卒業旅行−前編−

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by,石礫


1.思い出語り

「高木君、カラオケ行かない?」
佐藤からの誘い…しかし…
「あ、すみません、先約があるんで」
と高木は残念そうに断る。由美がからかう様に
「先約?なに?浮気かな。うわ−たらしっ」

「ち、違います!!高校の時の友達と久々に飲むんです。あ、言っておきますけど、男とですよ!」

 

待ち合わせをしていた居酒屋。彼は知り合いをすぐに見つけた。

「悪い幸!…遅れた。」
「めっちゃ遅い!!」
彼の名は板垣幸彦、女子高の体育教師である。
「悪かった……って、修、まだ来てないじゃん?」
「まあなー」
話題に出てきた修は、榎本修、会社員である。

「女子高の体育教師楽しんでる?…まさか、幸。警察のお世話になる様な事してね−だろうな」
「心外なっ」

「刑事、教師。悪い悪い遅れた」
「会社員、遅かったな(笑)」
「もう、先にやってるよ会社員(笑)」

「今や、ワタルも本庁の刑事さんかーしかも捜査一課。めちゃくちゃ花形じゃん」
「いやあ…照れるなぁ」
「で、女出来た?」
幸彦の質問にワタルはぶっと、飲んでたビールを吹き出した
「それは、出来てないって事だな」
「ちょ、ちょっと、修!なんでそうなるんだよ…」
「じゃ、居るのか?」
「……っ、誘導尋問かよ…くそぉ刑事形無しー(涙)」

「どれどれ、聞こうか。」
と二人は興味津々でワタルに注目する。ちょっと戸惑いながら意を決した様に佐藤の事を話す
「うんと…同僚に好きな人がいるんだ。で、彼女とは…どうなるのかまだわからない所…ッて、聞けよオイ!!幸!修!」
幸彦と修はサッカーの話で盛りあがっている
「人に言わせるだけ言わせて聞いて無いモンなぁ(泣)」

「そういや、刑事って言えば、あの事件思い出すなぁ…」
「…あれか」
「まさか、あんな事に捲き込まれるなんてなぁー、今になってみると良い話の種だよ。女子高生に人気者だぜワタル」
「なんじゃ、そりゃあ!?」
「たまに、生徒さんに刑事さんになった君の話させてもらってます。」
「なんか、勝手にオレのイメージ作られてそー」
「なーんだ、幸は自分が解いたって言って無いのか(笑)」
「オイ、こらっ(^^;)」

あの事件…このメンバーで卒業旅行した時に巻き込まれた事件の事を思い出す。

 

2.卒業旅行

「このメンバーでどっか行きてぇなぁ。卒業したらワタルとはしばらく会え無くなりそうだしな。」
「オレは春から警察学校だしな。そうだ、卒業式終わったらどっか遊びに行くか」
「あ、それだったら、卒業旅行にしようぜ!!」
ワタルと修が同時に「その前に、幸!お前卒業できるかよ?ギリギリだろ?」
「それを言うなよぉ」

と、言う事から、高木ワタル、板垣幸彦、榎本修の三人は卒業旅行に行く事になりました。

ワタルと修はジーパンなどの出かけやすい格好なのだが、
「しかし…その格好は…」
幸彦はやたら派手なシャツとジャージのズボンで来てきたので…引きつる二人
「帰りたくなってきた…ワタル、オレ帰ろうかな?」
「なんでだよっ(苦笑)」

三人は取ったばかりだが免許を持っていたのでレンターカーを借り、予約を入れていたペンション(東京だが、かなりへき地)に車で向かう事にした。
くわえタバコで運転するワタル(…オイオイ未成年(苦笑)
「…こらっワタル!なんで安全運転なんだよ…父さんそういう子に育てた覚えはないぞ。」
「誰が父さんだ!!…だって、いきなりキップ切られたくないしー」
「春から警察学校じゃ…捕まりたくないのわかるけどさ…なあ、修。お前もなんか言えよ。」
「ああ、こんな所にネズミ取りはいないと思うけど…ヤンキーのクセしてそう言う所きちっとしてるよなぁ。」
「オレはヤンキーじゃないっつーの!!!」
「じゃ、元ヤンキー」
「…も…もういいです(泣)」
「ああ、まどろっこしい!!オレが運転してやる!!」
「おう、助かった。さすが、幸彦さんだ(笑)」
「あ、ワタル、てめぇ…ワザだろっ」
「どーかなぁ?」

