あおり

普通のカメラはレンズ面とフィルムの保持面は平行、且つ光軸は中心に対し
垂直に設定されている。
これが狂ってしまうとイメージサークルがぎりぎりだから片ぼけの原因に
なってしまう。
シャインフリュークの法則とは被写体の延長線と写真機のレンズ取付け面
の延長線、フィルム面の延長線が一点で交わるようにすると被写体全面に
ピントを合わせる事ができるという原理で、普通のカメラはカメラと平行の被写体を
想定した場合、無限遠にその点があるわけで、シヤインフリュークの法則が
成り立っているわけです。
オルソスコーピーの法則チーフレイの法則と合わせて三大原理といいます。

大型カメラにはビューカメラとフィールドカメラがある。カメラのタイプのちがいにより
あおりの量に限定があるものの基本的な原理と操作はおなじである。
レンズとフィルム面を平行に移動することと、レンズの光軸とフィルム面の垂直交差を崩す
移動にわかれ、前者を軸移動、後者を厳密に「あおり」いう場合もあるようですが、
一般には前者の「シフト」を含め一緒に「あおり」としているようである。
前者にはライズ/フォールシフトがあり、 後者にはティルトスイングがある。
その方法にはレンズ部(前枠)を動かす方法とフィルム部(後枠)を動かす方法がある。

あおりの効果は撮影像を整形すること、すなわち高い建物などが上すぼまりとなる
のを防止する(遠近感の調節)例と、ピント面を深くする、
すなわちパンフォーカス被写界深度の調節)例である。
建築物の写真では上すぼまりは避けたいし、
広告写真などでは反対に下すぼまりに商品が歪むのを避けたい。
また、大型カメラは必然的にレンズの焦点が長くなり被写界深度が浅くなってしまう。
これを防止するには「あおり」が必要不可欠なのである。
(35ミリの対角線長は41ミリにたいし、4x5では152ミリである。
したがつて4x5の標準レンズ?は150ミリとなる)

ライズ/フォール
前枠又は後枠をベースに対し垂直に上げる/または下げること。
シフト
同様にベースに対し、左右に平行移動することを右シフトまたは左シフトという。
ティルト
光軸のフィルム面中心に直交するのを天地方向にずらすことをいう。
スイング
同様に光軸を左右方向にずらすことをいう。

建物の上すぼまりを矯正する具体例
水平にカメラをセットし建物の屋根が画面に入るまで前枠を上げる(ライズする)。
後枠を下げても結果は同じである。ただし、レンズのイメージサークルの
範囲でなければならない。
普通のカメラでは建物をしゃくりあげて撮ると屋根方向の距離が遠くなるので
小さく写るのである。
カメラを水平にセットするために水準器がついているカメラが多い。

手前から奥までピントを合わせる具体例
ティルトの方法にベースティルトとセンターティルトがある。
前者はティルト点がベースにあり後者は光軸にある。
また、前枠を傾ける方法と後枠を傾ける方法があって結果は同じである。
最手前でピントが合う位置(bf)と最奥でピントが合う位置(af)に焦点距離を
合わせればよいわけで、まずその距離をつかむ。
次に、バック部のベースあおりで実際にやると、
最遠部のピントを合わせ(ピントグラスの下部)最近部(ピントグラス上部)のピントが
くるまでバック部の上部を手前にティルトする。
ピント狂いの調整をしながらこれを繰り返す。
このとき、被写体のピント面の延長線と前枠の延長線と後枠の延長線が何処かで交差する
ようにイメージすると早い。即ちシャインフリュークの点(p)である。

被写体のピント面(a-b)は水平でないといけない。
富士山の天辺と手前の花にピントを合わせようとしても、中間の森はピントが外れて
しまうことがあり、「なか抜け」とよんでいる。注意したい項目である。

ピントグラスを上から覗くレフレックスファインダー(二眼レフなど)を横に寝かして
フレーミングしようとすると、目的に像が何処かに逃げてしまい、
どう傾けても戻らなくなつてしまうことがある。
ティルトとスイングを組み合わせると、そんな感じになってしまう。
ベースが傾いている場合、センターティルトでティルトしてスイングすると
スイング軸がベースに対し偏るためにゆがみが起こり、これをヨーというんです。
ヨーは例の飛行機事故でダッチロールとともに有名になつた言葉ですね。(偏揺)
ベースティルトだとスイング軸は移動しないが、前後枠の距離が犠牲になり
短い玉のフランジバックが保てない。
自分の選んだカメラだからどちらのタイプでも使いこなすことですな。
私は、ベースティルト機だが、65ミリは凹みボードにしています。
90ミリでもあおり量に制約がでます。

こうしてあおりを使用するとレンズを通して進んでくる光はピントグラスの面に対し、
必ずしも直角に進んでこなくなってしまう。
ルーペは光の筋道に向けると一番明るくみえるのだから、
レンズの方向に向けて使うわけで、ピントグラスに対し傾けて見なければならないから
ルーペフードを少しカットすることと、ピント調節機構のあるものでないと
使い物にならない。

大型カメラではレンズのイメージサークルの中であおりを使用するために、
ややもするとイメージサークルをはずれたり、瞳蝕(絞りの蹴られ)が起こったりする。
ピントグラスの四隅の切り込みはこれを確認するチェック窓である。
また、レンズのF値は小さいので、砂ずりのピントグラスは極端に暗い。
初心は上下ばっかり気にして左右のボケを見落としてしまいがち、
終わったらすべてをリジットの位置に戻す事などなど、
すべてのことに対し、細心の注意と忍耐力が要求される。
だいいち4x5は一枚撮りである。露出の失敗も許されない。成功を祈る!。