棋力開発…本筋の打ち方   基本編

 01 線から面へ
   A 線の目的を考える
「明解 初級囲碁読本」の中で、碁は点から線へ発展させるゲーム」、「離して打つのが能率的」と説明しました。次は、線に発展させるのはどういう目的かを示します。

<右上>
黒1、3、5は白が別のところへ打ったとして、線を形勢したのですが、これでは効率が悪い。

<右下>
そこで、黒7、9の様に真ん中の一子を省略しました。この状態で、黒7と9の連絡を白が妨害して来ても、黒が受ければ、連絡は完成します。

黒はただ繋がっただけでなく、線によって仕切られる盤端寄りが「地」になりそうな勢力圏になっており、右下の10目強が「地」になりそうな局面です。つまり、黒の線と盤端の線が面を作るのです。

<左上>
さらに、黒15と打てば線が長くなり、黒のより広い勢力圏となります。
線が大事なのは、その線が「面」を支配するからです。ことに、第3線、第4線に出来る「線」は、盤端寄りを地にする働きが大きいのです。従って、布石時代には第3、4線を打って盤端を支配下に置き、それによって出来る「面」を「地」に転換させることが、基本的着手基準です。

<右上>
白1は上辺に黒の線(盤端と合わせて面)を作らせて、右辺には白の線(盤端と合わせて面)を作ろうとするものです。

<下辺>
もし、右上を嫌うなら、白7と打って下辺に黒の線が出来るのを妨げます。

どちらの打ち方も理のある打ち方です。

<上辺その後>
白13と打って、黒の線作りを妨害することも出来ますし、 白13では、G17と打って白左上からの線を拡大することも出来ます。この場合は当然黒の線も拡大します。
 01 線から面へ
   B 中央での面も考える
「面」は中央に広げることも出来ます。その方が効率的な勢力圏の作り方です。

<上辺>
白1に対して、黒2と中央にトビました。上辺を地にするという観点からだけ考えますと、黒2はL16の方が確実です。
そのかわり、黒4、6と打って、大きな勢力圏、ひいては大きな地の出来る可能性も生じます。

<下辺>
黒8と打って、大まかな線を作成し、この線を足場に黒12と打って大きな面作りを目指します。

注.白11は右上の白の形からすると不十分です。右上との関連は無いものとして見てください。
プロの実戦です。黒は右辺を4線で地にした位では、白の地に匹敵出来ないので、立体的に模様にする必要があります。
そこで、黒1と打ちました。白は黒1の線でまとまってはいけないので、黒の線を完成させない様に、白2と打ちました。
黒は白2に対して、M11などと受けていると、白の地も増え、地が足りなくなるので、黒3と反撃しました。上辺の白に働きかけて黒を厚くし、白2を攻めることを目論んでいます。


 02 薄い線と厚い線
   A 接近戦の石の能率
点から線へ、線から面へ石を発展させて行きますが、「能率と堅さの兼ね合い」を考える必要があります。

<右辺>
黒1と右辺に線を作り、面に発展させようとするのは良い手です。白2と相手の石が近づいて来たら黒3と線の補強を行います。
黒3と補強しない場合は、白3等と打たれて、線が破られるばかりでなく、Q16の石自体が攻められることになります。

<左辺>
白6と直接に線を妨害してきたら、黒7、9と白の根拠を奪って(白のサバキを封じて)攻めることにより代償を取ります。
線の作り方の悪い例、良い例

<右辺 悪い例>
黒1、3、5は石が1ケ所に偏って能率の悪い打ち方です。

<左辺 良い例>
黒7、9、11は右辺と同じ3手ですが外側を強化して内側を守るという打ち方は、模様が立体的で、効率的です。
黒1、3、5も立派な手です。黒3黒5は白の発展を妨害している手にもなっています。
そして、時期を見て黒7などと「模様」を引き締める手が好手です。
広げてから引き締めると、効率と堅実の釣り合い保つことが出来ます。
 02 薄い線と厚い線
   B 接近戦の石の能率
石の発展効率を考えなければならないのは、布石時代ばかりではなく、お互いの石が接近してきた中盤でも同様です。

<右辺>
右辺の白を逃げだすのは白1の一間トビが基本です。堅さと効率のバランスの取れた手です。 「逃げは一間トビ
黒2(右下の星の石と線を築きながら白を追う)と打てば再び白3の一間トビです。白3とトビ越すことにより、黒からの攻めが緩和されます。

<左辺>
右辺の白3を手抜きした場合の例です。黒4とケイマに打ちます。ケイマは一間トビより連繋度は低いのですが、攻めていることにより、薄みを衝かれる可能性は低いので「追う(攻め)はケイマ」が良い手です。 白7と逆襲しようとしても、左上の星の石などがあるので、ケイマの薄みは突きにくいのです。
<右辺>
白1と打つことも可能です。白も強化されますが、黒2、4、5で黒の良い形が出来ます。白は少し薄い形です。

<左辺>
白7と2間にトブのは黒10等の切断があるので良い手ではありません。白9で、これを防ぐなら、最初から一間トビの方が良いということです。


 03 打つ目的の連係を大切に
   A 着意の脈絡
盤上に打つ石には、意思があります。どんな目的で打つのか、前の手と連係をたもたなければなりません。この連係が保たれなければ、効率の悪い石が出来てしまいます。

