棋力開発…本筋の打ち方   実技編

 01 ヒラキの大小に原則がある
   A 自分のモヨウ(模様)なら星下
ヒラキは広すぎると打ち込みを狙われたり、狭すぎると効率が悪くなり不利になります。
ここでは、ヒラキの一般的原則を説明します。

<右辺>
ヒラキは5間が限度です。黒1が中間点で、5間なので良いヒラキになります。相手が白2の様なツメなら、トビます。
白が手抜きをすると、黒P8にマガルのが良い手です。

<左辺>
黒5は6間ビラキです。6間だと、白6、8で2間にヒラク余地があり、先行した利を失っています。

<右辺>
黒1は4間ですが、ここでは限度です。次の手として、R8に2間ビラキを可能にしておきます。

<左辺>
星と星が向かいあっている場合は、黒3と打って、黒5とヒラクのが良い手順です。勿論、黒3と打たずに黒5を打つのも立派な手です。
<右辺>
白1もヒラキの限度の5間ビラキ。黒2のツメに対しては白3と守ります。

<左辺>
左下からの白のヒラキを制限することに主眼を置けば、白5の6間もあります。
 01 ヒラキの大小に原則がある
   B 立体的なヒラキ
ヒラキはその辺だけでなく、他の辺とも関連します。同じ石数で地を囲う場合、正方形に近いほど、囲う効率が良いということは学校で学んだと思います。従って、正方形に近い、立体的な地を目指す訳です。

<右上>
黒1が右上のヒラキの背中と共に立体的な形が出来やすいので、一番大きい着点です。上辺は左上の白のシマリと立体的な形になるし、下辺は左下の黒とのシマリと立体的になるので次に大きい地点です。
左辺は4つの辺の中では一番小さいのです。
黒1、3と右上のシマリからなる黒の形は「鶴翼(かくよく)の 陣」と呼ばれ、理想形です。シマリが鶴、黒1、3が鶴の翼なんでしょうね。理想形を阻止するのも良い手なので、白2は上辺に打つのが好手です。

星はシマリより大場を優先させる着点なので、黒1の三連星は好点です。第4線に打つのは、模様を立体的に発展させようという意図です。この形は黒の地だと考えるのではなくて、白の打ち込みを待っている形だという認識を持ってください。
また、白2は、K3と打つと、黒N4で、黒の模様が立体的になるのを嫌っての着点です。
黒1の「高い中国流」に対しても同様に、黒模様が立体的になる黒の着点を阻止して、白2と打ちます。

最近の布石の傾向として、地取りより、戦いを重視している爲、布石の順序の原則が崩れかけていますが、基本として認識しておきます。


 02 一立二析、二立三析
   A 二間ビラキで安定する
第3線の石は2間ビラキで一応の安定があります。ただし、あくまで一応の安定で、近くに相手の石が来ると、根拠を奪われることもあります。

<右辺>
白1の様な手、相手の勢力圏で左右に二間にヒラク余地がある手のことをにワリウチ(割り打ち)と呼びます。黒2と迫って来ても、白3で一応安定します。
但し、白1、3の二間ビラキに黒2、4がある場合は、黒6、8、10で根拠を奪われます。ただし、白5子は厚い形で、直ぐに攻められる訳ではありません。
黒も、
1.黒6等と下から打つ
2.黒Q11等と4線から利かす
3.黒R11等とツケて攻める
等色々の手があるところなので、効果的な着手がはっきりしない時期は保留するのが良い手です。

<上辺>
白13が二立三析(にりつさんせき)のヒラキです。
「立」とは第3線の石から中央に石が2つ並んでいることを示し、「析」とは盤面を仕切る。つまりヒラキを意味します。
  右辺の白1、3は「一立二析」ということになります。
原則は「立」の石数より1つ多く「析」が出来るということです。一立二析、二立三析、三立四析、四立五析ということです。
黒14と迫ってこられた後に、黒16と打たれても、白17で、打ち込みは成立しますが、白の損害は軽微です。

