八っあん熊さんのカメラ教室02

ご隠居さん、おせーてよNo.2
 
八 ご隠居さん、聞いて下さいよ。
隠 八つぁん熊さん、そろってどうしたい。
熊 こないだご隠居さんから、しこたま基本談義を聞いたし、
    まあ、これで写真は完璧とおもって撮影に出掛けたんでさ。
隠 どおだったい。
八 それが…。まったく駄目でごさんした。

隠 どれどれみせてご覧。
  八つぁんこりゃ、チョと酷いな。
  折角の桜の花が真っ白け。そのかわり幹は苔が生えている
    所まで良く写っている。
  熊さんのは。
  こっちゃはボタンの花が薄暗い。

熊 三脚使って絞り優先のAEで、おそわった通りにやったんすが、
    どこがおかしいんすかね。
隠 ん。
  じゃ、今日は露出補正の話をしょう。
  実はな、最新式のカメラは大抵の写真だったらうまく
    撮れるんだが。例外もある。
  八っぁんも熊さんも、いろんな優秀の作品を見ている
    ものだから、いきなり難しい被写体を選んでしまった訳だ。
    八つぁんのは逆光といってな…。カメラ任せだとちょっと具合が悪い。

八 …。
隠 熊さんのは露出不足で…。この場合もカメラは無能力だ。
熊 …。
隠 そもそも、カメラの自動露出つってえやつは、撮っているものが
    白い花だろうが、黒い幹だろうがしっちゃいない。
  レンズを通して入ってきた光の量を計って、写そうとしているものは
    灰色であると勝手に決めてしまう。
  ま、灰色と言っても正確には18%の反射率の灰色だが。

八 どうして18%なんで。
隠 戦時中、戦闘服の色をもっとも目立たない色にするってんで、
    全部絵の具をまぜ合わせたら、あの汚い国防色ができたてえ話を
    聞いたが(嘘かもしれねえが)、いろんなものの反射率を平均す
  ると18%になる。
  だから、この灰色に近い反射率をもつ物体なら、綺麗に撮れる
    こと請け合い。

  八つぁんのは画面の中で桜の花の面積が小さいから、カメラは
    面積の木の幹に露出を合わせてしまった。
  幹は18%の反射率に近いからうまく写っているが、
    桜の花は反射率が高いので白くとんでしまったと言う訳じゃ。
  熊さんのは画面で大部分をしめている白い花を、カメラは灰色と
    勘違いしたから暗くなってしまった。

熊 じゃどうすりゃいいんで。
隠 露出補正…。
  八つぁんのはマイナスに補正してやる。
  熊さんのはプラスに補正してやる。
  極端な話、闇夜のカラスを撮っても真っ黒ではなく、
    灰色になってしまうし、雪の上の白ウサギを撮っても真っ白には
    ならずこれも灰色になってしまう。
  カラスが灰色になるのはオーバーなのだからマイナスに補正する。
  兎が灰色になるのはアンダーなのだからプラスに補正する。
八 頭がこんがらがってきやがった。

熊 どのくれえ補正すれば良いんで?。
隠 その辺が経験則。すパットはいかない。
    わしだって昔はアンチョコ書いてもっていもんよ。
八 それをおせーてくだされ。
隠 あくまでも目安じゃよ。
  それに落とし穴もある…。
熊 …。

隠   雪山  +2〜3       赤い花 −1/3
   白い花 +1/2〜1     黒猫  −1/2〜1
   滝   +1/3〜1/3
   逆光  +1〜2
   白雲  +2〜3

八 よし、これを持ってりゃ百人力。今度こそ傑作をとってやる。

隠 まあ、まちなってんだ。この話には落とし穴があると言ってる
    じゃないか。
八 落とし穴ってえのは。
隠 撮りたいもの、言わば主役じゃが、撮りたいものが適正な
    露出になったとしても、画面にはいろんなものが写ってしまう
    訳で、それらが全部適正な露出になるとは限らない。
  適正露出の範囲は+−0.5EVの範囲でしかない訳だ。
    どうにか再現できる範囲は露出値で5倍、すなわち5EVと
    言われる。
    つぶやき(もっともネガならもっと広いが…ょ)

熊 どうするんで。
隠 背景などに明るい部分があると目障りだし、暗い部分が多いと
    画面が重くなってしう。 
  5EVの範囲に入る被写体を選べば良い訳じゃが。
  暗い部分は銀レフなんかで採光してやるのも一方法。
    銀レフでなくたって白い紙でもある物を使えばいい。

八 越える場合は。
隠 ローキーかハイキーフォトにする。
  意識してローキーかハイキーにすれば又、道は開けると言うもの。

  暗いバックに黒光りする桜の皮が鈍く光り、幾つかの桜の花が
    浮かび上がっている。
  ローキーな写真の代表みたいなもの、かえって目をひく構成じゃよ。
  アンダー過ぎて潰してしまうのも、白く飛ばしてしまうのも
    画面整理の一つ、引き算の内と考えれば良い訳じゃ。

熊 ハイキーにする為には露出補正はどうすれば良いのんで。
隠 暗い部分でどうしても出したい明るさを基準に測定し、
    そこから2・2/3段増した所で露出する。      
  そうすれば残り2・1/3を越える明るさはすべて白くとんで
    しまうから、スポット露出計で確認もできるってえ寸法よ。
八 じゃローキーはその反対。

隠 さすがに勘がよくなった。
熊 スポットメーターが必要…。
隠 最近はカメラでスポット露出も計れるものが多くなったのは、
    必要だからじゃ。
  ついてるものは使わにゃ損々。
  使っていれば、いちいち計らなくても勘が働くようにもなって
    くるってもんじゃ。

八 ハイキーやローキーにしたくないのに、空をいれると嫌でも
    半々になってしまうの、何とかならんもんで。
隠 山並み、地平線ならハーフNDフィルターを使う手もあるんじゃが、
    慣れんと…。
  プレ露光とゆう奥の手も…。この辺はいわん方が…。混乱したら困る。
  ま、ハーフNDフィルターはスクエアフィルターの足掛かりとして
    使ってみるのもよかろう。
  4倍、8倍があるのと、境目が急なものと緩いものがある。

熊 フィルターは後でもう一回おさらいし直したい。こんがらがってきた。
八 先ず、露出を正確にするこってすな。

隠 そうさっちょこばらずに、オートブラッケティング。
    心配だったら露出を替えて何枚
  も撮っとくことよ。
  チャンスにはフィルムなんかけちけちしないことよ。
  同じチャンスは二度と来ないと思った方がいい。
熊 宵越しの金とフィルムはのこさねえ。

熊 ありがとうござんした。
隠 じゃまたあした。