構図考

構図については、いろんな本にいろんな事が書かれています。
写真って、一生壁に飾っておく絵とは趣が異なるので「クラシックな理論」はいらない!
とまあ、牛鳴さんは思っているのです。
でも、へ理屈を知らないのと知ってるのでは「違いの味」もわかってくるというもの。
勉強しておくに超したことはあるまいて。せいぜい読んでおいて下さい。

絵なれば構図に合わない部分は描かなければ良いわけだからいいが、写真の場合は、
特に風景写真の場合には、電信柱を取り除くわけにはゆかないし、
木の枝を折れば叱られる。
とまあ、こんな具合だからあんまりこだわると写真が撮れなくなつてしまいます。
写真は構図より視覚心理学が適用されるようで、そんな点からいくつか拾ってみると。

横位置は広さを暗示する。
縦位置は高さを暗示できる。

だから、広い野原などなら横位置がいいし、高い木などなら縦位置がよいことになります。
これは人間の目が横に二つ並んでいるかららしいんですが、遠景は横長に風景を
認知しているといいます。
でも、そう考えると海や山はみんな横位置になってしまうし、滝や樹は縦位置と
決ってしまいます。
ですから、山ならまず横で撮っておき、次の駒は縦にして考えて見ましょうよ。
きっと新しい発見があるとおもいますよ。型は壊してみないと進化がない!。
じゃ、正方形の写真はどんな暗示があるか?。
近景とか遠景でも凝視するときは正方形ないし円状に見ているそうです。
凝視するような被写体は正方形がいいようです。これはLスケールでトリミングして
みるととどのつまりは正方形になってしまうから分かります。
正方形は縦横両方の要素を併せ持っているといわれます。
こんないいフォーマットはありませんね。だいいち不安定な三脚ワークがいらない!。

視覚心理学では紙面の絵を見るとき視線は左下から右上に移動するといいます。
したがって左上と右下は視線があまりとどまることがないわけで、多少邪魔なものが
写り込んでいても気にならないことになりますね。

右上が軽い(明るく飛んでいる)場合は視線が抜けてしまうといいます。
曇りの日の空は白く写ります。画面の上に白い空があると確かに軽々しい感じがして
安定感がなくなりますから、曇りの日は空を撮らないことですね。
青空でも単調な空は同じことがいえそうです。
かといって雲は勝手に出てくれませんがね。
そんな時は青空を主役に仕立てたらどうでしょう。

日の丸弁当って知ってますか。ご飯の真ん中に梅干しがひとつ埋めてあるやつ。
え、すっぱくなっきた!。写真ではこの構図は嫌われています。
何故なんでしょうか。画面の真ん中に主役を据えるほど理にかなった説明はないと
思うのですが。
これはきっと画面の縦横比のせいだと思います。
スクエアフォーマットならいいでしょう。
正方形の場合は視線を中央に収斂する視覚効果があるのだとおもいます。

黄金分割は1:1.4ですが、ほぼ画面を七三に分ける。即ち空を三分、
山を七分いれた画面がそうです。一番安定した構図のはずですね。
この写真をみると、きっと安心して「あとでゆっくり見ましょう。」という気分に
なってしまうでしょう。そして後で見る事など人間はすぐ忘れてしまう。
あまりにも均整が取れすぎているってのも肩が凝るものです。

人間の心理っておかしなもので、画面の端に出てゆく方を向いた人等を入れると、
つられて視線も出ていってしまうモノらしい。
点景人物は真ん中ではおかしいから画面の中央に向いた形で端に配置しないといけません。
当然、人だけでなく、馬でも鳥でもです。
山の稜線も画面の左右で、昇り勾配で切るか下がり勾配で切るかによって、
随分イメージが違ってしまう。
昇り勾配だと更に連なってつづく感じだが、下がり勾配だと安定して、
そのまま終わってしまう。
この辺は写真の作画意図によるところでしょう。

広告写真ではキャッチアイを作ることに注力します。
キャッチアイって「なんだろう」と視線を止めるものなんですね。
写真もこれが必要だとおもうのです。安定感などぶち壊してしまわないといけません。
展覧会で受付けに並んでいると、よく聞かれます。
あれは何をどうやって撮ったんですかと。
気になってしかたないんでしょうね。写真の奥技はここにあるわけです。