泊まる予約を入れてたペンションに近くなっていくと、急に雨雲が出て雨が降ってきた。
「うわ雨かよ!!」
車のワイパーを動かす。雨の為か周りが暗くなっていく
「うわ、まだ昼だってのに暗くなってきたよ。大丈夫かぁ?」

やっと、三人はペンションについた

ペンションの前にはRV車とワゴン車とモトクロスタイプのバイクを載せてあるピックアップトラックが止まっている
三人も車を止めると、雨がまだ降っているので雨に濡れない様に急いで三人はペンションの玄関に向かう。

「うわぁ…おどろおどろしい雰囲気…ええと、ここだよな…」
「本当にここ?大丈夫かよ…ワタル、お前が予約入れたんだろ」
「幽霊、出そうだな…明かりついてないし…」
「ワタル、チャイム押せ」
「え−」
「代表者が押すってのが相場」
「ひでぇ」

チャイムを鳴らす
ドアが開けられ出てきたのは怖い顔
「うわぁつ出たー−−(涙)」
「いらっしゃい、予約とってた高校生の3人組みだね。」
「な、なんだ、…す、すみません驚いたりして…ええと、オーナーの梅木さんですか?予約とってた高木と他二名です。」
「オイオイ、他二名ってどう言うこっちゃい、」
「代表者だからね(ジト目)」
「なんだよ、根に持ってるのか?」

「でもなんでこの中、暗いんですか?」
「ああ、今さっき、ブレーカーが落ちゃって」
「でもチャイムは?」「バーロ、チャイムは電池だろ。」「そっか。」
「いや、ゴメンね。普段はこう言う事ないんだけどね(汗)」
そして、オーナーがブレーカーを上げペンションの電気が付いた

まさか、その時は、この3人、この後、事件に巻き込まれるとは思ってもみなかった

 

3.事件編

雨がやんできて、外が明るくなってきた。
三人が2階に上がってると、玄関の閉まる音を聞いた。
「?…誰か出かけたのかな?」

「一応、部屋に一つずつ風呂トイレ完備だから、君等のほかに大学生二人、OL二人、男性一人泊まっているからね。」
部屋割りの説明を受けている時にOL二人がそれぞれ部屋から出てきた。
強烈な美人だが冷たい感じがする女性が三人に話しかけてくる。
「あら…かわいい男の子達。お泊り?明日お姉さん達とバードウオッチングにいかない?」
「そんな年端も行かない男の子達からかうものじゃ無いわよ樹里。」
地味目な女性がその美人をたしなめる。
「やだ、梨果…マジメなんだから…だから貴方っておもしろくないのよ。」
スカートをはいている冷たい感じのする美人は木村樹里。ズボン姿の控えめな女性は根本梨果といった。

二人部屋に三人で泊まる事になっている。部屋はさっきの樹里って女性の部屋の隣です
部屋に入って三人は旅行荷物を置く。
「ふーんベランダがあるんだな」
「誰かが布団だな。」
「じゃ、下でちょっと明日の相談しようかー」
「そーだな」

 

下のリビングまでおりてきた3人。リビングにいると玄関が開閉される音がした。
「ただいま」
「お帰りなさい。東さん良い写真取れましたか?」
「いいや、短い時間じゃやっぱり良いもん撮れ無いよ」
と言うオーナーと東と言う人物の会話が聞こえてくる

その彼がリビングに入って来た。彼の名は東雄介…カメラマン。彼は上から下まで黒っぽい感じに見える服装だった。

食事を運んでいるオーナーが忙しくやっているので三人は手伝う
「いつも一人で?」
「いやあ、いつもはもう一人いるんだけど、実は親戚に不幸があってさー急に出かけたんだ。料理担当のもう一人が料理を暖めるだけにして置いてくれたから、電子レンジでチンしてるんだけど、数台使っちゃうせいなのかな。すぐブレーカー飛んじゃうんだ。今日だけの辛抱だから、食事前には電化製品あまり使わないでって言ってるんだけどね。誰か使うんだよ」
「あれ?ここって、一部屋ずつブレーカーがある訳じゃないんですね。」
「ここは普通の家を改造しただけだからね。」
西日が窓から差し込む。その時、リビングの窓が開けられる音。そして、家の周りに敷き詰められた玉砂利の上を歩く音がした。西日の差している開いた窓の外を見ると東が外で何かをやっていた。
「あれ?あの人何やってるんだ?」
「ああ、夕日の写真を撮ってるんだろう。彼は風景の写真取りに毎年来てるんだ。天気悪かったから出ないと思ってたけど…出たな夕日。」

