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自転車通勤で行こう

<ブックデータ>
著者:疋田智
出版元:WAVE出版
ISBN:4-87290-063-4
価格:1500円
初版:1999年



今、自転車が盛り上がっているようです。
わたしは、中学になったころから、
近くの街を離れ、いろんなところを自転車で
行くようになりました。

それは、高校、大学、そして東京に居を移した今でも
基本は変わっていません。
関西にいたときは、神戸や京都、奈良など近隣の府県
にまでよく遠出しました。

少し遠出をするごとに、自分の領土が増えたような気がした、
というのは、本当にその時代を自転車とともに
過ごした人間ならば、感じることではないかと思います。

自分で動かしているという実感や
目的地に到着したときの達成感、
途中で寄り道をして思いもかけない発見、
少々の狭い道でも、小回りが利く軽快さ。
自転車には、確かに深い愉しみがあります。

ただ、せっかく自転車の愉しさを伝えようとしているのに、
ちょっと勢いあまっているような印象があります。
それは、自動車と電車に対する
あてつけ(わたしにはそう読める)です。

わたしは、いま車には乗っていません。
それは、都内ではかえって不必要なものだからで、
もし必要ならば、借りてしまえばいい
と思っているからです。
都市部には、そういう事情はあるでしょう。

また環境問題を考えると、確かに自動車は
分が悪いといわざるを得ません。

ただ、どうなんでしょう。
進歩・繁栄・消費の象徴としての自動車と
その進歩の抗(あらが)う象徴として自転車
という図式で自転車のすばらしさが語られるのは、
どこかしっくり来ない、のです。

自動車に乗ることは贅沢なのか?
それは、都心に住むか郊外に住むか、
はたまた地方に住むかによって答えは違うでしょう。
また、これから進んでいかざるを得ない
高齢化社会の到来を考えてみれば、
必要とされる場面は、まだまだあまりにも多いでしょう。

自転車は決して、進歩から取り残された存在ではない。
むしろ、自動車が進歩した先に、
自転車が進歩していく世界が開ける
のではないでしょうか?

そして、自動車が進歩してきたときに
決して自転車がなくなったことがないように、
自動車もまた、絶対に必要なものとして、
それも、けっして虚栄心を満たす贅沢なものではなく、
必需品として、残るとわたしは思います。

ただ、この著者に諸手を挙げて賛成することは、
自転車には、「確実な正義」があること、
もう一度、変な世間体や虚栄心などを一切なくして、
自分にとっての移動手段というものを
見つめなおしてもいいのではないか、ということです。

ちなみに、電車という存在はどうなんでしょう。
わたしは電車も好きで、自転車にはない魅力があります。
夜行列車の旅などは捨てがたいものがありますし、
同じ通勤電車でも、たまに使う路線を変えたりすると、
新鮮な気分で出社できるから、不思議なものです。

一度読めば、自転車や自動車、電車と自分の関係を
もう一度見直す、貴重なきっかけになるかもしれませんよ。


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