初心者は、石を取ることを覚えるのですが、次のステップとして石を取る効果の大きさを見分ける必要が出て来ます。同じ1子を取るとしても、効果が大きい場合と小さい場合があるのです。 <右上> 白1とノビることにより、白P17の石とで、黒を切断することになります。R17の新たなキリもあるので、白1は大きな成果が期待出来ます。 <右辺> 右上と同じ形です。ここで、黒2と白の1子を取ると黒の4子は連絡し、白の1子は盤上から取り除かれ、後の2子はバラバラの状態です。如何に、黒2が大きいか分かります。 <右下> ところで、黒4はどうでしょうか。白4と打たれても、黒の5子は連絡しているので、1子を取った価値(ほぼ2目+若干)は右辺に比較して、非常に小さいものです。殆どヨセになってからしか打つ価値のない手です。 <左下> 白5の価値はどうでしょうか。これも、C5に白が打てないので、右下と同様、価値の小さい手です。当然黒が同地点に打っても、価値は小さいことになります。 <左辺> 白7の地点に黒が打つと白D10が取れて、連絡します。また、白7と打てば、黒の2子が危険な状態になります。従って、白7は大きい手です。 <上辺> 白9と打つ価値はどうでしょうか。白9には、黒10と打つ(或は黒H18のシチョウで取る)ことが出来るので、白9は大きいとはいえません。また、H17の石を逃げても、黒9と打つと、黒の連絡は保たれるので、やはり小さい手です。 これらは見合いといって、一方を打たれると、他方を打つことが出来ることを意味します。 |
右辺の黒は両アタリをかけられています。左辺の白もいずれかが、取られる状態になっています。とう打つかは、要(カナメ)石をどう判断するかにより違ってきます。 <右上> 黒1とノビて、白2と取られた形はどうか。白が6子とも連絡し、黒は1子を取られ、分断された辛い形です。黒の失敗図。 <右下> 黒3とノビました。白4と1子は取られますが、黒5とこちらも白の一子を取った形になりました。もし、仮に白4でR5の石を助けると、黒4とノビて、白P5の石と競り合いになります。 何れも、右上の分れよりは黒良しです。 従って、要石はP16、Q5の石ということです。 <左下> 白6と3子の方を助けると、黒7と取られ、黒は全体が連絡形で、尚白を分断し、白の眼形を許さない形で、黒大優勢です。 <左上> 白8とツグと、黒9と取られますが、白10と切り、白12により、黒の2子をとることが出来ます。 従って、要石はD4、D16の石ということになります。 |
碁では「用済みの石」という考え方があります。利かしとして打った石は、相手が1手かけて取りに来ると、「用済みの石」として、捨てます。相手の取った形を後で見ると、効率り悪い取り方になっていることが多く、その場合には「用済みの石」を捨てた効果という言い方をします。 私は、こういう石を捨てるのが大好きです。 <右辺> 白1と黒2は白の利かしです。黒2によって、黒に空き三角が発生しています。黒がこの石を、黒4と取りに来たら、白6とは打たず、白5等と外します。黒6までの形を見ると、(白1黒2の交換は相殺して考える)黒4の石は、不要です。つまり、黒は黒4という不急の手を打たされたことになります。 <左下> 小目に対する一間高かかりの定石です。白E6、D5、D4、E3の4子は利かした石なので、白9以下捨てて、白の良い形が出来ました。 尚、これは昔からの定石です。この形から白4子と黒4子を取り去った形を想定した場合、私は、まだこの図が定石とは思いにくいと感じています。(黒の地30目強の方が大きく見えます。まだ、修行が足りないのかもしれません。) |
アタリは相手が逃げてくれるので、打つのは快感です。但し、それは初心者の時だけです。アタリを打つと、当然相手は逃げます。逃げた段階で、アタリをした側と、された側の形を比較して、逃げた側の方がもし、良い形なら、アタリを打った方が悪くなります。
