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豆炭とパソコン〜80代からのインターネット入門

<ブックデータ>
著者:糸井重里
出版元:世界文化社
ISBN:4-418-00520-X
価格:1400円
初版:2000年


この本中身の多くは実は、「リンクのつどい」で紹介している
「ほぼ日刊イトイ新聞」で読むことができます。
さらに、これが単行本化していくまでの出版社の方と
糸井氏とのメールのやり取りも。

ならば、なぜ買ったのか?
それはこの本に買わせる力があったから、
としか言いようがありません。
無理をしてもっと説明しようとするなら、
目を通しさえすればいいというような、
クールな情報としてみたくないような気がした、
ということは言えるかもしれません。

この本は、パソコンやインターネットのことについて
書かれてある、と言って間違いがないでしょう。
でも、パソコンやインターネットに関して
どうしたらいろいろなことができるか、
ということについては、ほとんど書いてないのです。

その肝心の内容は、80代のミーちゃんという糸井氏の母上が、
パソコンやメールを書けるようになるまでの話です。
でも、80代「なのに」できるんだよ、というスタンスで
書かれてあるわけではありません。

それに、パソコンやインターネットでできることが
これだけいろいろ宣伝されているのに、
ここでの話は、まるっきり初歩の初歩です。
パソコンを使えるようになって、
メールを書いたり、日記を書いたり、絵を描いたり。
それだけ。

そんなの読んでおもしろいのか。
もっと楽しい「はずの」使い方があるのにさ。
いまどき、そんなことだけじゃつまんないんじゃないの?
なんていう人もいるでしょう。

でも、大切なことは、興味の流れに素直に身を任せ、
使って楽しくなることであって、
いろんな機能をつかうことや新しいことを
すること「そのもの」ではないような気はしませんか?

この本には、そんな「使いこなすということはこんな風になることですよ」
という楽しむ原点が、宝石の原石のようなカタチで、
この本に収まっている、と言いたくさせる本です。

Linuxの生みの親であるリーナス・トーバルズ氏は
こんなことを言ったそうです。

技術はそれを意識しないで使えるようになったとき、
技術だと思う人はいなくなる。
(メールマガジン「今日の名言2000年8月21日号」より)

パソコンとインターネットを使えるようになるまでの話なのに、
実際印象に残るのは、インターネットの技術的な事柄ではなくて、
南波先生や野次馬で見に来る近所の人との
楽しそうな人間関係であったり、
ちょっとパソコンに慣れてしまった人たちだったら、
もう忘れてしまっていたり、見落としたりするような、
ミーちゃんのおもしろい目のつけどころだったりするんですね。

パソコン雑誌や毎日のIT関連のニュースに
うんざりしている人には特におもしろいんじゃないかなぁ、
と思いますが。

そして、これはなにもパソコンと向き合うことだけに
限ったことではなく、生活するということ一般に
関わりが少なからずありそうです。
今というときが、自分が生まれてから
何年経っているかどうかとは関係なく、
一日一日が楽しくなる秘訣が
この本にはあるような気がします。


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