閑話休題
小ネタ3本立て
<初めての3度目> ようやくロスアルっぽい
<アルバとクレア、馴染む> コミュ力高いクレア
<呼び方> ホントにどうでもいい小ネタ
<初めての3度目>
「ほら、いい加減大人しくしてください。暴れたって先延ばしになるだけですよ?」
羽交締めにされてなお、ジタバタと暴れるアルバに半ば呆れてロスが言う。
「う…そ、そうだけど」
「だいたいお願いしてきたのは勇者さんじゃないですか」
「その言い方だとボクが喜んでしてほしがったみたいに聞こえるっ!!」
「違うんですか?」
「違うに決まってるだろっ!?」
顔を真っ赤にして、喚く。
誰だって、心臓握られるのと口移しを並べられたら、命に別状のない選択肢を選ぶだろう。
それはあくまで消去法であって、決して積極的にそちらを選んだわけではないのだ!とアルバは声を大にして叫びたかった。
「はいはい、わかりましたから。とにかくとっとと済ませてメシ食いに行きましょう」
「てか、なんでお前はそんなにあっさりしてるんだよ…」
男にキ…じゃない、口移しするのイヤじゃないのか?と尋ねるアルバにロスが「何を今さら」的な顔をする。
「ただの「作業」でしょう。あと残念ながら、キスに夢見てるような歳でもないんですよ」
「………」
それって、初めてじゃないってことだよな。とアルバは思う。
ロスは自分より年上だし、何年も1人旅をしていたんだし。
キスの経験ぐらい、あっておかしくない…というか、当然だろう。
なんとなく、面白くないけど。
「…どおせ。ボクは初めてだったよ。夢見てて悪かったな」
「そおですね~。まあ、勇者さんの夢は打ち砕かれる為にありますし!」
「んなわけあるかっ!!」
正に打ち砕いた本人に言われたくない!!
相変わらず羽交締めにされたまま、突っ込むとまた楽しげな声が降ってくる。
「やっぱり初めてだったんですね~。いやぁご愁傷様です」
「お前が言うなぁっ!!」
ホントにもうヤダ!このドS!
再びジタバタと暴れてやると、一瞬ロスの腕が緩み、次の瞬間には何故か向かい合せになっていた。
あれ?なんで?
と思わず暴れるのを止めると、目の前にはロスの顔。
アルバの背が伸びて、だいぶ追いついた所為で本当に真直ぐに目が合う。
綺麗な、赤い瞳に自分が映っていた。
ああ、一年前は見上げなきゃ見られなかったのにな。とぼんやりと思う。
動きを止めたアルバに、思いのほか優しげなロスの声が届いた。
「ほら、「作業」しますよ」
「………ぅん…」
近づいてくる赤い瞳に、思わずギュッと目を閉じた。
クスリ、とロスが笑った気配がしたが、正直アルバにはそれにツッコミをいれる余裕はない。
唇に、柔らかな感触。
目と一緒にしっかりと閉じていたアルバのそれを、ロスは指で少しなぞってから、囁くように言う。
「…口は、少し開けてください」
「え、な、なんで?」
「体内に入らないと、吸い取れません」
言うが早いか、返事の為に少しだけ開いたアルバの唇をロスの舌が割る。
「…っ!」
強引に先に進まれて、アルバの言葉は吸い込まれる。
口の中を、熱くて柔らかい何かが浸食してくる。
何か、なんて。ロスの舌以外あり得ないのに。
一度目は、完全に事故だったので「ぶつかった」記憶しかない。
二度目も、あまりにも突拍子の無いタイミングだったので、正直よく覚えて無い。(途中から驚き過ぎて魂抜けてたし)
なので、この「三度目」が、アルバにとっては実感の伴った「初めて」だった。
正直、めちゃくちゃ恥ずかしい。
きっと自分の顔は真っ赤になっていて、後でロスにからかわれてしまうのだろう。
でも、不思議と嫌悪感は湧いてこなかった。
ファーストキスが、男相手で事故だなんて、最悪。と思っていたけれど。
(もしかしたら)
男だけど、ロスだったから。
最悪よりは少しだけ。
(ほんとに少しだけだけど)
マシだったのかもしれない。と、思った。
※ここから雰囲気まったく変わります。ごめんなさい…※
<アルバとクレア、馴染む>
オレがルキちゃんと昼食を取っていると、食堂のドアが開き、シオンとアルバくんが入ってきた。
「遅~い!アルバさん、ロスさん!」
「も~!ルキもクレアさんも、置いてっちゃうなんてひどいよ!」
「え~?オジャマかと思ってさ~」
「そこは是非ジャマして欲しかった!!」
あ、ってことは早速「作業」しちゃったのか。流石シーたん。
そう思いながら、もぐもぐとパンを頬張る。
「まぁまぁ。2人とも早く食べなよ。このパン美味しいよ!」
ひょいひょいと、お皿に積んであるパンを、2人の席の取り皿に乗せる。
「ありがとうございます。クレアさん」
「どーいたしまして!」
うんうん。アルバくんはお礼のちゃんと言えるいい子だね~。
でも、ちょっと気になるなぁ。
「アルバくん?」
「はい?」
「別に敬語じゃ無くていいよ?」
「え?」
「名前も呼び捨てでいいし」
オレの言葉にきょとん、とした顔をするアルバくん。
「オレたち、もう友達でしょ?」
言葉を追加すると、アルバくんは一拍遅れてニコぉっと笑った。あ、カワイイ。
「うん!ありがとう!クレア」
よし。おっけー。
普段シーたんとばっか話してるから、アルバくんみたいな素直な子と話すと癒やされるなぁ。
「ボクのことも呼び捨てでいいからね」
「ん?うん、そだね。…う~ん」
アルバくんがそう言ってくるのに、ちょっとだけ考える。
呼び捨てもいいけど。
アルバ、アル?あ~、る~、うん、これがいい!