<右上>
黒1の意図は白のサバキを封じ、隅から上辺を勢力圏にすることです。従って、黒3と打ちます。

<右下>
黒7は黒5の着意を継承していません。白8と打たれて、黒5の手が悪い手になります。

<左下>
黒11も同様です。

<左上>
黒13も同様です。そもそも、こう打つのなら、黒D16の星打ち自体の着意に黒13、15が反していることになります。星の石は地を直ぐに取りに行くには不適で、地を直ぐに取りたければ、三々や小目の方が適しています。
白が手抜きした時の攻め方

<右辺>
黒1とマガリます。(白2をP15と打つのは黒P16) 白2と打って、生きるのが大変です。この後白R17などと打てば、黒S15でどちらかの石が死にます。
黒7までの黒は白を包囲し、非常に良い形です。

<左辺>
黒9と攻めることも可能です。黒13が形。どちらを選択するかは、黒が局面全体から、有利となる方を取ります。
白が先着した場合

<右辺>
白1、3に対しては、黒2、4が可能。
白5と打っても逃げは一間トビ。

<左辺>
右辺の変化は白疑問で、白7、9と打つのが白としては最善。
黒8はこの地点にツケられると白根拠が出来るので、それを防いだ手で、他にC9のコスミなどがある。
 03 打つ目的の連係を大切に
   B 次の手との連係プレー
次の手は前に打った手の着意と連係していた方が良いし、次の手との連係も考えておけばもっと良いのです。

<右辺 不十分の例>
黒1は白を追い出して右下方面に勢力圏を作ろうとする手。 ここで、白が手抜きをした場合に、次の手との連係プレーほ用意しておきたい。 黒3は威勢が良いですが白4でたいしたことはない。

<左辺 不十分の例>
黒5のツケは白を強化し、不十分です。
黒十分の図

<右辺>
黒1が下辺を勢力圏にする意図の手。
まず、白手抜きの変化
黒3が黒1と打った時の狙いの一手。黒13までの変化は隅を固め、中央にも進出し、大満足です。

<左辺>
黒15に白受けた変化
黒19以下まだ白は根拠がなく、後の着手が制約をされる状況で、これも、黒満足です。



 04 石数の不利は戦いも不利
   A 近寄る手には覚悟が要る
盤上の石は、ダメを全部詰められればトラレ。盤上から取り除かれます。また、包囲されていつでもトラれる形になった石は終局後に盤上から取り除かれます。
相手の石数の多い場所へ接近、接触していく手は、そうなる危険を犯しています。

<右上>
白石の多いところへ黒1と打つと、黒は大変不利で黒1、3の石は後に攻められて負担になったり、捨てざるをえないことになります。
黒4対白3のところへ黒から打ったのだから、もっと良い結果を期待すべきです。

<右下>
黒1一子に対して、白6のツケも同様です。ツケた時は1対1ですが、黒が打てば2対1になります。

<左下>
白10はカドといいますが、これもツケとほぼ同様です。黒11と打った段階で2対1で白不利です。

<左上>
黒13と押さえることも可能で、黒は全体的に有利な方を選択できます。

<右上>
黒1と少し離して打ってみます。白2となった状況を見ると、黒1は白4子に近づきすぎている悪手です。次に黒1が攻められそうです。

<右下>
黒3ともう一路離して打ちました。これだと、黒3が攻められる心配は減りましたが、白の根拠を奪うには黒R8と打つ必要がありますが、この2手自体働きが悪いので、まだ不十分です。

<左上>
二立三析という言葉があります。白8(又はD10)と打つ手が良い手です。

<左下>
そういう意味で、黒が左下の白を攻めるにはこの黒5が良い手です。白6に対して、黒5の石を守らないで、黒D8と打つことが出来ます。
 04 石数の不利は戦いも不利
   B 接近と接触の使い分け
相手の石が沢山ある場所に近寄るのは、攻められるマイナスが発生します。ただし、援軍があれば状況が変ってきます。援軍も石数のうちです。

<右上>
白1と根拠のある右上の石に近づき過ぎたので、黒2、4と打たれ、上辺の新天地を黒に奪われました。

<右下>
援軍から白5と打ったので、白は攻められることも無いし、黒の右辺への発展も阻止しています。

<左下>
下辺に進出しようとする場合は白7、或はK3と打ちます。黒が手を抜けば、白9と相手に近づいても、攻められる心配はありません。

<左上>
左下の白9を黒が許さない打ち方もありますが、 白11のツケから打てば白15までが実現しそうです。この形の白の短所は隅の黒を強化し、隅の地を確定させたことです。
相手の石がもっと多い場合は、接触戦法が有効になる場合が多くなります。ツケによるサバキという戦法です。

<右上>
白1と打って上辺の地模様を破ろうとしても、黒2と打たれ、右辺の地模様の作成を許します。

<右下 接触戦法1>
右辺を大きな地模様にしないための戦法として、白3のカタツキがあります。打ち込んだ石が攻められない様に軽く消すという感覚です。

<左下 接触戦法2>
堅いコゲイマジマリにツケを放って、シマリをより強くしても、打ち込んだ白7以下があまりひどい攻めをうけないように工夫するという手法もあります。

<左上 接触戦法3>
コゲイマジマリへのツケは白17もあります。白17は取られても、外側の石を打つことが出来ました。

尚、黒16をC15と打てば左上隅に生き形があります。