• 個人住民税の住宅借入金特別控除


1.制度の目的
 平成19年から、地方分権を目的に所得税が減税され、住民税が増税されるという税源委譲がなされました。
税源委譲が目的であるため、税率の変更で納税者の税負担が増えることのないように、所得税と個人住民税の合計税額の変動が無いような税率変更になっています。


 しかし、所得税には住宅ローン控除という所得税のみの税額控除があり、所得税率が減少することで、今まで所得税から控除できていた部分が所得税のみでは控除しきれない部分が出てくる人が出てきます。


以下に、例示します。


ex.仮に以下のようにそれぞれを設定します。
  税率変更前
  所得税27万円 住民税18万円 住宅ローン控除25万円


  税率変更後
  所得税17万円 住民税28万円 住宅ローン控除25万円


これをもとに所得税と個人住民税の合計税額を計算していくと
  税率変動前
  27万円−25万円=2万円(所得税) 
  2万円+18万円(住民税)=20万円


  税率変動後
  17万円−25万円=−8万円→0円(所得税)
  0円+28万円(住民税)=28万円


と税率変動後は8万円の増税というようになってしまいます。


 このような不利益にに対応するために、住宅ローンについて、住民税からも特別に控除することを可能とする新たな制度が設けられました。これは、源泉所得税から控除されてもなお、引ききれなかった所得税の税額控除部分を住民税から引いてしまおうという制度です。


 つまり、そのまま残ってしまった住民税28万円から控除しきれなった8万円を控除し、合計税額を20万円することができるようになるわけです。


 平成19年の所得についての個人住民税は平成20年に支払うことになっているため、平成20年において控除されることとなります。


 この制度は、納税者自身が住宅ローン控除を受けようとする年に毎年申告する必要があります。今回のケースからいえば、申告しなければ8万円多く納税するわけですから、適用を受けられる人は絶対にやらなきゃ損です。


2.摘要の判定

居住開始要件
 平成11年から平成18年までの居住者
 平成19・20年に関しては、控除期間15年(10年と15年の選択可能)を選択することで、所得税から控除しきれない住宅ローン控除額が発生しにくい仕組づくりがなされていますので、適用は受けられないことになっています。平成18年以前に居住し、まだ、所得税の住宅借入金等特別控除の確定申告をしていない方は、確定申告をしなければなりません。


 源泉徴収票の摘要欄に住宅借入金等特別控除可能額の記載がある、もしくは源泉徴収税額が0である人。
 源泉徴収税額がでなければ、所得税から全額控除できているということになるため、住民税からの控除はありません。


3.申告の手続き

 まず、申告書を手に入れる必要があります。入手可能な時期は市区町村によってかわってきますので、各市区町村にお問い合わせしてみてください。市区町村によってはホームページで入手できるようになっています。先にも述べましたが、この個人住民税の住宅借入金等特別控除を適用を受けようとする人は、毎年申告する必要がありますので、これからも控除を受け続ける方は、今回申告しただけで安心しないでください。


 申告書については、平成20年3月17日までに提出する必要があります。給与所得の源泉徴収票の原本(コピー不可)を添付し、平成20年1月1日現在お住まいの市区町村に提出してください。


4.申告書の記入方法

 今回は特に給与収入を受けていて、年末調整の対象となっていた人で、既に所得税の住宅ローン借入金控除の確定申告を済ませている人を対象とした申告書の記入方法を紹介します。源泉徴収票をもとに記載していくことになりますが、借入金の残高は記載されていないため、残高をメモなどに記録していない方は、年末調整時に会社に提出した「住宅取得資金に係る年末残高等証明書」の金額をメモにとらせてもらうか、コピー等(申告時に添付の必要はありません)を会社にもらって記入するようにしてください。
 

