棋力開発

 15 ねらいを持った援軍を
   A 援軍があるとき、送るとき
接近戦、接触線が起きた時近くに味方の石があれば有利です。その援軍が無い時は援軍を補充します。

<右上>
置碁に頻繁に出現する形。 白1の打ち込みに黒が2、4と攻めたところです。白5に対して封鎖をしたいけど、単純な方法では出来ません。 そこで、モタレ(凭れ、寄りかかる)戦法を使います。上辺の白に対して、ツケにより白7、9を打ってもらい、黒16の弱点を利用して黒18、20と封鎖を完成します。

<左下>
黒22のツケに対して、白25などこっちの石を大事にすれば、黒26等と下辺で得をします。
相手の援軍がある場合は強く戦うことは不利を招きます。

白1に対して黒2、4と白2子を確保しようとして来ました。 そこで白は5とツケて、強く戦おうとしましたが、黒の援軍が多いところなので、黒6以下白の苦しい戦いになりました。黒24まで、白の中央のダンゴ石は眼形もなく、攻められ形、上辺の白3子は立ち枯れです。
 15 ねらいを持った援軍を
   B 遠い援軍、近い援軍
実際の戦いに援軍がどれだけ働いてくれるかを判断するにはヨミの力にささえられた総合力によります。 また、近くに援軍が欲しい時は「手筋」により、相手の弱点を攻め、遠くに援軍が欲しい時は「戦いの方向」を見極めながら戦います。

<右上>
黒1の捨石が手筋です。この白の断点に目をつけたキリにより、白の攻めの速度が鈍り、黒の攻め合い勝ちが実現しました。

<右下>
黒の面積が生きる最低の面積より狭く、通常の手では生きることが出来ません。 黒9のキリから黒15まで、これで黒は生きているのです。 まず、白16のハネに対しては黒17と切ります。白18のツギに対しては黒19と1眼持つことが出来ます。

<左下>
白20のツギに対しては、黒21のアテが利いて生き。

<左上>
白24に対しては黒25で生きとなります。
黒1のボウシにより白J4の一子が攻められそうです。
ここは、黒Q6のキリを含みにして、黒L5やL6が利きになっています。つまり、眼に見えない黒石の援軍が存在している訳です。また、白G4と打っても、黒F4と受けられ、簡単に脱出出来ません。
相手の利きにより目に見えない援軍があるのなら、その利きをなくして、その援軍を無くすることにより脱出が可能になります。その手が白2、4です。黒5と眼に見える形にした後、白6脱出します。
細かいヨミの問題でなく、下辺の戦いは中央に発展しそうだから、中央を強化するというのが正しい方向感覚、正しい大局観です。


棋力開発

 16 次の攻め、次の次の攻め
   A 接近は攻めの前提
「石が接触する」のは、
 手を抜けば「取るという意思表示」です。

「石が接近する」のは、
 「攻めるという意思表示」です。

<右上>
白1のツケに手を抜けば、白3、白5と窮屈になります。 但し、白1に対して黒がハネやノビで受けると、白1自体が窮屈になります。だから、黒石に白1と単独にツケるのは、サバキや、近くに白石がある時以外は悪手です。