写真をひとしきり撮ると、東はリビングに戻ってきた。そして、窓の外を見ながらタバコを吸っている。

電子レンジかけてしばらく経つと
バチンッ
「あれ、停電?」
「またブレーカー落ちたんじゃないんですか?」
階段のほうから男の声がしてくる
「おーい、またブレーカー落ちたの?」
「柄原がまた電気食うの使うから落ちたんだろ、すません、オレからよく言って聞かせます」

「すみません…すぐに上げますから!!」
オーナーはブレーカーをすぐに上げる。

「あ、君達ここもういいから。そっちで休んでていいよ。」
とオーナが言うので、三人はリビングに戻る。

タバコをまだ吸っていた東にワタル達は話しかける
「東さんは、風景写真専門にやっているカメラマンなんですか?」
「いいや。いつもは…グラビアを専門にして撮ってる。本当は風景を撮りたいんだけどな。」
「グラビア?アイドルのですか!?」
「いいや、アイドルとかじゃなくて…裸とかなんだけど…。」
「えー、も、もしかして週刊誌とかに載ってるような…あれですか?…なんか羨ましいですね。」
「ははは…(汗)仕事じゃ、そう言う気分になれないって」
そんな会話してる時に、大学生の二人が2階から降りてきた彼等は柄原和弥と柊直広。二人ともトレーナーとジーパンという、かなり、ラフな格好である。
「お二人は、ここには何しに来たんですか?」
「ここの近くにモトクロス出来るオフロードのレース場があってモトクロスを練習しに来たんだよ。レースが近いんだ。」
「モトクロスって、路面悪い所で、すげぇ坂とかをジャンプしたりするんですよね。結構、過酷なんでしょ?見てみたいなぁ。」
「だったら、君等、明日、練習見に来るかい?」
「あ、良いんですかー行きたいなー」

そんな会話を交わしている間に食事が用意される
「あ、オーナー、さっきはすみませんでした。よく言って聞かせましたので」
「柊君良いんだよ。」

「そういやー…木村さん達遅いですね。オレ達が降りる時に、一応、声はかけたんですけど」
「じゃ、オレが見てきます」
とワタルが席を立つと
「あ、オレも行く!!」と幸彦も付いてくる
「樹里さんが美人だからねー」

階段を上がっていると部屋のドアを叩く音が聞こえる。
「なんだろ?」

「樹里!!」といいながら、髪がすこし塗れているスカート姿の梨果がドアを叩いてる…
「梨果さん!どうしたんですか?」
梨果が声に気が付き、ワタル達のほうを振り向く。
「樹里をさっきから呼んでるんだけど、全然返事無いから。」
「ワタル、マスターキー貰ってこいよ!」
「あ、ああ。」

みんながドアの前に集まりマスターキーでドアを開ける
オーナーを先頭に、ワタル、幸彦、修、柄原、柊、東、梨果が部屋に入っていく

樹里の部屋(一人部屋)は窓が思いっきり開け放たれていて、何故か物が散乱している。
「あ、鍵がこんな所に落ちてる」
部屋の鍵が、絨毯の上に落ちている
「それより…なんだろう…水の音が…してません?」
ユニットバスの方から、水滴の落ちる音が聞こえる

「木村さん大丈夫ですか?」しかし返事は聞こえない…仕方なく戸のドアノブを掴むと…何故か、扉には鍵がかかっていなかった。戸をゆっくり開くと…

「これは…」
蛇口を閉め切って無いのかシャワーから漏れる水滴が湯船に落ちている。樹里は湯船の中で突っ伏した格好でいた。その中のお湯は完全に朱に染まっていた。
その状況に一瞬全ての人間が固まる、そして、その静寂を破ったのは梨果の悲鳴。

「きゅっ、救急車だ!!」
「いや…これはもう手遅れかもしれない…。」

 

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後書き:またまた、オリジナルキャラ創作してしまいました。創作した高木君の二人の友達、勝手に動いてます。なかなか上手くいったわっ!