「手割」或は「石割」とは 石の能率が十分発揮されているかどうか測定するための方法論です。 17世紀後半に活躍した本因坊道策は、当時の「1つの隅に関しての理論展開」にとどまっていた囲碁理論に「他の隅、或は辺との関連を重視した考え方」を加えて新しい囲碁理論を確立しました。 その理論を作っていく上での方法論として手割が重要な役割を果たしたのです。 参考にした本 基礎から学ぶ「勝てる囲碁の法則」 | |
<手割の具体例> 右上の黒と右下の白との比較 同じ3子の形、どちらが石の効率が良いのかは明らかです。 手割という言葉を使ってこのことを表現すると、「黒の形に比較して、白は手割上損である。」ということになります。 左上の形と左下の形はどうでしょう。 黒白の 1.手数を比較すると、黒が一手多く 2.地は黒が1目少ない 白はこの1手を他に打つことが出来るので、他の地点での石の効率に優劣が無ければ、全体の形勢は白が良いということになります。 どんな手順で出来たかということは、打つ上では大切なことですが、評価という段階では、関係ないことなので、手割での評価をする場合に、手順を変えて評価をすることもあります。 例えば、評価が決まっている形から、評価したい形になる時に白黒いずれが悪手を打ったかによって判断することもあります。 A評価済みの形→ ↓ 白黒の着手の評価=Bの評価 B評価したい形← これが手割論です。 | |
<ハメ手にかかった形を手割する> 昔から有名なハメ手に右上の形があります。 黒33まで黒の実利、白の外勢の分かれとなっています。 これは、専門的に見れば、明らかに黒不利な結果です。このことを手割で説明してみます。 右下の形は、白の6子を抜いた、右上の黒33となった段階の図と同じものです。 手割を考える時には、白6子のアゲハマも含めて同じ数の石を取り除いて単純な形にして比較します。 左下の形がアゲハマの白6子と盤上の黒6子を取り除いた形です。 1.黒地は18目で、黒C3、E3の黒石は無くても良い石です。 2.白地というものはありませんが、厚みが経験的に3〜40目あり、無駄な石はありません。 このことから、黒が非常に不利な形だということがわかります。本来なら黒C3、E3の2手を他に打てるにも拘わらず、黒地を減らす位置に打った理屈になっているからです。 |
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<定石と手割論から勢力の価値を評価出来る> 左下は小目の基本定石の一つです。 出来上がる手順は、右上の黒1〜白8で、それぞれ4手ずつかけています。定石なのだからこれらの4手は価値が同じだと考えられます。 そこで、この定石の地と勢力をどう評価するのか考えてみます。 左下は将来打たれる可能性を考えて黒9から白26までヨセた想定図です。この結果を見ると、黒地14目、白地6目で、黒地が8目多くなっています。 また、石の勢力を考えると、 1.黒 右辺への発展性(勢力)がある 2.白 白8の左と中央に発展性(勢力)がある このことと、この定石が白黒互角であることとを考えると、この勢力の差を地に換算すると白が8目分発展性(勢力)があるはずだということになります。 つまり、互角の分かれなのだから、 白黒の勢力の差=黒白の地の差 ということです。 |
<定石外れの手を評価する> 右上 白1の三々打ち込みに際して、白5に対する黒6は定石外れです。 右下 黒16のオサエに対して、白20と切らないで活きを図ると、黒20とツグことも可能で、黒が先手になってしまいます。 左上 定石で黒36までで一段落です。 右上 白37のノゾキが利く可能性が高いのですが、黒38までの右上の形と左上の形を比較すれば、手割の考え方により、白から見て、左上より右上の方が得であると言えます。 左下の形は、右上の形で白37と打たずに、白38と打った場合の図です。白39と、わざわざ取られるのを承知で打つことはないのですが、結果的に左上の白はそういう手を打たされているのです。キリを打たないと、右下の様に後手活きになるので、白はやむなく(先手で生きるための手筋の)キリを入れているのです。 |
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