「じゃ、アーくんって呼ぶよ!」
「ほえっ!?」
あれ?アルバくん、じゃなかったアーくんが目を白黒させてる。
オレなんか変なこと言った?とシオンの方を見るが、あきれた顔でため息をつかれただけだった。
「…いや?」
「え?あ、別にイヤじゃないよ?ちょっと予想外だっただけで…」
「そっか!良かった!シオンがあだ名で呼ばせてくれなくなったからさ~」
「直ってねぇだろうが」
「努力はしてるんだよ!」
うっかり一日一回くらい…いや、2~3回くらい呼んじゃうけどさ~。(そして殴られる)
「ね~ね~クレアさん!私は私はっ?」
「ん?」
この数時間ですっかり意気投合したルキちゃんが、オレの袖をちょいちょいと引いて聞いてくる。
あ、ルキちゃんもあだ名で呼ばれたいのか。よ~し!
「ん~、そうだなぁ。ルーちゃん…いや、ルーたん!どう?」
「うん!」
にぱ~っとルーたんが笑う。
うんうん。子供は素直が一番だね!
この子も可愛いなぁ!魔王だけど!
そうこうしているうちに、メイドさんが(初めて見た!)アーくんとシーたんの料理を運んできてくれて、ようやくみんなでの食事が始まった。
今日も、楽しい1日になりそうだ。
<呼び方>
「おい、ちょっといいか」
昼食が終わって、4人でお茶を飲んでいるとフォイフォイがやってきた。
ちなみに、他の3人は仕事だのなんだのがあり、アルバが昏倒している間に城へ帰ってしまったそうだ。
「どうしたの~?」
「ん?いや、たいしたことでは無いんだが」
クレアの問いかけに、フォイフォイはそう答え、ロスを見る。
「お前をなんて呼べばいいのかって困ってるんだ。メイドどもが」
「は?」
つまり、ロスなのかシオンなのか、はっきりしてくれとのことらしい。
なにせ、アルバや姫あたりは「ロス」で呼ぶが、クレアは「シオン」と呼ぶし、トイフェルに至っては「クレアシオン」だ(これはさすがに事情を知った者の前でしか呼ばないが)。
「別にどっちでもいいぞ」
「それだとあいつらには判断基準がないから困るんだと。オレもそう言ったんだけどな」
そう言われても、とロスは頭をかく。本当にどっちでもいいのだが(どうでもいいとも言う)。
「ん~じゃあ、こうしよう!」
「ん?」
クレアが声を上げる。何か思いついたらしい。
「アーくん!ほい、じゃんけん!」
「へ?」
「じゃ~んけん!」
アルバに向かって拳を振る。
「あ、う、うん」
「ぽん!」
戸惑いながらも、じゃんけんをすればいいらしい、と理解したアルバがクレアのかけ声に合わせてチョキを出した。
対するクレアはパーだ。
「アーくんの勝ち!だから呼び方は「ロス」に決定しました~!」
ぱちぱちぱち。
クレアの拍手が響く。
「………だと」
「理解った。言っとく」
ロスがそう言うと、フォイフォイは若干呆れながらもそう言って出て行った。
「クレア、今のって…」
「うん。オレが勝ったら「シオン」、アーくんが勝ったら「ロス」って呼んでもらえばいいかなって」
「あ、そう…」
人の呼び方をじゃんけんで決めるという発想に、さすがのアルバもついて行けなかったらしい。
(なんでこんなのがオレの親友なんだろうな…。いや、だからなのか?)
それこそ、どうでもいいことだな。と結論づけ、ロスは食後のお茶をすするのだった。
--END--
-------pixiv投稿時コメント--------
そんなわけで。思いついたはいいが、入れどころに困ったネタを晒してみました。
特に2ページ目の話(アルバとクレア、馴染む。編)は、実は初回直後からどっかに入れたかったんだけど、入れられなくて困ってました(笑)
本編のストーリーには全く関係ないですからね…。
ここでぶっ込めて良かったです!(>_<)b
3時間クオリティなので、文章が破壊してるかもしれませんがご容赦を!
完結するまでがんばります!
-------サイトUP時コメント-------
3話目投稿時の閲覧数もろもろの伸びが妙に良かったので調子に乗って当日書いたシロモノ(笑)。
3時間クオリティとありますが、実はバイト中にちょっと作業進めてた(内緒だよ!)のでプラス1時間くらいはかけてる。
今回サイトにUPするのに読み返したら、以外と誤字も無く、大丈夫そうなのでそのままUPしますですよ。
pixiv投稿:2013/03/13 | サイトUP:2013/03/21
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