捏造過去編

※この話は、キャラ設定や、術(名称・説明)など、
「はい!ウソ!」な捏造を含んだ大嘘が…前編でも言ったか…


Chronicle 後編

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by,石礫


-黎明が訪れる世界‐

動けなくさせられたが、自力で術を解き、カカシは四代目と九尾の狐が対峙する場に、だが、すでに、屍鬼封尽は執り行われていた。
カカシは、呆然とした…それは、聞いていた物とは形態が違っていた。
「……八卦屍鬼封尽!?」

その術、八卦屍鬼封尽は、敵の魂を引き摺り出し自らの身体に封印してしまう屍鬼封尽を、より発展させた物で、
敵の魂を自らではなく、他者の体に封じるという禁術中の禁術。
…術を成立させる為には、死神に術師の魂を捧げる事と、敵を封じる器となる媒体を必ず必要とする
だたし、術の性質上。媒体に敵のチャクラを受け入れられるほどの潜在的な能力がなければ、その媒体も危うい。諸刃の剣の術とも言える

「この術を成立させるには媒体が……まさか、媒体とは四代目のっ…まさか、ナルトがそこまでの潜在的チャクラを持っていると?」
「そうじゃ…あやつは、ナルトの潜在能力に賭けて、八卦の封印式を組む気じゃ…」
「そんな!あの術は、媒体まで犠牲になる可能性もあるんですよ!」
「…ワシ等の力では、九尾は止められん…最早、手段はこれしかないのじゃ」


里の為だけに、先生とあの子の幸せを奪う権利なんかが、どこにあるんだ


「…んなの、わかるかよ!」
里に必要な人が犠牲になると言う理不尽な状況に激昂し、止め様と術を執り行ってる場に走りだしかけるが
「行ってはならん!」
そんなカカシを三代目が止める
「離してください!なんで、先生が里の為に犠牲になんなきゃいけないんですか!…それに、あの子だって犠牲になって良い訳無い!」
「あ奴の意志を汲んでやれ。」
「嫌だ、離せ!お願いだから、行かせてください!オレはもう誰も……」

九尾と四代目のチャクラが掻き消され…九尾と四代目の体から生気が消え行く…それはつまり術が成立したのだ

「…せ、先生―――ッ!!」
四代目の最期の瞬間、カカシの声が届いたのか、目が合った。四代目の顔は…信じられないほどの微笑みだった。
その微笑んでいた口唇が『ナルトの事、頼むよ』と動いた気がした


次の瞬間、四代目の體が大地に叩きつけられた。

四代目の死に顔はそれはそれは誇らしげな微笑みだった。
自分の幼子を、命を張っても守りたいと言っていた父が幼子に望んだのは、
器として生まれながらの英雄となるのか、押し付けられた烙印すらも越えて英雄になるのか…果たして、そのどちらだったのだろう…

…図らずとも、父親の手によって、大いなる罪を背負わされた真っ白な子供の人生は、ここから始まるのだ。


そして、本当に全て失ってしまった少年は、ただ一人…希望と言う光を忘れる様に、夢も何も見ないと目を閉じて…



-癒せぬ渇き-

彼は暗部となり、仲間思いで、冷静な忍者として活躍していた。…その実、自分の命を軽んじるだけ軽んじていたが

だからこそ、死に急ぐ様に、いつも危険な任務ばかり選び、それをこなすカカシ
カカシは任務が終わると、決まって、火影の家に預かられているナルトの子守りをかって出る

「ナルト、元気だった?」
幼いナルトは決まってニコニコして、カカシを迎えてくれた
「ナルトはオレの元気の素だよー」
思わず、抱き寄せて頬擦りのついでにちゅーと言うお決まりのコース。…そして、いつもの様に三代目に呆れられるのだ

カカシにとって、ナルトは、唯一愛しいと思える存在。そして、その存在にいつも癒される

…危険な任務であればあるほど、その心が癒される。その癒される瞬間が、異常な程のカタルシス。
それは、まるで、欲望の昇華。…その恍惚感を味わいたいが為に、更に危険な任務に向ってしまう悪循環。