(1)年度・・・・・・・・・・20年
(2)提出年月日・・・・申告書の提出日を記入してください。
(3)現住所・・・・・・・・現在の住所です
(4)1月1日の住所・・1月1日の住所です。たいていは、お変わりないでしょうから「同上」でいいです。
(5)住宅借入金等特別控除の対象となる物件の所在地
    ・・・これも、現住所とお変わりなければ、「同上」でいいです。
(6)整理番号・・・・・何も記入しません。
(7)電話番号・・・・・納税者自身の電話番号です。
(8)生年月日・・・・・納税者自身の生年月日です。
(9)年末残高の記載・・新築又は購入、増改築の該当項目に年末時点の残高を記入します。
(10)市区町村税・道府県民税から控除される住宅借入金等特別税額控除額の計算
 以下、@〜Kのとおりに記入していただければ、おのずと計算される仕組みになっています。
  
@前年分の所得税の住宅借入金等特別控除可能額
 源泉徴収票の摘要欄(源泉徴収票の真ん中あたり)に住宅借入金等特別控除可能額として記載されていますので、それをそのまま記入します。
  
平成18年所得税法等改正法施行前の所得税相当額
A前年分の給与所得控除後の給与等の金額
  源泉徴収票の給与所得控除後の金額の欄の金額をそのまま記入します。
     
B前年分の所得控除の額の合計額
  源泉徴収票の所得控除の額の合計額をそのまま記入します。
     
C前年分の所得税の課税総所得金額
 AーBをし、千円未満切捨てです。(例.3,687,575円→3,687,000円)
  計算の結果、マイナスになるときは0を記入します。
     
DCに対する所得税額相当額
 Cに18年の税額表(※表1)の税率をかけ、控除額の控除をした金額です。
     
E租税条約実施特例法における利子・配当
 国外から受ける利子、私募公社債等運用投資信託等の収益の分配、懸賞金付預金等の懸賞金等、給付
 補てん金等がある場合に記入します。給与収入のみであれば、記入の必要がありません。
     
FD+E
 最終的な税額の記入です。18年の税率を適用した場合に所得税がどれだけだったかをあらわしています。
  

G前年分の所得税額(税額控除前)
 上記Cの金額に19年の税率(※表2)を適用して、計算した金額です。平たく言えば、住宅借入金控除部分を控除しなかったとした場合の19年度の所得税です。  
  
控除額の計算
 H@とFいずれか少ない方の金額
 控除できる額は、「18年の税率で計算した場合の所得税(F)」を限度としています。つまり、源泉徴収票に記載されている住宅借入金等特別控除可能額(@)の全てが控除されるわけではないということをHの式があらわしていると考えてください。
 ※この制度は税源委譲に伴う、所得税の税額控除の不利益を保障するものであることは先ほど述べました。ここで、もし@の全てを住民税で控除すれば、税源委譲に伴う不利益を超えた保障を与えてしまうことになるため、認められないわけです。
 I市町村民税・道府県民税の住宅借入金等特別税額控除見込額(HーG)
       このとおり計算してください。
     J市町村民税の住宅借入金等特別税額控除額(I×3/5)
       控除額のうち、市町村民税部分(3/5)
     K道府県民税の住宅借入金等特別税額控除額(I×2/5)
       控除額のうち、道府県民税部分(2/5)


※表1:18年度の所得税の税額表

課税所得の金額(上記C) 税額の計算方法
(1) 1,000円〜3,299,000円 課税所得×0.1
(2) 3,300,000円〜8,999,000円 課税所得×0.2-330,000円
(3) 9,000,000円〜17,999,000円 課税所得×0.3-1,230,000円
(4) 18,000,000円〜 課税所得×0.37-2,490,000円

※表2:19年度の所得税の税額表

課税所得の金額(上記C) 税額の計算方法
(1) 1,000円〜1,949,000円 課税所得×0.05
(2) 1,950,000円〜3,299,000円 課税所得×0.1-97,500円
(3) 3,300,000円〜6,949,000円 課税所得×0.2-472,500円
(4) 6,950,000円〜8,999,000円 課税所得×0.23-636,000円
(5) 9,000,000円〜17,999,000円 課税所得×0.33-1,536,000円
(6) 18,000,000円〜 課税所得×0.4-2,796,000円

5.その他
 ちなみに、個人住民税から控除してもなお引ききれないという場合には、その金額についてはあきらめてください。
 翌年で、繰越控除されることや、還付されるなどということはありません。また、住民税の所得にかかわらずに課税される均等割については適用はありませんので、住民税から控除しきれなかったとしても、いくらかの住民税は発生します。


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