<右下>
白7のカカリに対して、黒8と強化しておけば、こんどは白の手抜きに対して、黒Q9等の攻めがあります。

<左下>
白のカカリは、手抜きすると、白11などの両ガカリで、黒を攻めることを前提にしています。

<左上>
右下の様に白が攻められることを回避する為、白13、15と根拠を持ちます。黒16では、手抜きをすると白H17を狙われますので、黒16とヒラキます。

以上のことを踏まえて、この左上の形が定石となっています。
黒1のヒラキは、右上からの発展を意図すると同時に、右下の白に対する攻めも意図しています。

白2は黒のそういう意図を妨害するという意味と、黒の手抜きに対しては、白10と黒7の一子を攻める狙いを持っています。

黒3は右上の地模様化と、黒5等による、右下の白への攻めを見ています。

白8の大ケイマジマリは黒の攻めの回避と白10による、黒の攻めを見ています。

白10は左下の地模様化の防止と黒11を手抜きしたら、白11と打って黒7を攻める狙いを持っています。

黒11は白10を攻める狙いと、白が手抜きをしたら、黒F7等での攻めを見ています。

碁の場合、特に序盤、中盤では1つの目的だけの手は不十分で、悪手となってしまいます。、
 16 次の攻め、次の次の攻め
   B 現実の攻め、将来の攻め
<重要>
碁の勝負は地の大小で決まります。これはあくまでも最終的な段階のことで、序盤、中盤の段階では石の強弱が最も大切 な着手選択基準です。
序盤はもとより、中盤でヨセの手を打っていると、結局攻められて、そのヨセの得が帳消しになり、結果的に損な手を打ったことになります。

この棋譜から読めることは
1.地は第2の問題で、攻めと守りを第1の問題として打ち進めている。
2.地は後から考える。

黒1から白4までの手の目的は、隅の地を獲得しようとしているのではなく、戦いの拠点作りです。
黒5 白のシマリの妨害と白が手抜きした場合の攻め
白6 白の強化、黒への攻め
黒7 白のシマリの妨害と白が手抜きした場合の攻め
白8 白の補強、黒への攻め
黒9 黒の補強、黒11からの攻め
白10 白の補強、黒への攻め
黒11 ヒラキヅメ
白12 白の補強、黒への攻め
黒13 黒の補強、白への攻め
白14 白の補強、黒への攻め
黒15 黒の補強、白の進出の急所を奪う攻め
白16 白の補強、黒への攻め
黒17 黒の補強、黒K5等の白への攻め、
    2次的な結果としての地の確保
    但し、この手では白33と、黒27の石を攻める
    方が良い手です。
白18 白の補強、黒への攻め
黒19 黒の補強
白20 白の補強
黒21 黒の補強、封鎖による白への攻め
白22 白の補強、黒への攻め
黒23 黒の補強、上辺のツメを見た白への攻め
白24 黒への攻め、地模様拡大
     但し、カカリの方向が反対です。
     1.右下の白より左上の白が弱い
     2.右辺より上辺の方が広い
      ので、上辺からのカカリが正しい。
黒25 黒の補強、白への攻め
白26 黒への攻め
黒27 白への攻め
白28 白の補強、黒への攻め
黒29 黒の補強、白への攻め
白30 白の補強、2次的な結果としての地の確保
黒31 黒の補強
白32 白の補強
黒33 黒の補強、白への攻め
白34 白の補強、黒への攻め
黒35 白への攻め(白37と打って根拠を得る手の防止)
白36 白の補強
黒37 黒の補強、白への攻め
白38 白の眼形強化、黒の眼形防止


棋力開発

 17 攻防は相対性原理
   A 石の強弱は比較の問題
弱い石は攻められて、地の損に反映し、強い石は攻めの効果により、地の得に反映します。
但し、この強い弱いは相対的なもので、相手より強いか弱いかということになります。

<右上〜右辺>
白1 カカラないと、黒にシマリを打たれ、強い石になります。シマリは地の大より石が強くなることに価値があります。地を持てるというのは二義的なことなのです。

黒2 黒石を強化しました。

白3 黒2白1の状態なので攻められない爲の守り

白7 白5に対し、黒で手抜きをしたので黒の眼形の急所を打ちました。

黒10 白R18を回避する爲に、白11との交換は辛いですが、やむなく守りました。

黒12 白Q16と打たれる手を回避する爲、空き三角ですが打ちました。

この様に白3、白5等の援軍が加わると黒2の段階では黒の方が強かったけれど、強弱の関係は逆転しています。

<左辺>
黒14の時点では、左辺に関しては黒3子対白1子なので、黒優勢ですが、白31の段階では、こと左辺に関してだけ判断すれば、白石が多く、黒14が弱くなっています。
 17 攻防は相対性原理
   B 相対性原理は石の調子に結びつく
石の強弱を考えれば、「石の調子」を理解し、駆使出来る様になります。
つまり、単に補強するのではなく、もっと弱くなった段階で補強する。相手を引き付けて補強すれば、相手の石は結果的に補強されて強くなった石に近づいたことになります。
格言「強い石、厚い石に近づくな、相手の石を自己の厚みに誘い込め

