隠居さん、おせーてよNO−9 八 ご隠居さん、ついにあおりについて知りたいんでやんす。 隠 結構だね。 八 そもそもあおりの定義から。 隠 普通の写真機はレンズの軸とフィルムの中心を通る法線に対し、 レンズもフィルムも直角に配置されている。 その関係をやぶるとレンズとィルムの位置関係はぐにゃぐにゃ になる。 熊 蛸みたいな奴がアオリ?。 隠 煽るとは、団扇で風を起し火を余計燃えるようにすることで、 平板状の一軸を中心に回転させることだから、シフトは 厳密にいうと煽りではない。 熊 するとスイングだけが煽り。 隠 左様。区別して考えたほうが解りやすい。 シフトはボード移動。 ボードを左右に移動する事をシフトといい、上下をラ イズ/フォールという。 ムーブメントが煽り。 ボードを左右にしゃくる事をスイングといい、上下を ティルトという。 もちろんフロントがレンズボード、ピントボードがバックである。 熊 理解しなければならないことは。 隠 シャインシュリークの法則。オルソスコーピーの法則。 チーフレイの法則。 この辺りになると黒板が無いと…。 絵でないと言葉ではいいにくい。 八 あんちょこ本でも買いますか。 隠 知ってりゃいい写真が撮れるって訳じゃないが。 すくなくてもシャインシリュークは知らないとピント合わせに 時間がかかる。 八 いよいよ理屈が出てきた。 隠 アオリとあおり効果も別けて考えた方がいい。 あおりの効果には、フォーカスの因子と形状の因子がある。 ボード移動の効果は、フレームの因子とイメージサークルの 調整とアオリ効果。 八 シフトでも煽りの効果がある?。 隠 だから別けて考えた方がいい。 フォーカスの因子はシャープな範囲をコントロールする。 普通ではピントの合う範囲は平面に対して一平面で在り、 絞りによる被写界深度以外の面はぼけてしまう。 しかし、 一平面でもあおりによって自由に設定できる。 手前から奥までピントがあっている写真を見た事があるじゃろ、 あれが煽りでできる。 形状の因子、これは煽るとレンズに近い側がのびてしまう。 逆用すればパースペクティブの演出、すなわち効果になる。 大きさをコントロールすることが出来るし、 デフォルメの効果もだせる。 フレームの因子は文字どおりフレームのコントロール。 カガミの正面にカメラを据えれば、当然自分が写ってしまう。 真正面からカメラをはずして正面に構えればフレームから外れる。 これをシフトしてやるとフレームに入ってくる。 カメラをしゃくりあげると建物などは、うわすぼまりに なってしまう。 これも垂直に設定してライズしてやれば防げる。 熊 シフトは理屈のイメージが掴めるから使い方も何となく出来そうな 気がしやすが、アオリは設定が掴めない。 隠 アオリのシャープな範囲を得るための設定は、レンズボードの面と フィルム面、ピントを合わせたい面を延長すると1点に収束する。 それがシャインシュリークの法則。 先ず、写したい面を考えたら、それを延長しレンズボードの面を 延長し、交わる点を延長してピントボードの面とする。 そうすれば縦のパンフォーカスは得られる。 実際の操作はベース煽りとセンター煽りによって違ってくるが、 リジットで近点をティルトラインにピントをあわせ、 遠点を天にピントが合うようにティルトしてゆけばOK。 隠 注意しなければならない事は「中抜け」といってるが、 写す面が立体だとつい手前と奥を結んで、面としてしまう。 当然、面でない部分はアウトフォーカスになってしまう。 八 富士山の天辺と手前のコスモスをがはっきり写っているのに 中間の林がボケてる写真を見た事がある。 隠 それが中抜け。 八 対策は?。 隠 被写界深度に入れるしかない。 写る面とフィルム面が平行でなくても、三角形の相似形で 被写界深度は存在する。 八 なれるまで大変だ。 隠 むしろなれなければならん。 熊 普通のカメラがあれだけレンズとフィルムの平行に対して、 精密に厳密になっているのに、わざわざその関係を壊すのは、 よくよくの効果が在るって事?。 隠 普通の写真機のレンズはその写真機に使われるフィルムの 範囲で精度を出しているから、取付け精度の影響を受けてしまう。 大型のレンズはフィルム面積の何倍ものイメージサークルがある。 八 …。 隠 レンズの良好に写せる範囲をイメージサークルというがアオリは イメージサークルの中心から外したところをわざと使うわけだ。 そこにあおりの効果が存在する。 熊 イメージサークルの小さいレンズを使ったらアオリは使えない?。 隠 その通り。 隠 35ミリのレンズでたとえシフトしたとしてもダメじゃ。 4×5インチのイメージサークルしかないレンズを8×10インチ に使うと、ニュートラルの位置でも丸くケラれてしまう。 八 イメージサークルの広いレンズは高い?。 隠 普通はイメージサークルが小さくても明るさが稼げる ガウスタイプ等を使うが、大型では暗くてもイメージサークルの 広くとれるオルソメタタイブ等を使う。 イメージサークルが広くて明るいレンズは理屈ではできても、 そんなに大きなシャッターが作れない。 熊 そう言えば、大型のレンズはみんなシャッターつき。 隠 シャッターは0番、1番、2番とレンズとは別の メーカーが作っている。 0番は1/500、1番は1/400、 2番は1/125が最高速。 熊 レンズシャッターは高速度が作れない。 隠 それでもストロボが全速度同調するメリットもある。 八 大型は中間シャッターが使えないとか、1秒以上が無いとか、 とかく不便だ。 隠 その位の事はカバー出来る技量の持ち主デナイト 使う資格がないと思え。 まあ大型でも、ジナー何ぞにはTTLスポット測光システムと 自由全速度のシャッターシステムがある。 スタジオで使う前提が多いから、何でもあると言って良い。 シャッターとレンズは別メーカーが担当する。 八 例えば?。 隠 ドイツではコンパー、プロンター、日本ではコパル。 熊 絞りがf45とか64など小さくなっているのはなぜ。 隠 回折現象の影響が少ないオルソメタタイプなどが使われている。 前玉と後玉に別けてシャッターに捩じ込む構造になっている。 熊 長いレンズが無いときは前玉をはずして倍にする?って きいたことがある。 隠 対象型だから半分でも写る。欠点はガウスタイプのように、 明るいレンズができない。 熊 ピントガラスは見にくいですな。なんとかなりませんか。 隠 フレネルをつけると長焦点では明るいが煽ると見えなく なってしまう。 光線の方向にルーペをむけるのがこつ。 八 こんど撮影会でもやって実践でおせーてもらわないと、 覚え切れない。 隠 やれやれ。 熊 今度の撮影会でどうですか。 隠 じゃ、カメラ用意しておいで。
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