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消費の正解

<ブックデータ>
著者:松原隆一郎・辰巳渚
出版元:光文社
ISBN:4-334-97370-1
価格:1,300円
初版:2002年



消費ということについては、経済学部にいた頃から、
非常に興味を持っていたテーマで、
その関心は、今でも続いています。

実は、大学を卒業するとき、
大学院に行くことも考えていた経緯があって、
そのひとつとして、東大の総合文化研究科もチェックしていて、
そこの教授のひとりが、著者の一人の松原教授です。

経済学では消費そのもののについては、
ほとんど考察されることがなく、
使えるお金(=可処分所得)が増えれば、
消費は増えるということは分かっても、
商品が形成される過程や、
そもそも消費者がどういう状況に
置かれているかということは、、
経済学では、明らかになりません。

また、経営学も企業としての視点であり、
経済学のように、企業・消費者双方の視点がなく、
わたしの知りたいこととは、ちょっと違っていました。

この本の冒頭で辰巳氏が述べているように、
消費する、つまりモノを買うということが、
どのように経済に影響しているのか、
ということ、あるいは不況を乗り切るために
個人消費を拡大させなくてはならないと言われても、
「風が吹けば桶屋が儲かる」式の議論のように思えて、
ちっとも関係性が見えてこないことが、多いのではないでしょうか。

そこを鋭く(?)切り込んで、
消費者って何かというところまで、
踏み込んで理解しようとする対談です。


わたしは、次のようなことが、非常に面白かったです。

(1)消費者が商品検討のとき、複数の判断基準を持ち、
   その組み合わせで個性を表現しようとしていること。

(2)消費者の身の回りに、情報・知識が要る商品が増えて、
   学習することが多くなったこと。

(3)熱心に情報を集めて、自分に合うものを見つけようとする
   ジャンルならいくらでも学習するが、
   そうでないものはランキングやPOPで見当をつけて、
   購入にいたるということ。

(3)消費者はモノを買うというときの人間の一側面であり、
   モノを買うことばかり考えているわけではないから、
   必然的に消費に回せる時間や労力は限られているということ。

(4)ということは、自分で選べるということに対する価値が
   薄らいできており、むしろセレクトショップのような
   確かな目で選んでくれるお店が注目される、
   というのも理解できる。


なるほどなぁ、と思わず言ってしまいました。
ほかにもテーマはいっぱいありますので、
誰でもしている日常の買い物と経済の関係に
ご興味があるなら、一度手にとられてはどうですか?


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