美術工芸品の撮り方

刀の写真が撮れればカメラマンとして一流だといわれている。
刀は長いし、コントラストのない刃紋の再現は至難の技である。
金属だから光っているのでカメラ自体が写り込んでしまうかも知れない。
茶碗もうわぐすりが光っているから難しいものの一つである。
さらに美術工芸品は標本的な要素が強いので、形の歪みは発生させたくない。

これらの撮影は自然光では難しい。かといってストロボも見えないので駄目。
結局、ライトで照明することになる。
ライトはタングステンなので、タングステンタイプのフィルムを使うか、色温度の
変換が必要になる。
そこで、これらのノウハウは照明方法の技術なのである。

照明は主光源と補助光源を使い主体に立体感をつけること、また背景に主体を
溶かし込まないで浮かび上がらせる為のバック照明が必要である。
その方法は、ひとつライティングマニュアルなどの参考書を見ていただくことになるが
ここでは簡単な標本的のフラットな照明を紹介する。
まず、ケント紙などの紙とトレシンクペーパーを用意する。
また、白バックは羅紗紙、黒バックは書道のフェルト下敷きがいい。
茶碗位の被写体なら大きいものはいらない。
まず、被写体をバック紙の上にのせる。
被写体がすごく小さい場合はバックの紙にもピントが来て紙目や布目が写ってしまうから
そんな場合は被写体より小さな台を用意し下駄を履かせるとよい。
下駄は写らないように工夫すること。特に黒バックは被写体とバックのフェルトを
遠ざけないと被写体の照明で布目がでてしまうから注意する。
次に被写体の回りをケント紙で覆う。
ライトにはトレシングペーパーを被せ立体感が出るように照明する。
影が強いようならもう一灯使ってみる。
バックから浮き上がらせるためには更に白バックを照明する。
ケント紙からの乱反射で一灯でも結構撮れると思う。絞りは小絞りでシャッターは
長くなってもやむをえないが、ぶれには細心の注意をする。
露出はどうするかって?。入射式の露出計を使います。
入射式がない場合は、18%標準反射板を被写体の代わりに載せて測定しておくのですが光源から近いので誤差も大きくなつてしまいます。
が、何回かやっていればライトが同じですから覚えてしまいますよね。
ここで威力を発揮するものは洗濯ばさみやセロテープ、針金、紐のようなもの
バラック建てのセットでいい。毎度撮影するようになれば、
自ずと自分専用のセットが整ってくるもの。そうでないと必ず邪魔にされて捨てられること請け合い。

さてどうしても光って映り込みがありうまく隠せないという場合には、奥の手がありますよ。
光沢反射を防ぐ優れもののスプレーが販売されています。
それほど高価ではないから、少ない面積であれば重宝します。

文献コピーの場合は、照明のむらがないようにします。
また、カメラと文献は平行に、かつ中心に置きます。あとは同じ方法でゆけます。
とはいうものの、しわだの浮き上がりがきっと悩ませるでしょう。
そんな時は、ノングレアガラス(無反射ガラス)を買ってきて乗せましょ。
四つ切り一枚あれば以降重宝することでしょう。