将棋で言うと「王手=おうて」に当たります。将棋でも王手=追う手と言って、むやみに王手をすることは不利になる方が多いようです。つまり、前線から逃げようとしている玉に対して、王手をして、前線から遠くへやるということになったり、手駒がなくなったりするので結局不利になります。 碁では、「切り違い一方をノビよ」という格言がありますが、アタリによって、相手がノビた時に、格言通りノビたことになったのであれば、利敵行為です。 <右上> 黒1とアタリをして白2とノビタところは、白が一方をノビた形になっています。結果白有利な分れになりました。 <右下> 黒が黒7、黒9でアタリをかけたとすると、こんな形になってしまいます。 <左下> 「切り違い一方をノビよ」という格言に従うと、黒33で白2子が取れます。 <左上> 同様に黒39で白の一子を取って黒有利です。 |
アタリはトランプの切り札に似ています。一番強いカードです。トランプで一番強いカードを最初に切って形勢が良くなるゲームってありますか?勿論最後に使えば良いというものでもありません。強いカードでも、勝敗が決まった後に出しても効果が無い様に、効果的な時に切るのが良いですね。また、相手に必要以上に意識させて切り札を使わないで勝つこともあります。
碁でいうと、切られるのを恐がって、一手かけて継いでくれれば良い場合もあります。 <右上> 黒1と強いカードを早すぎる段階で切ってしまいました。以下、黒3と頭を出すという目的は達成しましたが、黒1を良い形で取られてしまいました。 <右下> 右上の図はこの様に打って、黒11と急所に打つ手が良い手なのに、この黒11で、Q5と打って、白Q6と取られたのと同じ形になりました。だから、右上の分れが良い筈はないのです。 <左下> 単に、黒13、白14と打ち、黒15とツグのが、双方のベストです。白16は下辺の関連で白D2と打つことも出来ます。 <左上> アテがとんでもない結果になった例 白26ではG17に切るのが定石です。それを、アタリだから先手なので良かろうと、自らのダメヅマリを 省みないで、譜の様に打つと大変なことになります。こんなになったら、白投了です。 |
石の形に無駄を発生させると、無駄な石(働きのない石、愚形)が発生し、都度形成が悪くなっていきます。100%無駄という石は比較的少ないのですが、それが仮に30%の価値しかない石だと、そういう石を3つ作れば、3回打って1回分の価値のある手しか打てないということになり、2手分をパスしたことになります。2子の置碁で黒がそういう手を打てば、白が先手番になったと同じことなので、もう白が優勢ということです。無駄のある形、働きの無い形は空き三角やダンゴ形で代表され、贅(ゼイ)肉と同じで、良い結果にはなりません。お互いに働きの無い石が発生するなら、互角でしょうが、一方だけ発生するのは、悪手を打った結果ということになります。 <右上> 白1に対して、黒2とツグのは、他の形が決まっていない場合には、悪手になります。この形で言えば、黒R16、黒S16の石は、存在感がありません。 <右下> では、白3に対して、どう打つか、答えは手抜きです。 場合(コウを争う価値がある局面)によってはN2と切ることもあるでしょう。 <左下> 白5に対して、黒6と打った形を見ると黒愚形です。 この形は、白5と打たれたらどうするか考えるのではなくて→左上参照 <左上> 白にF14と打たれるのを避けるには、黒がそこを打つことです。 また、白11の次に白F13と打たれると、2目の頭をハネられることになり、これも回避しないといけません。 |
<右上> 白1に対して、黒2と取ると、黒石の形が崩れます。 この3の地点は、黒P14、黒Q14の2子のアタマになります。 <右下> 白7に対しては、黒8が正しい手になります。黒8でも、白P4の石は取れています。 <左下> この形で、黒10と切ると、白11とアテられて、黒が愚形になります。 <左上> この形では、黒14とノビるのが正解です。もし、白15とツゲば、黒16と打つか、別の大場に先着します。 |
