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それがぼくには楽しかったから

<ブックデータ>
著者:リーナス・トーバルズ(Linus Torvalds)/デイヴィッド・ダイヤモンド(David Diamond)
翻訳者:風見潤
監修者:中島洋
出版元:小学館
ISBN:4-7968-8001-1
価格:1800円
初版:2001年



最近出版された本で、けっこう宣伝もされていますから、
ご存知の方も多いかもしれませんが、
ご紹介したいと思います。

だれでも、自分が好きなことをテーマに、
話したり、文章を書いたりすることは楽しいものですが、
部外者にとっては、つまらないこともあります。

おそらく、パソコンのぱの字も知らないような人にとって、
この本の前半は、つまらないことかもしれません。
わたしだって、プログラムを組むわけじゃないですし、
チンプンカンプンでしたよ。

でも、そういう具体的な何かではなく、
彼にある根本的な考え方というか、
世界観というか、哲学というか、
そんなところが、読んでいてとても心地好い。
ある意味、こういう考え方ができる人は
「癒し系」かもしれないな、と思います。
本人には、その気は毛頭ないだろうけど。

世の中には、臆面もなく
自分の思考回路が、相手ももっていて
当たり前だと思う人や、
気持ち悪いくらい人を褒めちぎる人とか、
この先はこうなるんだと、
あたかも知っているかのように言う人とか、
いわゆる「押しつけがましい」人が、いますよね。

わたしは、こういう人ニガテなんです。
もちろん、それぞれ独自の考え方を持っていて欲しいし、
その中から自分が、学べるところもいっぱいあると思うんですが、
価値観が違うからこそ学べるのに、
同じで当たり前と思われてしまうと、
厳しいものがあります。

このような、世界観を押し付けられることを
拒否する気持ちや、自分自身で決めたいということも、
共感できるところでしたが、さらにそれを超えて、
オープンソースの眼目を、リーナス・トーバルズその人を、
無視できる力をもっていることが大事なんだ、
とそう言えるところに、すごさを感じます。

リナックスをはじめた彼が、
コミュニティのなかで、一種のカリスマ性を持つのではなく、
コミュニティのメンバーが、
もし違うなと思ったら、彼の提案を却下して、
リナックスを進化させられる環境があること。
自分を押し殺す謙虚さというか、
エライとかいう謙虚さじゃなくて、
カッコいい謙虚さのように感じます。

オープンソース。
作る側の一部の人が考え、創るのではなく
作る側と使う側が一緒に考え、
みんなが変えることができ、
みんなが使え、みんながフィードバックできる…
夢物語では必ずしもないんだと、
ほっと安心しますよね。
もちろん、すごくきついときもあるはずでしょうけど。

また、知的財産権や著作権についての考え方にも。
非常に共感できる部分があります。

自分が作ったんだという証しとしての著作権は、
大事だけれども、他人がもっといいものに進化させたり、
使ったりできないようにしたり、
さらに訴えたりするのって、いいのって感じで。
もちろんなぁんにも生み出しちゃぁいない
わたしが言うっても、説得力がないんですけどね。

彼の黄金律は次の3つだそうです。
「自分がして欲しいことを人にもしてあげよう」
「自分のすることに誇りをもて」
「そして、楽しめ」

わたしも、このようなことが実現できる人でありたいと、
願う次第です。


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