ただ、そこにあったのは、この少年を、過去から一歩も踏み出せなくしている癒せぬ渇きだけ



-狐の防人-

青年になりつつある少年。何が絶対で、何を守るべきかを、見失っていた

カカシが受けていた長めの任務が終了し、久しぶりに帰って来た里、最近、会えずにいたあの子の顔を一目…と思った
尋ねると、ナルトの警護をしている暗部が慌ててる。ナルトの存在を日頃、快く思って居ない里の者に攫われてしまったのだと言う
ボーっとその事を聞きながら頭を掻くカカシ

ったく、なーに、やってんだか…オレはナルトに早く会いたいってのにさーぁ。

カカシと話していた暗部の青年は、自分はどう責任取るべきだろうと叫ぶ。
「奴等は、ある程度の手練…それに、あの方に何かあったら火影様になんとお詫びをしたら良いか」
「なら、今すぐハラ掻っ捌けば?」
ヤル気が無さそうなカカシの声なのに、それは最大限の殺気が篭っていた。…ひいっと短く悲鳴を上げる暗部の青年…

「で、そいつ等が行きそうな場所はどこー?」カカシの、のほほんとした口調とは裏腹に纏わりつく殺気が怖い。
死を意識させられたその暗部の青年は、まるで、蛇に睨まれた蛙。
「…しっ…死の森……」と、体をカタカタと震わし、青年は声を裏返しながら、答えると、
いつのまにやら、青年の目の前からカカシは姿を消して居た


森に集まっているチャクラを探って見る…気配を断って居るようだが、カカシレベルの上忍には捉えられる程度
「そんな程度で気配を消したつもり?なめてるねー」
だが、やけにナルトの気配は薄かった…生きて居るとは分かるが…嫌な予感がした
ナルトを攫った者が、個人ではなく集団と言う事が気がかりなのだ。

人は、集団になれば、個人で決断を下すよりも、偏った方向に決断を下し易い傾向にある。
その危険性を知っていながら、見て見ぬフリをしていた、さっきの暗部もこの件に噛んでると、カカシは思えた。
何故なら、さっきの暗部の青年は相手を「奴等」と言い切ったからだ。他は人数すら把握してなかったのにだ。

だが、今はナルトを救護する方が、それより重大。それに、その件に関しては三代目が片付ける事だろう…とも、思っていた


森の木々を抜け、多少開けた場所、眼にナルトの姿を捉えた、
「死ね、化け狐がっ!」の言葉とともに、恐怖に震えるナルトの身体に付きつけられる刀、ナルトの血飛沫がやけに闇に映えた

「…ナ…ッ……!!」

九尾に良く似たチャクラが膨れあがる…ナルトの瞳が赤く染まる。傷が見る見るうちに塞がって行く
「きゅ…九尾が…」と恐れおののく、強行に及んだ忍者達

カカシは、その場についた瞬間に、その者たちを拳で殴り付けた。

「先の考えも無しに!何をした貴様等!!」

相手は同じ木ノ葉隠れの忍者の筈なのに、ナルトを傷つけた彼等への殺意が押えられない。
この場で始末をつけると、カカシが背中の刀に手をかけた時、ズボンの裾を引っ張る小さな手に気が付く

「…ダメ…ニンジャさんたちいたいいたい…ダメってばよ」

「え?」
カカシを見つめる蒼い瞳。ナルトを包んだ九尾のチャクラは既に消えていた。
傷つけた筈の者達を案じる小さき子供の姿に忍者達は目が覚めたような顔をしていた。

ナルトは全てを許し、目の前で誰かが傷つくのを嫌う優しい子供。あるいは、それは、ナルトが里で生きる為、人々に望まれている姿なのか…
カカシは暗部面をしていて表情はわからないが、震える拳を握り込んだ。

ナルトを抱き上げるとカカシは彼等を一瞥する
「里の掟を破った貴様等には、それ相応の処罰が下るものと覚悟しておけ!」
木の葉隠れの暗部の仕事の言葉を言い…それから、