形の良し悪しについて、原則的なことを示します。 <右上> この右上の形は白の形が良い形です。白は真っ直ぐ、黒はへぼコスミです。この形から、相手の石に対して働きかける場合、白からだと、白1のツケが良い形です。また、白R16も黒の急所なので、黒の受けが難しい。 格言「上手まっすぐ、下手コスミ」参照 <右下> 同じ様に黒2とツケルと、黒の形が悪いため、白3、5と打たれ、黒の石が取られてしまいます。 <下辺> この形は下辺のような段階で、黒6と打つことから生じます。 白の石が4線でなく、3線の場合も同様に黒8に白9と打つことにより発生します。 特に、白が3線に打って来ると、裾空きが気になって黒8と打つことが多いようです。 <左辺> 白11とカドに打ってきた時に、黒12とコスムとやはり同じ形になります。 <左上> 白15に対しては黒16と真っ直ぐ押すのが良い手です。白17と押さえると、黒18と二目の頭をハネる手順が回ってきます。 黒16に対しては、白18と打つべきです。 |
<右上> 黒の2子に対して、Q14は急所だと言いました。右辺の形から見ると、眼形をつくるのを邪魔していることが分かると思います。 <下辺> 黒1と打つということは、L4の白石がわざと急所に来るようにしている上に、白L4の石に対して影響力が少ないので、黒1は悪手だということです。 <左辺> 白2に対して、黒3とヘボコスミをしたのに対し、白は真っ直ぐに打ちました。この白の形は良い形です。そして、白2の石は黒の5子の急所に来ています。 <上辺> 白12に対しては、この様に真っ直ぐに出ます。これなら、白の石は急所に来ていません。 |
「石の活力」を考えてみます。石の活力というのは、色々な意味に使われますが、ここでは生きる力ということにしておきます。
この活力が大きい石がすなわち、働きの大きい石ということになります。 <右上> 白1と打って、黒2と押さえられると、白の1子は、黒の2子によって、活力を抑えられた形となります。 <右下> 右上の形を継続して、黒6と二目の頭をハネると、白はおとなしく、N5に打つ必要があります。状況を把握しないで、元気だけ良い白9と打てば、黒22までの様な破局が待っています。 <左下> 白23のツケに対しても、黒24、26と打たれ、隅の重要な地点を占められます。 <左上> 白27に対しては、黒28と打つことも出来ます。この形は若干の白地はありますが、白は隅に閉じ込められ、働きが悪くなります。 | |
<右上> この形は白の一子の活力は殆ど無いと言って良いほどです。 白R13と打って、仮に活きて数目の地を得たとしても、それの何倍かの価値を黒に与えるのなら、死んだ方が良いということなのです。 <右下> 黒1と打ったら、白2と打ちます。この形は白の方が良い形です。 もし、白2と打たなかったら、黒2と打たれ、右上の黒良しの形になりますので、白2はこの一手ということになります。 <左下> ツケノビ定石ですが、白6は大切なところです。この手により、白はC7の切りを防ぎ、黒6と打たれるのを防ぎます。 <左上> 白12で手抜きをすると、黒13と打たれ、白2子の活力を大いに減少させます。 <右下参考> 白16、黒15の変化は定石ではありません。白の2と立った形は良いし、白16と 二立三析に開いた形は白の理想形だからです。 黒の石が、白16の近辺にあって、二立三析に打てない場合のみ、定石と言えます。 |
ツギ方を考えてみます。切られない様にすることがツギなんですが、ただ、切られない様にするだけでなく、相手の石の活力を減らしながら、或は自己の石の形を崩さない様なツギ方が良いツギ方になります。 <右上> 黒1が良いツギ方です。切りの防止と黒Q10の石との協力により、白R14の石の活力を減らす、一石二鳥のツギです。 <右下> 黒11は堅実だけど、働きが悪い。 白12や白N5により逃げ出す手を見られており、また黒の形自体も空き三角の悪い形です。 <左下> 黒13が良い形です。 <左上> 黒15は白の活力も減じてないし、その形自体空き三角です。 | |
<右上> 黒1と切って、白の一子を取って隅に地を作りました。それに対して白は白2、4とうち、切りを防いで白6と打ちました。この白6は、切りを防ぐと同時に黒M16の活力を削いでおり、一石二鳥の手です。 <右下> 黒のハサミが一路遠い場合は、同じ様に黒7の切りから白の一子を取ってきた場合、黒N5の切りを防ぐ良い手がありません。 譜の12でも、P6の切りなどが残っています。 |