<下辺>
白19は二立四析なので、広すぎます。黒20と打ち込まれると、白19が切断され、大きな損害を受けます。
 02 一立二析、二立三析
   B 状況の変化
着手が進むと、状況は変化します。少し前までは安全だったはずのヒラキも相手の石が加われば、進入する手が生じます。その進入の危険度に応じて、守るか、手抜きかを判断します。

<上辺>
白1が三立四析の手です。この段階では、黒M17と打たれても白L16で黒を取ることができますので、打ち込みはありません。
黒2と打たれた段階ではどうでしょうか?黒2があると、黒M17の打ち込みが生じます。
この場合の対策は
1.白P13で間接的に打ち込みに備える
  この場合Q11等右辺で得を図る手が生じる
2.白3と直接打ち込みに備える
  黒4の打ち込みには白5と好形に打てる。
  黒10のツケにも対応可能。
3.手抜きする
  黒の打ち込みには部分的な損を覚悟で、他の好点を打つ。

<下辺>
黒がD6にあるこの形では、白7が定石となっています。三立三析と基本に反する理由は、三立四析だと、黒8と打たれた場合、白は下辺を守る必要が生ずる為、黒8が先手になり、作戦が立てにくくなるからです。
白7では黒8に手抜きが可能で、左辺をワリウチするとかの対策が打てます。
<右辺>
黒1が五間ビラキ。最大のヒラキです。
白2に対しては取ることは出来なくても、厚みを作って他の地点の戦いを有利にする等十分な代償を得ることが出来ます。

<左辺>
黒15の六間ビラキは広すぎます。白16と打たれ、黒17と攻めても、余裕を持って生きられるので、右辺の様に十分の代償が期待しにくいからです。
「三間にウチコミあり」という格言があります。

<右辺>
黒1のツメに対して、白2と打てば、一立三析なので、黒3が生じます。
但し、この場合は白4が利いているので、単純な一立三析ではなかった為白6となり、黒3の石は取られます。
黒3は先手で、黒5、7を打つための捨石ということになります。

<左辺>
白10に対する黒11の受けに対して、白12と打つと、黒13に対しては白14が必須となり、黒15と先着出来て、白を攻めることになります。白が黒13を嫌う場合は白12でD8と打つことになります。


 03 第3線と第4線のバランス
   A 第3線は動じない
第三線の石は
1.盤端から進入を防ぐという長所
  地をしっかり守っています
2.発展性が無いという短所
  地を広げる時に次の好点が少ない
という性質を持っています。

<右辺>
黒R13の石が3線なので、黒1と打って、白2とツメられた場合に良い手が見当たりません。逆に、白2に手抜きしても恐くありません。

<左辺>
黒5に対して、白4と打たれた場合、黒5と飛んで、白C8を防ぎながら、黒E12、黒C14等を狙うことが出来ます。逆に白4に手抜きすると、白C8の打ち込みがあります。
<右上>
黒1も好点です。白R12の打ち込みを防ぎながら、黒3の攻めを見ています。白が尚も、手抜きをしたばあいの急所は黒5です。

<右下>
黒7に対して、白が手抜きをしてくれると、黒C14にカカッて理想形ですが、白8と裾空きを狙われます。
それでも、中央を目指して良い碁形が作れれば、4線の黒7も良い手になります。
 03 第3線と第4線のバランス
   B 第4線は全局を視野に
一応完成の第3線に比較して、第4線は更なる発展を目指しているので流動的です。

<右上>
黒は黒1と三線に受け、白は白4と3線にヒラキました。どちらも完成形なので、この周辺には当分石は打ちません。

<左下>
黒7と4線に受け、白8と4線にヒラキ、白C8を防いで黒9と打ちました。どちらも発展形です。
尚、タイミングがありますが、黒H3の打ち込みに備えて白10が良い手であり、黒の模様を立体的にし、白模様の発展を阻止する黒11も良い手です。
上辺の形  辺の石を、K16、1手で済ましている
下辺の形  K3、K5の2手費やしている