「…たださぁ、この子に感謝しなよ。……この子が止めなきゃ、オレ、間違い無くアンタら殺してた。それだけは覚えておいてよ」
と殺気を込めた視線のまま、個人的な意見を言い残し、その場から離れた。

ナルトをダッコしながら、火影の家への移動中、カカシは尋ねた
「あいつ等に言われたこと覚えてる?」
「ううん。………きぃついたら…えっ…と……?」
「カカシ。」
「…かぁし?…いたってばよ!」
「………ねえ、いっつもこーなの?」
「いわれるだけ」
「どーして、怒らないの?」
「なるとはいらないコだからイイの」

「いらないって?そ、そんな事、な…」ナルトの言葉に、カカシが否定の言葉を言う前に、火影の家に到着していた
「わ、もーついたぁ!すげー!あ、ほかげのじーちゃただいまってばよ」
迎えに出ていた三代目に抱き付くナルト

すやすやと、気持ち良さそうに眠るナルトの姿を見届ける
「申し訳ありません。」
「カカシが謝る必要は無い。」


ナルトは、オレしか守れ無いと思いあがっていて…その、挙句が、守れもせずに、手をこまねいていただけ?
ホント、冗談じゃないよ…


あの時の先生が、言いたかった事が何となくわかってきた気がする

どこかで力が全てと思いこんでいた…忍者である前に。人の心を失って…オレは、停滞したまま、光に背を向け、闇ばかりを見てただけ…。
オレが立ち止まっていた間に、ナルトは成長し前に進んでいたのにね

オレの闇を照らすのは、いつだって、ナルトと言う光で、在り続けるのなら…
…先生。…どうか、オレに、この光を守らせてください…オレにナルトを守る力を…本当の強さを下さい。



-泡沫の夢、覚める時-

目を覚ましたナルトの前に、居たのは銀髪の青年
「おはよ」
「ダ、ダレだってば」
「あ、ごめん。わからないか?」と、言うと、暗部の格好と暗部の面を見せた
「かぁし?」
「せぇーかいv」
三代目に頼み込んで、任務が無い限りナルトの傍にいる事になったカカシは
「オレは、ナルトの傍にいるよ」と微笑む。
「いーの?」
「良いよ。」
カカシのその言葉を聞いて、ナルトは幸せそうに笑った。その笑顔にカカシまで幸せな気持ちになった…。

そして、しばらくの間、二人は一緒に過ごした。それは…崩れ去る砂上の楼閣にあった甘い日々だった。

各国の手配書ビンゴ・ブックに載るほど、有名だったカカシを指名した長期の任務が入る。…早くて1年、長くて3年の任務だった。
しばらく会えないとカカシがナルトに伝えると
「ニンジャはニンムがダイジだからしかたないってばよ!だーいじょーぶ!おれってばヘーき!」とナルトは笑うように言う

忍者であるが故に、無事さえ保証出来ないのが怖くて、ナルトに対して…『待ってて』『絶対、帰ってくる』と言う言葉を飲みこみ。
カカシは何も言わずに、ナルトの前から姿を消してしまう。…それが、ナルトを傷つける事になるとは、気づかずに

「ナルトに会う事はならん」1年も掛からずに、任務を終わらせ戻って来た彼に、ナルトと会う事を禁じる三代目。
それでも、会いたくて、会いに行くと…ナルトは、目の前に現れたカカシの姿に怯えるのだ。

「ダレ?」とナルトは訝しがる
「なーに言ってんの!忘れたフリ?」
「しらないってば!」
「わかった!あの時、何も言わなかったから、まだ、怒ってんの?」
震えるナルトの肩に手を置こうとした、瞬間、パシッとカカシは手を跳ね除けられた。
「さわんな!あっちいけ!」
呆然とするカカシを尻目に、三代目の姿を見かけ、ナルトは、真っ先に三代目に駆け寄ると、その影に隠れた

