棋力開発…本筋の打ち方   実技編

 05 強い石に追い込め
   A 厚みに近寄るな
「厚みに近寄るな」というのは厚みを築いている側、築かれている側いずれにも当てはまります。
「厚みを地にするな」というのは、厚みを築いている側の心得です。厚みは地にしようと思わなくても、ある程度の地は付きます。厚みを囲うと勿論地は増えますが、地にしようという手を打たなくて付いた地との差、つまり、囲おうとした手による地の増加は小さいのです。
従って、厚みを生かす打ち方は「相手を厚みに追い込んで攻めることによる利を追求すること」です。
まず、ここでは厚みを持っている側の着手基準を説明します。

<右辺>
黒1、自己の厚みに近づき過ぎているので悪手です。白に右上、右下両方に地を与え、自ら得たものは10目程度の地では採算が合いません。

<左辺>
黒15とツメの限度5間を超えた最大のツメ、星の石に対してのカカリが好手です。白16と打ち込んでくれれば、黒の厚みが大いに働きます。

厚みを作らせた側の心得です。

<右辺>
白1は厚みに近寄った悪手。黒2で右上の黒の厚みが大いに働きます。

<左辺>
白3までが厚みに近づく限度です。
但し、白5は小さい。従って、黒4で、C11と打つのも小さいのです。
 05 強い石に追い込め
   B 生きている石は強い
生きている石、根拠のある石も強い石です。

<右辺>
右上の黒は生きています。従って白1は強い石に近づく悪手です。黒2と打たれ白1が攻められる展開になります。

<左辺>
左下の黒は根拠を持っています。従っても白3も強い石に近づく悪手です。黒が手抜きをしても、白は白5、7と打つ程度です。黒8と打たれて、後手で白5、7を守るのでは大勢に遅れます。

参考になる格言
強い石、厚い石に近づくな
生きている石の近くは小さい
相手の石を自己の厚みに誘い込め
厚みを地にするな
小目の石から高目の石にツケヒク定石で、辺への影響が変わってくる2種類の打ち方があります。
右上と左上の形はR14とD15の手だけが異なります。

<右辺>
右上の黒は辺を打ち切っている状態なので、白1と下辺を大事にするのが自然な発想です。黒2と打っても、白3で右辺が大きくなるのを防ぎながら、上辺を広げる良い手があります。

<左辺>
この形では白5が良い手となります。黒6と白5を攻めようとしても、白7と黒の弱点を衝き根拠を持って、黒6を攻めます。


 06 好手兼用は二手打ち効果
   A 部分での形の急所
攻守兼用の手は一石二鳥の手にもなり、1手で2手分の効果を出す手です。ここでは部分的な形を紹介します。

<右上>
黒1が攻守兼用の手。名付けて「両ゲイマ」。白からの白1もケイマなのでのネーミングなのでしょう。
お互いが模様を張っている場合に出来、「双方の模様の接点」であり、要点になります。
相手より一歩前に出ているので、黒1による勢力的な優位は逆転することがありません。
白が手抜きをすると、黒3がまた良い手になります。

<左上>
黒5と押すところではありません。黒が先着したのに、白の方も盛り上がってきます。

<右下>
黒11が「フクレ」です。これも、石の強弱、勢力の消長に関わる部分的な要点です。黒11により、白の3子が窮屈になり、黒Q9等と攻められる形も見えてきます。
又、下辺からの黒のハサミも白にとって脅威になることも考えられます。

<左下>
白12と、この地点を白に打たれては、黒13等、白を固める手を強いられます。
 06 好手兼用は二手打ち効果
   B 気付かぬところに攻守兼用
<上辺>
上辺の様にお互いの小目が向かい合っている状態を喧嘩小目といいます。戦いになりやすい形からのネーミングなのでしょう。
黒1に対して、白2とカカルと黒3の手が攻守兼用の好手です。

<下辺>
黒が黒7、9を利かしてから、黒11と打つのも好守兼用の手ではありますが、白8、10で白に地を先に与えていることがマイナスと考えられます。

<上辺>
例えば、上辺の戦いで黒17等上辺を強化する手が打てれば、黒19から攻めて、左辺で得をすることが出来ます。
<上辺>
喧嘩小目の時、白2で高ガカリもありますが、黒3とハサムのが好守兼用になります。