<右辺>
黒1と打ち、白2と代わってから、黒3が石の調子です。 この後、白が手抜きなら、黒5が黒7等の攻めを見て良い手になります。
黒1で単に黒3と打つと、白はR13と打ちます。これでは次に黒のピッタリした良い手がありません。

<左辺>
この形は、黒11とカカリ、白12と打って、白D11などの打ち込みがより厳しくなった段階で黒13と守るのが良い調子です。
黒13の段階では左下の白の薄みが気になります。
<右辺>
黒1と打って、白2に黒3と打つのが石の調子です。 単に黒3とヒラクと、白は1やM17と打ちます。

<左辺>
白から打つなら、白4と打って黒5を誘い、白6と打ちます。後に白8が狙いです。
<上辺>
打ち込みに対して黒1と守りました。黒1に先立って、黒Q18、白R17の交換があれば良い調子ですが、黒Q18に対しては白M17の打ち込みがあります。

<下辺>
黒3、5と黒の右辺を厚くし、白の下辺を丈夫にした後、黒7と守るのも良い調子です。
黒3に石があると、白4でH3と打ち込んでも、黒K5のトビが下辺の2子に利いていると考えられ、H3のウチコミは不発になりそうです。


棋力開発

 18 重と厚、軽と薄はどう違う
   A 重いと軽い、軽いと薄い
重いと軽い、厚いと薄いは反対語で、一般的にも使われますが、碁の場合
  重い石、薄い形=悪い
  軽い石、厚い形=良い
です。

<上辺>
黒1と打たれると白の5子は重くて、攻められて困る。

<右辺>
白2、4と打つと白厚い形で、黒の下辺にも打ち込みが打てそうです。

<左辺>
白は軽い形です。白6で根拠が出来そうだし、白6でH7に打てば中央へ楽々進出出来ます。

コゲイマジマリに下からツケて利かす形が打ち方一つで軽い形になったり、重い形になったりします。

  右辺の2例は軽い形の例
  左辺の2例は重い形の例

<右上>
白1が軽い形です。黒2と、
生きている石の近くは小さいの格言を無視して、生きている石から動いて来れば、ありがたく、白3と捨てて、黒5と上辺に力を溜めます。

<右下>
従って、黒は白7に対しては、黒8と全体の白を攻めるか、手抜きを考えます。
白は白9と逃げ出して、安全にしておき、後に白11など、下辺を打ちます。

<左下>
このバラバラの3子自体を生き形にしようとすると形が重くなって、黒の攻めの絶好の攻撃目標になります。
黒が重い形になり、形勢を損ねます。

<左上>
白19は良い手ですが、黒20に対して、ここに無理に眼形を作ろうとすると、結局重い形になって攻撃目標になります。
 18 重と厚、軽と薄はどう違う
   B 薄いと厚い、厚いと厚み
厚い、薄いは部分的な形だけでなく、全局的な碁形を表す場合にも使います。例えば、終盤で「厚い碁」と言えば、やや優勢な意味。また、碁風を「厚い碁」と言えば、追い込み型の碁風を指します。

白1と黒2を交換した爲に、下辺の白3子と白1の石が重くなりました。白3はやむを得ない手ですが、黒4に対して、白は下辺を守る手が必須となり、黒6、8を打たれました。 この下辺の形は、黒が厚く、白が薄い形です。
また、碁形全体も黒が厚く、白が薄いと言えます。
白1と打っておくと、下辺の白3子は軽い石になります。
この3子は下辺の黒4子に対して、白K4等が利く可能性があるし、取られた場合でも、F1のハネツギが利くので黒地はあまり大きくなりません。従って、白3子を捨てて、右下で利を得る打ち方も出来るわけです。
「厚い」という表現と「厚み」とは区別してください。