「なんで?」

「ナルト、向こうで遊んで来い、こいつには、よく言い聞かせておくからのォ」
「はーい」
ナルトがいなくなってから、カカシは、三代目に詰め寄る。

「どー言う事ですか!なんで、ナルトはオレの事、何にも覚えて無いんですか!」
「お前と会えなくなった事が、よっぽど絶えられなかったんじゃろう…お前の事を全て忘れたらしい」
「そんな…」
「だから、あれの心が、どんなに傷ついても、壊れる事の無い物になるまで、お前を傍には置けん。わかるな?」
「…はい」

『裏の裏を読め』が常の忍者でありながら、小さなナルトの強がりも、苦しささえ、気づかなかったカカシにとって…それは、残酷な破綻。



-黙する守護者-

カカシの名前があまりにも有名であるが故に、彼を指名する任務も多く、暗部での活動さえ、し難くなってきたので、
結局、数年後には辞め。
「ナルトの担当上忍」になるという三代目との密約もあって、兎に角、下忍担当の上忍をする事になったのだが…
彼のあまりにも厳しい下忍認定試験に子供達はことごとく脱落し、同僚の上忍や、三代目に呆れられる事になる。

自身の任務が無い暇な時は、忍者学校の生徒達…と言うよりは、一人の金色の髪の子供の姿を目で追った。
ナルトは、人の痛みを知る故に、人を傷つける事を選ばない…元来の優しさは失わずに根底にある…そんな子供に成長していた。

いつしか、ナルトが忍者学校の教師イルカに懐いていく

ナルトを理解する人間が増えるのは嬉しいと思うのに…それに反比例して、ナルトの心に触れようとする人間が…カカシには憎くて堪らない。
胸に抱くのは庇護欲とは言えない感情…それは親愛ではなく、劣情を伴う愛情なのだ。そして、その事に、いつの間にか、気づいていた。
昔の自分がナルトに癒される為に危険な任務に向っていたのは、その実、欲情の代償行為でもあったのだ。

しかし、どんな想いで居たとしても、見守る事しかできないのが現状だった。ナルトの担当上忍で監視役になるまでは



-真っ白な光-

自分に九尾の狐が封印されていると知った金色の少年は、深淵の闇を知っても、なおも、穢される事の無い輝きを手に入れた

「火影を越す!!ンでもって里の奴らにオレの存在を認めさせてやるんだ!!」
夢を語るナルトの姿。それを見て口布の下でカカシの唇は微笑みに形作られた


…面白い成長をしたな…


再び出会ったナルトは、カカシが初めて、ナルトと出会った…彼の日よりも、ずっと鮮やかに輝いてた。
その輝きに、変わらぬ想いを知り、新たな想いが生まれる。そして、彼は思うのだ。もう一度、はじめる事が出来るのだと
ただし、その輝きは、絶えず人々の心の闇を祓う光であり、
その輝きを知った者は、それに惹かれる、おまけ付きで…カカシは別の意味で気を揉む事になってしまうのだが…それはまた、別の機会に



-my sunshine-

はたけカカシは、慰霊碑の前に立っている。慰霊碑に刻まれた親友の名前を眺めていた…


慰霊碑の前に来る事は…オレにとって、儀式みたいなもんだ。人に言わせれば、儀式化してる時点で強迫観念になってるらしいが…
ここで、オレは後悔だらけの昔の自分から…一歩、前に踏み出す。

「………さーてと、そろそろ行くかな」

集合場所に着くと、いつもの様に、佇む黒髪の少年と、オレの遅刻へ文句を言ってる、桃髪の少女と金髪の少年の姿を眺める
うん、今日も、オレのナルトは太陽のよーだね。さて、今日は、どんな言い訳にしようか…

「やあ、おはよー諸君。今日は…」



FIN

後書き:はじめてのシリアス展開でした。この話のカカシは、ナルトに何かあると、途端に攻撃的になってしまうよーな青い奴イメージです
今まで書いている話と微妙につなげてるんだけど、辻褄合わなくなってるような…… ま、いっか。(^_^;)←オイオイ
ラストは7班との会話で終わらすつもりでしたが…途端にお笑になるので切りました(04.7/15)