週末はあなたの部屋で…

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by.石礫

≪ぷろろーぐ 週末はあなたと≫

二人は焼肉屋で焼肉を食べていた
「休み?」
「土日な。」
「週末だね」
「泊まるか?」
「…うん。」
「なら…最後までだな」
「………そっか。…そーゆー事だよね」
付き合い出してまもなくで、キスよりは、ちょっとだけ進んではいるが…まだ、そこまでは無い二人である。
考えこみながら肉を焼くヒカル

「先生って…秀策の棋譜持ってるんだっけ?」
「他にも道策、秀和、色々取り揃えてございまーす」以外に芸達者なのか?まるで観光紹介ようなトーンで言う緒方。
それに笑ってから、行く。とヒカルは返事をすると肉を口に放りこむ
「ゲンキンだな。」と、緒方のほうはあきれた表情を見せる。
「だって、親に「泊りがけで碁の勉強します」って言うつもりだし、少しはね」
「なんだー?オレとじゃ勉強になら無いってのか?」
「そんな事言ってないって!」


家の近くの道に車を止め、しばし、別れのキスを交わして
「研究会とかあるんなら、調整しとけよ」
「わかってる。じゃ、先生お休み。」
とヒカルは車から降り、赤い車に手を振る



≪お部屋探訪の土曜日≫

色々の調整をすましその日になった

家で昼を食べ、そして、昼過ぎてから、出て、近くに駅前で待ち合わせになっていた
母親に見送られ扉を空けると、よく聞いた車の音がして…家の前に赤い車が止まる

「あれ?先生!?」
「よ、進藤。迎えに来てやったぜ。」
…早く会いたかったのか、以外にフットワークが軽かったらしい。
ヒカルの母親に、挨拶し、数日、ヒカルと碁の勉強をする事(表向きの理由)を説明する先生

「じゃ、お預かりします」と緒方はお辞儀。まさに『偽?』と言う感じ。
ヒカルは『騙されてるぞ母!』と言うツッコミをいれたい所だが、ここは、それを抑えるのが得策なので黙ってた。
「宜しくお願いします。 ヒカル、ご迷惑をかけない様にしなさいね。」
ヒカルの母 進藤美津子も、お辞儀をし、ヒカルには釘を刺す
「…わーってるよっ」

二人は車に乗りこむ。
「まさか、わざわざ迎えに来るなんて思わなかった。それに挨拶も、なんてねー」
「こうやっておけば、後で、オレの名前をアリバイに利用したとか疑われたりしねぇーだろ」
「あ、そっか。そーだよねぇ。」



ふと、ヒカルは息苦しさに気が付く。キスだった。

「寝るなよ。ついたぞ」
いつのまに付いたのか、マンションの駐車場の中に車はある。
どうやら、車に乗って居る間に眠って…目覚めのキスされるまですっかり寝てたらしい


「おじゃましまーす」

部屋を覗くとブラインドを下ろしたままで、薄暗いったらありゃしない

「うわ、なんだよ、この暗さ!」
あまりの暗さに思わず、ヒカルは、ブラインドを上げる
「ったく、日の光ぐらい入れろよな。吸血鬼か?あんたは!!」

「フッ…よくわかったな」と緒方は冷たい微笑みを浮べる。

「……え?」

ヒカルにはその微笑みが怖いと思えた
そして、緒方はヒカルの首筋に噛む様に唇を近づけていった

「っ!」

緒方はヒカルの首筋に口付けた瞬間…思いっきり吸う
「……なっ…何?」
戸惑うヒカルの姿を目の端で捉え、緒方はしてやったりと言う顔をして
「うまかったぞ。」と言いながら唇を離す。

笑いをこらえている緒方と赤くなって涙ぐみつつ首筋を抑えてるヒカル。傍と気がつき鏡を見に
戻ってくると、怒りをぶつけてくる
「何すんだよ!思いっきり残ってるじゃん!先生のバカァ!!それに、いきなり首ってなんだよ!」
「唇のほうが良かったか?」
「そんな事言って…な………んーっ」
さっきの駐車場の時よりも、激しい口付け

立ってられなくなりそうなのを辛うじて堪える…やっと、激しい口付けから介抱されるとほうっと息を付いて安堵する
緒方は自分の腕の中で安堵しているヒカルを抱きしめようとするが、ヒカルのほうはその手からは逃げる

