とりぞうのひとりごと
餌付けについて


 バードウォッチングのひとつに、庭先に餌台を取り付け野鳥を呼び寄せ、その姿を楽しむ文化があり、アメリカ、ヨーロッパを中心に世界的に知られております。また、撮影方法のひとつとしても世界的に写真やビデオ映像に広く応用され、高度な餌付け技術により、すぐれた映像がテレビ等でも発表されております。日本でも餌付けの技術が向上し多くのバーダーが楽しんでおり、私も撮影不可能な映像に挑戦する際はこの手法を用いることがあります。高度な餌付け技術とは、その種の餌の種類、生息場所、個体の行動やくせ、周りの環境、周りに生息する野鳥や小動物、季節、天候等などその種の生態をより深く把握し、より深く予測できるかどうかであります。
 餌付けは魚釣りに近いようなもので、五目釣りに近い庭先の餌付けなどの目的を選ばない餌付けから、目的種によっては数ヶ月、あるいは数年にわたってようやく目的の映像にたどり着ける高度な餌付け技術を必要とするものまで様々です。
 
 餌付けについて色々な考え方があり、餌付けを嫌う人がいても考え方はそれぞれ自由です。しかし、他人の餌付けを批判する人がおりますが、物事を批判する場合は、なぜそれが悪いのか説明する必要があります。その説明が正しく認められれば、鳥獣保護法により規制されます。現在の法廷での餌付けについての判定では違法性はなし、餌付けを批判中傷した側に名誉毀損の違法性があり、慰謝料支払い命令の判決が下った判例があります。これが餌付けについての公式な判定です。プロの写真家を批判中傷しようとした場合はさらに業務妨害が加わり2つの違法行為になります。
 しかし、この業界では、餌付けに対しての批判中傷等の違法行為は日常茶飯事です。この業界に携わる人々はこの批判中傷等を黙認し、一部は容認してしまった結果、餌付けは悪いことのようにバーダーの一部にマインドコントロールされてしまい、その結果慰謝料を払うはめになってしまった犠牲者までをだしています。
 
 野鳥写真で、ある程度以上のレベルに達した人で、餌付けによる影響を受けた野鳥をカメラに収めたことのない人はほとんどおりません。餌付けを強く批判される人でも他人の餌付けした種はシャッターを切るし、こっそりと餌付けをしている人も目にしたことがあります。これは他人を否定するどころか自分自身をも否定していることになり、訳が分からない人間が結構おります。
 
 他人の餌付けをした種は誰でも100%撮影できます。餌付けの難しさ、技術はトライした人でなければ、理解できないでしょう。したがって、他人の餌付けでしか撮影したことのない人が、餌付けで撮影した写真の価値を低く評価するのも理解はできます。
 私たちは、他人から盗品をあげると言われても大半の人が、断るでしょう。なぜなら、盗む行為は悪いことであると理解しているからです。ところが、餌付けを悪いと批判しておきながら他人の餌付けしたものは撮影する人は多くいます。この行動を分析しますと二通り考えられます。ひとつは批判はするが本音は悪いと思っていない人、もうひとつは他人に盗みをさせ中身だけいただく非常に悪徳な人のいずれかです。後者はほんの一部の人で大半は前者だと考えられます。それではなぜこういう矛盾が出てくるのか、それは餌付けには技術の差が大きいため、出来る人、出来ない人が出てくるからだと思います。そして、そこに「ねたみ」が出てくるからです。誰でも等しく餌付けできるとしたら批判する人はいなくなると思われます。

 また、餌付けした写真は自然ではないと批判される方がおります。確かに人間が影響を及ぼしているのは確かです。それでは自然な写真とはどのような写真でしょうか。当然人間の影響力をゼロにした写真になります。世の中で現在まで発表されている写真の90%以上は人間の影響力を受けた写真です。人間が野鳥に近づけば近づくほど影響力は大になり、また、その場所にブラインドを張って人間の姿を見えなくしても行動が変わります。人間の影響力をゼロにするには、ラジコンを使用するとかブラインド等を長期にわたり張りっぱなしにして撮影にトライする方法など限られております。そんな技術をこなす人は、ほんの一部しかおりません。

 動物園の動物やペットを写真集にしたりする人もおります。100%自然にこだわるには、本人が映像に何を求めているかにより変わると思います。これも他人に押し付けるものではないと考えます。
 シャープな写真を撮るために野鳥を追い回し距離をつめる方法、これこそが野鳥にとっては迷惑な行動です。撮影手法には色々あると思いますが、私は野鳥の嫌がる手法は出来る限り避け、不可能とされる種やその行動の映像を撮るため技術を磨きトライし続けるつもりです。様々な映像への考え方があることにより、様々な映像が出来上がり楽しませてくれることにもつながるものと考えております。