<下辺>
白6に対して、黒7と打つと、白12の好守兼用手を打たれます。
<右上>
白1に対して、黒2、4が好守兼用。
1.隅の地を多少守りながら
  つまり、黒4の段階でも、三々はまだ残っています。
2.白のサバキを防止
  右下の変化、白9でQ3へのツケの変化を無くしています。
黒6も攻守兼用です。

注.黒2のコスミツケは白3という白を強化する手を敢えて打っています。これは黒にとってマイナスの手で、黒2と白3だけの価値を比較すると明らかに、黒が不利の交換です。白のサバキを無くしていることに価値を見出し、隅を守る効果にはあまり期待しない方が良いのです。
例えば、白35に対して、黒が譲歩した黒36でも、尚白37で隅の生きが残っています。

<右下>
ほぼ、白生き形。

<左下>
白の工夫ですが、黒16、黒20が攻守兼用の手です。

<左上>
これらの変化を嫌う場合は、三々への打ち込みがありますが、黒の模様が良いので、適宜の打ち込み以外は黒有利です。



 07 「強」か「重」かコスミツケ
   A 攻守が変るコスミツケ
コスミツケという手段は強制力を持っています。
しかし、コスミツケが良い手となる時と、悪い手となる時があります。

<右上>
白1に対しては、黒2のコスミツケが良い手です。
二立三析の本来白が打つべきところに辺の星の石がいるからです。

<左下>
この場合は、白の形は二立三析の理想形になっています。
この状況は白5の石が強くなったことが、黒のマイナスになり、コスミツケが悪手になる例です。

<右上>
白3までは定石です。この形では黒4、6の手段があり、黒が右辺を広げる手を残しています。

<左下>
白は白D2のケイマの時の黒H3を嫌って、単に13と二間にヒラク場合があります。この場合にニ立二間だからと、黒14を利かすのは、上辺で示した手を放棄することになります。
 07 「強」か「重」かコスミツケ
   B 攻めはコスミツケから
コスミツケを地の守りとして打つのは、多くの場合悪手。攻めの前提として打つ場合はたいてい好手になるでしょう。

以上は「本筋の打ち方」原文のままです。何故ここを特に強調するかというと、コスミツケ(特に置碁で多い)は隅を守る手段だと勘違いしている初中級者が大変多いからです。形から見て、「隅を守る手段」、しかも「先手で打てて便利な手」と判断するのだろうと思います。何回失敗しても、その考えは変わらないケースが多い様です。あたかも、コスミツケの手は悪くなく、以降の自分着手が誤っているのだと考えている様に見えます。

<上辺>
黒1に対して、白が手抜きをしたら黒3とコスミツケるのが良い手です。星の場合と異なり、一路低いので、隅を守る力はより強いのですが、あくまでも、隅を守るのではなく、白を攻めているという感覚が大切です。

<右下>
黒9に対して、白10と打って来た場合は黒11とクズんで打つことも出来ます。地が大きく、黒有利です。

<左下>
この形(D6とケイマ)では、白が強化された段階では、ケイマのツケコシが厳しいので、白18が打たれる前に、黒D8等と守っておくのが良い手です。
コスミツケは攻めの発想からなので、相手が自陣を強化して、攻めが利かない形になった時は頭の切り替えが必要です。

<右上>
白1の打ち込みの時点では右辺の白は攻められない形となっています。従って、白1の段階の黒の手は不適当です。

<左上>
白15に対しては、黒16と譲歩して、地の減るのを防ぎます。
<右上>
白1と打って来た場合は右辺の白4子はまだ安定していません。
従って、黒2と分断する一手です。白が上辺で生きたときには、白4子は逃げられないことになっています。

<左上>
この段階で、白の立場としては、右上の状況では悪いので、白9と強化しておき、そこで黒が手を抜いた時に、白11や、右上の三々に打ち込むという作戦を取ります。



 08 モタレの攻め、カラミの攻め
   A 一本調子では追いきれない
攻めには
1.追い上げの攻め
2.封じ込めの攻め
があります。いずれも、自己の石数が多いところでの戦いです。

<右辺>
白の一子を攻めますが、交互に打つわけだから、黒は3、5と両方から攻めるのでは、白の逃げ足の方が速いわけです。

<左辺>
単純に攻めても効果がないので、攻めのテクニックを使います。 まず、「芯シンを止める」。
黒9は白が打ちたい所、黒9と先着します。白は右辺の様に逃げられなくて、ゆがんだ形になり、逃げ足も遅くなります。
シンを止める手は多くの場合黒9の様に「ホウシ」という形になります。
<右上>
白1はこの形で打ち込みのポイントです。黒2、4と追っかけると白5まで、逃げ延びます。前図と同じ誤りです。