「厚み」とは部分的に石が外側に向かっている状態を指します。
左は、黒は実利、白は厚みという全局的な状況です。
また、形勢判断としては、がっちり実利を持っている黒が「厚い」という判断も成り立ちます。

ここから、黒は中央を守って、黒7と実利につきました。
白は厚みを利用して、どこかの黒を攻めて、利を得ないといけない状況ですが、黒には弱い石がなく、白からは、追い込みが利かない形勢です。

つまり、「厚い」というのは追い込まれる弱点がなく、逆に追い込みがきく局勢を言い、
「厚み」は部分的な形を指します。


棋力開発

 19 石をどう取るかが問題
   A 味の良さか、働きか
相手の石を取る時に取り方の選択が必要な場合があります。
確実に取るか、大きく効率良く取るかの選択では
1.ヨミに自信が無いうちは確実に取る
2.ヨミにある程度自信がつけば、周囲の状況次第で判断する。
ということになります。

<右上>
白の手番でこの形が出来た場合、どういう取り方があるか検討してみます。
まず、この形は黒先生きで、黒1が生きる唯一の手です。黒3が2の1の特殊性を利用しています。

<右下>
白から取る場合、白6のハネで取ることが出来ます。
但し、この場合は、黒7のツケがあると、黒9のハネが利きます。

<左下>
白10でも取ることが出来ます。白6のハネと同様な利きはありますが、この方が下辺に対する影響力が大きい。
但し、攻め合いになったりすると、1手のダメあきが影響する可能性があります。

<左上>
白18と打って、上辺を厚くすることも出来ます。
但し、この場合は黒19、21を想定して黒B10等が利くことになります。

つまり、それぞれ一長一短なので、周囲の状況により、利かす時期、利かす方法を選択します。
<右辺>
黒1は取るの前段階の攻めですが、直接の攻めはうまく行かない場合が多い。いわゆる一方石はなかなか取れません。

<左辺>
黒5と上辺の石にモタレて攻めるのが良い手です。 黒7と連打出来たのは、攻めの効果です。
<右上>
黒1にケイマで上辺を打って来たら、黒3とオシて、黒5と白の根拠を奪いながら、黒の根拠を確実のものにします。

<左上>
白8とオシアゲて来たら、黒9以下黒15までとなり、黒の戦いやすい形です。
 19 石をどう取るかが問題
   B 働いて取るテクニック
確実な取り方はコウダテを減らします。しかし、序盤では出来るだけ働いて取ることを考えて下さい。 がっちり打って後を強く戦おうとする「本手」も、緩手になることが多いからです。

<右上>
白1は黒がどう受けるか聞いた手です。黒が手抜きすれば、白2とマガって大変味の悪い手になります。 黒2に対しては、白3と味良く抜きが良い手です。後に、白O17のツケで上辺に勢力を築く狙いです。

<右下>
黒6に対しては、ポンヌキするより働いた白7で黒1子を取ります。この形は後に白9から白11が利いている形なので、白7が推奨されます。 尚、早い時期に黒がN1とハネを打って来た場合はN4に抜きます。

<左下>
黒14は左下の白を取りながら、白C9を攻める働いた手です。但し、この取り方の欠点は白F4等下辺からの利きが残ることです。

<左上>
上辺の白が強い石の場合は左辺からの利きがなく、ガッチリ取る黒16が良い手です。
黒1が
1.大きく取る
2.味よく取る
3.外側からの利きを無くしている
という、プロの対局に於ける好手です。
白2に対しては黒3とダメを詰め、黒M3からの切りを見ています。従って、白4、黒5となりました。
左下の黒6子は下辺へのワタリと黒F1の生きを見ています。
通常の発想だと、黒1と打ち白4、黒5、白6に対しては黒7と生きます。白8と競り合いを先着出来て白好調です。
上の図では同地点を黒5と黒が先着しています。上図の黒1により、大事な中盤で1手の差が出来たのです。
尚、下辺は白10の押さえが先手であることを示します。つまり、黒M3の出切りは成立しにくい形です。