)、仕様欄などがある両サイドを(側面)として説明する。
尚、潰すと云ってもカートンの幅で折り畳むようにして、手で押し潰します。
(ステップ1)
カートンの上の方を両手で持ち、両指をカートンの次の部分にあてがう。
位置は屋根部分の下当たり。
(ステップ2)
カートンの側面を潰して平らに折り畳む。
[写真]
側面を潰したカートン
人差し指でカートンの両側面を内に押し込みながら表と裏にあてがった指で折り畳むようにしてカートンを押し潰す。
同様にしてカートンの上の方から底面まで平らに潰して行く。
(ステップ3)
T字型になった底面部分を表の方に折り曲げ平らにする。
[写真]
平らに潰したカートン
手で潰す程度の力では元に戻る応力で折り畳み部分が浮き上がる。(写真の状態)
これによって詰め込んだカートンが抜け落ちない。
2.「潰したカートンの詰め方」
入れ物の紙パックに潰したカートンをひとつずつ入れようとすると一杯には詰め切れないので、次の様に10個を束にして詰め込む。
(手順1)
写真は、潰したカートンを底面部分を互い違いにして重ねた状態。 これをペアにして積み重ねる。
(手順2)
写真はペアにした物を5つ積み重ねた状態。
(※潰したカートン10個分)
写真は説明用に積み重ねた物で、実際には手に持って重ねる。
ペアで5個重ねたら先の部分を入れ物の紙パックに入る高さに押しつぶして紙パックの中に詰め込む。
中は若干余裕があるので必要に応じて取り出すことも出来る。
尚、カートン10個に足らない場合でも詰め込んでおけばそのまま保管できる。
潰したカートンを追加する時には詰め込んでいた物を一旦全部取り出して10個の束にして詰め直す。
「一度に詰め込むのが難しい場合」(2019/9/4 追記)
潰した5ペアのカートンを重ねると、その厚みもあって片手で持つのが難しい事もある。
その様な場合はカートンを二回に分けて詰め込む。
(手順1)
潰したカートンの3ペア分を重ねて入れ物の紙パックに詰め込む。
(手順2)
入れ口に広がっている3ペア分のカートンを片側に寄せて入れ口に隙間を作る。
(手順3)
残りの2ペア分を重ねて入れ口の隙間に滑り込ませる様にして中に押し込む。