従って、白1のウチコミがあります。黒としては、黒2と、まず右上を守り、F17の石は三々へのフリカワリもあるという考え方を取ることも出来ます。

<上辺>
右上の形は、黒20までが、白のコゲイマガカリに対して、一間バサミから出来る定石形です。
黒から打つ場合に、黒22と広げても、P15の断点を睨みながら、白23と打てば、この石は取れません。但し、生かしても、黒36で、模様を広げて黒打てる形です。

<下辺>
黒38と4線にヒラクと、当然白39とスソアキを狙って来ますが、黒40で、模様を拡大していく作戦が良さそうです。


 04 根拠は見た目より大きい
   A 根拠は反攻の手がかりとなる
根拠がある石は
1.攻められることがありません。
2.攻めることが出来ます。攻められないということは、守る手を省略出来るということなので、守る手の代わりに、攻める手を打つことが出来るからです。

<右上>
黒1は一間高ガカリから、白に三々に打たれる定石に置ける常形です。この手は小さい様に見えますが、重要な手です。
注.黒1により白S18に対してはT18の反発があり、右下からの攻めにも強い形です。

<右下>
もし、この状態で、白が手抜きをすると、黒3等とハサマれて攻められます。

<左下>
白6が厳しい様ですが、黒7、9、11で大丈夫です。この形は白6と打たれた場合の定形になっています。
但し、黒11の代わりに、黒E7と打ったり、黒12と出た後に黒E7と切ったりすると白の逆襲がありますので、注意が必要です。

<左上>
右上の黒1を省略して、黒15と打つと、白16に対して黒17が必要になりますので、白18(左下の形の関係で一路控えていますが、左下の黒13が無ければ白C11と打つところです)の後、黒が手抜きした場合に、白20と打たれると黒の根拠が怪しくなります。

<右上>
右上の白の形は黒1と白2(黒から打つ場合はR13)が見合いになっています。従って黒1と打たれたら、白2が必須です。

<右下>
見合いですから、黒3と打たれたら、白4が必須です。

<左下>
黒5、7の両方を打たれた場合、白8と逃げることになります。
この場合は、例えば、黒9で下辺に模様を作ったりする手により、黒の有利な形を作ることが出来ます。

<左上>
この形が出来る手順を示します。
尚、黒17に対して、白18と一子を攻める手は黒19が先手となり、黒21等と攻めることが出来ます。
注.黒15で黒16とアテを打つ定石もありますが、ここでは省略します。
 04 根拠は見た目より大きい
   B 根拠作りとモヨウ(模様)作りは別物
根拠を作っておけば、後を強く打てます。手緩いように見えても、根拠を作る時は、きちんと作っておきます。

<右上>
白5はきちんと根拠を作りました。これは定石です。

<左下>
黒10に白が手抜きをした場合は黒12と攻められます。黒12、14が左辺の模様を作り、白はまだ根拠がありません。

<左上>
白17は模様を考えた手です。(右上の形は無いものと考えて見てください。)
この形で、白19と打つのは、白17の手と矛盾している為、黒22と打たれた場合に白に適切な打ち方がありません。
<右辺>
白1に対しては、黒2(黒Q8が無ければR10)と根拠を持ちます。

<右下>
白が根拠を持たせない為に白3と打てば、黒は白が打たなかった右下を黒4と打ちます。この手は白の根拠を奪う手で、白5と逃げ出す必要があります。

<左上>
白7に対して右上の様な定石を打っても、左下に白の構えが待っており、定石の選択が良くない場合は、別の定石の選択をします。
この形は、右上に比較して、
1.白の眼形が不十分
2.黒の確定地が多い
3.左下の白と離れている
ということなので、黒の適切な選択です。