「すげー本の数だよね。」
「オイオイ、ここまで来て逃げるのかよ?」

ヒカルは柱をじっと見て、コンコンと叩き出した…謎の行動。
「柱…硬そうな音だね」
緒方は溜息を付く
「言っとくが…進藤。死体なんか埋め込んで無いぞ!」
「そー、そーだよね…」
「……おまえ、疑ってねーか…」
「ま、まさかぁ?」
引きつりながら乾いた笑いをしてしまうヒカルであった

「あ、熱帯魚飼ってるの!」熱帯魚の水槽に今更ながら気付いたらしい。

ヒカルは楽しそうに水槽を見ている。
後にいた緒方のほうに急に振りかえり…そして、妙な表情をしてから、照れ笑いをすると水槽に視線を戻す
「おまえって熱帯魚好きか?よく、棋院のヴァーチャル水槽を見てるし」
「……あ、……うん。見てるのは好きかな…」そう言うと、ヒカルは水槽を見ながら寂しそうな表情を浮べた。

ヒカルはもう一つの目的を思いだす
「あ、所で秀策の棋譜って、どれ?」
「これだ。」と指差した

ヒカルはその棋譜を棚から取り出し、それを開くと…見始めた。
「オイオイ…」
碁を打っている時と同様に集中して居るのか、緒方の声も聞こえてない様だ。

「まあ、いい…か」

集中して居るヒカルに溜息ついて、しばらく、ほったらかしにする事にした

「先生!先生ってさー塔矢先生の昔の棋譜とかもファイルしてるんだね」

ヒカルの声に緒方は珈琲を入れながら答える
「まーな。」
緒方が碁をはじめた頃に集めたその頃のプロ棋士の棋譜をスクラップしたファイルもあった。
「それは、PCに打ち込んでない古い…棋譜…」
何かを思い出したらしい。すぐに本棚の前に行くと、緒方はヒカルが開きかけてたファイルを取り上げた

「こ、これは、見るな!」
「………え、なんで、若い頃の緒方先生のファイル見ちゃダメなの?」

それは、緒方が棋士になりたての頃の、自分の記事等のスクラップであった。
昔の自分の若気の至りとかを自覚していると、若い頃の物は、人に見られると、とても恥ずかしい物でしかない

「なんでも、見たがるな」
「え、つまんなーい。結構、かわいいのにな。」
「男に可愛いなんて言うか?暇なら…別のことで楽しませてやろうか」
ヒカルは冷や汗が出た。彼の目を見た瞬間、このまま不埒な事してくる予感がしたらしい
「……せ、せめて…メ、メシ食ってから…で」


「でも、どうーするの?どっか食べに行く?」
「今、作る」

「先生って、料理出来たんだ。」
手際良く料理、…しかも、美味い…。どこだかのアイドルグループの様だ。
「簡単な物なら自分で作ったほうが楽なんだ。」


流石に一緒に入るのは勘弁して欲しいと言う事で、ヒカルは一人で風呂。
「ここまで来て…オレ…やっぱ、怖いのかな。…覚悟してたのに…なぁ」
溜息をついた。これからを思うとドキドキしているが、期待半分で、いっそ、逃げ出したい気もしていた…。


結局、寝る時間…。

ヒカルは、ふかふかだとベットの上でトランポリンのように跳ねてみる

「進藤…」不意に自分を呼ぶ声。
「オレ、やっぱソファーで寝る!」
つい、逃げ出したくなったのか、ベットから飛び起きるが
引き倒されて、再びベットの上に、緒方がヒカルを押し倒している状態だ。

「……お、緒方先生」

耳元に、低く甘い声で
「逃げるな…」と囁かれ、二人の視線が絡み合う。そして、ヒカルはこれ以上、逃げる事は出来ないと悟った。


「…………逃がさないで…」

二人は…今まで以上に深いキスを交わし、そして、はじめて求め合った


続く?

後書き:ヒカル君、逃げてますね。ファイルは、先生はやってそうと思ったら話が降って来たもので(笑)他のパターンでも使えそうです(笑)
すみません…この話には中編が存在する事になります。隠します…すごくわかりやすいけど…隠しリンク見つけてみてください!!
って事でー。「メインのカップリング編、隠しおまけ有り長編」と隠し方は同様ですね