隠居さん、おせーてよNo.5 八 ご隠居さん、接写って難しいですねえ。 隠 そーかい。やって見たのかい。 八 接写リングに広角レンズをリバースアダプターをつかって 逆向きにつけるのが一番だっていうから、マクロレンズを 買う前に、試して見ようとやったんですがね。 隠 それで。 八 半分ぐらいは露出の失敗、あとの半分はボケボケ写真。 隠 その方法だと倍率で2倍ぐらいになる。 深度は極端に浅いうえに、しかも露出はオートでなくなる。 失敗しない方が珍しい。 熊 接写の極意を授けて下され。 隠 接写には文書などの複写と生物などの接写があり、更に顕微鏡 写真なども含まれる。 一筋縄には行かないが、原理はおなじ事、ちょっとた注意が 必要になる。機材は別として…。 八 へいへい。 隠 複写はカメラのセッティングが最も大切となる。文書の中心に 直角となるようにレンズの法線をセッティングしないと歪みと 片ボケに悩まされる。 ピントは中心にあわせ、四隅に目を凝らしてボケがないようにする。 当然照明ムラがあってはならない。45度の両側から等量の光源 で照明し、入射式で露出を決定し、中央部と四隅の差を少なくする。 接写の場合もおんなじなんだが、形のゆがみとか片ぼけは見定め にくい。 照明はフラットになるのを防ぐ為に左右等量でなく、主光源と 副光源の設定をする。 ま、こんな所が注意点か。 隠 標準レンズで正方向に接写リングをつけ、TTL露出を利かして 接写すれば0.5倍くらいの接写となり、旨くいったはず なんじゃが、欲張りすぎたか。 八 雑誌の記事を鵜呑みにしたもんで。 隠 接写のポイントは深度が浅くなるから、どこにピンを置くか はっきり決める事。 花なら、雌しべとかキャッチアイとなる部分、虫なら目にきちんと 合わせる。 ガッチリと三脚を固定して、ブレないようにしないとシャッターを 押すまでの間にいどあしている事だってある。何回も確認する事。 息だってしない方が良い。 熊 深度を深くしようとするとシャッター速度が長くなり、ブレてしまう。 隠 風があるヨウでも一瞬止まることがあるから、辛抱強く待つことも 必要。 衝立などで風をよける工夫もある。ビニールの安い傘もいい。 八 アマリ絞るとバックが汚くなる。 隠 鋭くなったな。バックはぼかしても汚い事が多いから、 逆光気味にしてぼかすとか単調な壁や水面などを選ぶことも テクニックとして必要になってくる。 八 ピント合わせも難しい。 隠 スプリットイメージやマイクロプリズムだとかえって合わせにくい。 オートフォーカスも機械がジーコジーコやってるのは難しいからだろ。 マツトであわせるのが一番いいような気がするが、なれもあるしな。 顕微鏡などでは十字マットもある。 ファインダーの倍率をあげるルーペもある。 熊 ますます難しい。 隠 レンズを逆様にするのは、照明がしやすいからと倍率を稼げる からなのだが、露出がオートでくなるのでマニュルで測定して セットし直す必要が生ずる。ベローズでも同じ事。 八 要するに?。 隠 こつのこつをおせーろてしんぜよう。 (1)フォーカスを合わせるのではなく、被写体とレンズの距離を 可変する気持ちでピント合わせをする。倍率を意識する為に。 (2)対象を大きく(画面一杯に)する気持ちでフレーミングする。 大きくみえるからつい小さくしてしまう。 (3)深度はミリ単位、1点にしかあわない。面でピントがあう 様なフレーミングを心掛ける。 (4)ワーキングディスタンスが狭いから照明は手暗がりとなる。 レフ板などの補助光の工夫をする。ドーナツレフ、レンズ 下部のレフ等。 (5)風避けにビニール傘などの工夫をする。 (6)シャッター押す前にもう一度ピントとフレーミングの確認を する。 カメラの自重や風で動く。 (7)最後に風のないことをみきわめて、ブレの治まるタイミング で押す。 熊 なかなかできない事。 隠 まあまあ、その気になってあたればそんなに失敗はせんだろう。 熊 ストロボ使う場合は。 隠 TTLストロボで楽になった。 むかしは大変だった。素人には撮れない分野であったが。 TTLストロボってやつは凄いやつだ。 レンズを通して適性の光量になったら、中止指令を出して ストロボの光をカットしてしまう。 こんな芸当が撮影中にやってのけるんだから。 専用ストロボぐらい安いもんだ。 八 これでかなり深度の深い接写が可能になる。 隠 リングストロボってやつが最適。ただ文献の複写にはむかない。 熊 ソレでマクロレンズは何を選ぶべきか。 隠 だから、マクロレンズなんかいらない。 ベロースがあれば5〜6倍までのクローズアップは完璧。 しいていえばリングストロボがあれば良い。 八 じゃマクロレンズは何の為に?。 隠 ベロースをフィールドに持ち歩くのは大変だから、等倍まで だったら横着ができる。 熊 じゃ、横着者のあっしにゃもってこい。 隠 なにしろ面頭くせーの嫌いだからな。 最近マクロで花を綺麗にとってる人が多いから、 100ミリマクロ1本をお勧めだね。 八 大型でとるのも同じですかい。 隠 そうとも。 ただベローズなんかベラ棒に重くなるしTTLストロボ なんぞ無い大型では接写は大変だ。 八 どう?。 隠 みんな頭で考えにゃならん。 でも、倍率による露出倍数だけ原理を知っとけば、 後はまったく35と同じ。恐れるにはたらん。 熊 …。 隠 倍率はジャバラの延長で計算するか、簡単には物差し 1本置いて測れば良い。 熊 カルメットスケールってやつ。 隠 そう。 熊 ありがとうござんした。 隠 じゃまたあしたおいで。
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