<右下>
この形では、黒6とコスミ、黒8とシンを止めます。
切断を恐れて、白9なら、黒10とツケるのが「モタレ」ト呼ばれる攻めのテクニックです。こうなっては、白は両方を打つことが出来なくて、どちらかを譲歩するしかないでしょう。

<左辺>
黒18に対しては白19とハネダして、白21とトビます。
白は生きますが、色々利きがあって見た目以上に黒が厚い形です。
 08 モタレの攻め、カラミの攻め
   B カラミの攻め
攻めのテクニックにカラミがあります。相手の石を分断して、いずれかの石を厳しく攻める手法です。

<右辺>
黒1で分断し、左右の石をカラミにします。

<左辺>
黒3という切断方法もあります。

<右辺>
黒1、3も切断の方法です。

<左辺>
黒5は白6と2線に打たれ、ワタられます。後に、黒自体が攻められます。
黒1は中央の白6子と右辺の白1子を分断して攻める意図の手です。 黒5で、中央の白にまだ眼形がないので、右辺が大きな黒地になりそうです。
モタレの形。左辺の黒が脱出しても、上辺の黒をいじめれば形勢有利です。
モタレの攻めは、ツケがよく用いられます。ツケに手を抜けば損だし、受けていれば本体の方が危なくなります。
相手の逃げる方向に相手の石があれば、ツケのモタレ戦術は有効な攻めです。


 09 ツメはウチコミ(打ち込み)の準備
   A 一間の接近はウチコミ狙い
布石の基本順序はヒラキの次はツメです。

ツメは
1.ヒラキの大まかな盤面分割を細かく仕上げる
2.相手のヒラキによる勢力圏ヘのウチコミの応援する
3.相手のヒラキによる勢力圏のより拡大化の制限する
という機能があります。

<右辺>
白1は白3の打ち込みを容易にしています。上記機能の2の例です。

<左辺>
白13は黒の勢力圏の拡大の妨害(上記機能3)を目的としています。
左上の大ゲイマジマリは黒からC14と打たれると左上隅がにわかに不安定(C17の打ち込みが生じる)になるので、1路控えて、黒の手抜きに対しては左下のコゲイマジマリを働きかけ、黒C10を攻めようとするものです。
<右辺>
白1のツメは白3の打ち込みを狙っています。
白が地を大いに得をした様に見えるかもしれませんが、黒は中央への厚みが出来たので、互角の分かれです。

<左辺>
黒12とコスんで、ワタリを防止することも可能です。
白21により、黒C4の石が取られますが、黒22と白1子をクサらせ、互角の分れです。
 09 ツメはウチコミ(打ち込み)の準備
   B ウチコミの型を覚えよう
ウチコミには常形化されたものがあり、形を覚えておくと便利です。

1.定石の後の狙いのツメとウチコミ
  定石で出来た形の弱点なので、判り易い。
  左の4種類を示します。

2.布石でのパターン化された打ち込み
  これも、似た様な形を覚えることが出来ます。
  次の図で示します。

<上辺>
高目にカカった形から出来る定石です。黒1から黒3が狙いです。

<右辺>
ツケノビ定石から白が大ゲイマにヒライた定石形。黒5から、黒7が狙いです。

<左辺>
小目への高ガカリで生ずる定石。黒9から黒11が狙い。
この形は白のもう一つ急所C11がありますが、黒B14を見た黒11の方が厳しく、この形が定石後の常形とされています。

<下辺>
星に対してケイマにカカリ、K4にヒラいた形では、黒13とツメた後の黒15が狙いです。
布石でのパターン化された打ち込みの例です。

<上辺>
白1とツメた場合は白3、またはM17が狙いです。
白3は白Q17の狙いがあり、白M17はK18のツケが狙いです。

<左辺>
白5とトンだ後に打ち込む場合は、黒6のみが急所です。黒C13は白C15と守られると次の狙いが無いので、急所とはなり得ません。

<右辺>
黒からR12のツメは次の狙いとして、黒R8が(白が厚い為)狙えません。この為、黒8とボウシをして、白9と受けたら、黒10と打つなどの工夫をします。