※ 『ドリル』を読まれる前にご注意
当サイト内にある未来ねつ造系大人アルエドテキストとは設定が異なります。
兄弟は赤の他人
兄→サラリーマン 弟→サービス業
話の舞台は現代日本(但しキャラクターの名前はそのまんま横文字;)
下品
風俗系(もどき)用語アリ
以上の点を全て御了承下さった方のみどうぞ。
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ドリル |
その日、俺は尋常じゃなく疲れていた。 外神田にある本社内のデスクで、俺は朝から殆ど休憩なしで受話器を肩と顎の間に挟みながらパソコンと書類相手に格闘していたのだが、夕方の終業間際になって札幌の取引先から苦情の電話が寄越されたのだ。『今日中に必着と言っていたサンプルが届いていない』という。それならば一昨昨日既に発送済みの筈だと答えれば、届いたのは緩衝材入りの空箱で肝心のサンプルが入っていないと金切り声が俺の鼓膜に突き刺さった。 もう今年もあとひと月で終わろうかというのに、いまだに使えない社会人一年目の俺の部下がまたしてもやってくれたようだ。 通常通りの業務をこなした後、俺はその使えない部下の首根っことサンプルを引っつかんで札幌に飛んだ。
直接会ってみれば取引先の部長は殆ど怒りを収めていて、俺は内心ホッとしながらも空港で買った間に合わせの菓子折りを恭しく差し出し、米搗きバッタよろしくクラクラするほど何度も頭を下げつつ取引先の会社を後にした。 東京行きの便はまだあったが、飛行機に乗ってあちらに着いたところで自宅まで辿りつく電車がない時間だったから、駅近くのビジネスホテルに部屋を取り明日の朝一で東京に戻る事にし、部下だけを先に東京へ帰した。
ビジネスホテルと言ってもそれほど殺風景ではなく、暖かい雰囲気の小奇麗な部屋だった事が俺の下降気味だった気分を幾分回復させた。まだ眠るには早い時間ではあるが、今日のところはシャワーでも浴びてさっさと寝てしまおうと軽く身体を流した俺が濡れた髪を拭きながらベッドに戻ると、サイドテーブルの上の携帯が無言のままライトを点滅させている。見れば、今しがた東京行きの飛行機に乗ったはずの使えない部下からのメールだった。誤変換満載の下手くそな日本語でつづられた暗号を読めば、今日の侘びと疲れているだろうから部屋にマッサージの人間を呼んでおいたという内容だった。代金は部下が前金で全額払い済みだという。 「アイツにしちゃあ、気が利いてんじゃねぇの?」 ふん、と笑いながら携帯を枕元に放り投げると同時に部屋のドアをノックする音がした。
「失礼いたします。私、トリンガム様からご依頼を受けました・・・」
ドアを開けた俺は来訪者の顔を殆ど確認しないまま部屋の奥に踵を返し、相手の言葉もろくに聞かずに返事をした。このことが、あとで死ぬほど後悔する原因になるとも知らずに。 「ああ、ああ。聞いてるよ。ワリィけどさ、今日は疲れてっから俺、途中で寝ちまうかも知んねぇんだ。そしたら途中でも帰ってくれてオッケーだからさ」 「はぁ・・・・・、それは・・・・相当ご経験を積んでいらっしゃるのですね」 「あ?」 経験?マッサージを頼むのに経験も何もねぇだろうと思ったが、まあいい。要は俺のこの重苦しい身体の疲れが取れればいいのだ。疑問を放置したままベッドにうつ伏せになろうとする俺をその来訪者の長い腕がさり気なく止め、商売道具が入っているらしいデカい黒革の鞄から取り出した厚手のバスタオルをシーツの上にばさりと広げた。 「さあ、どうぞ?」 そこで初めて俺はそいつを見上げた。 短く清潔そうに切りそろえた金髪に、神経質な印象のシルバーフレームの眼鏡。上背のある細身の身体は隙なくスーツで固められ・・・・・・・ん?マッサージの人間がスーツ姿って・・・・・・なんなのソレ? 「あの・・・・アンタさ、まさかその恰好のままするわけ?」 「いえ、もしよろしければハンガーなどお貸しいただけると非常に有り難いですね」 ニコリと笑いかけられ、思わずドキリとたじろいだ。 よくよく見ればこのマッサージ師は、恐ろしいほど整った造作をした男なのだった。 『美青年』というが、それはコイツの為にこそある言葉だったんだとヘンに感心してしまった俺だ。
その美青年は脱いだスーツの上着と解いたネクタイをハンガーにかけ、シャツの手首のボタンを外して袖を捲くり、現れた腕時計を外し・・・・。
そんな無駄のない一連の動作をベッドで横になりながら見ていた俺は、ふと妙な気分になった。
だってさ、だってさ、この状況ってアレじゃね?エッチする前のオンナ側からの目線じゃね?
そんな馬鹿なことを考えた所為で頬に血を上らせてしまった俺は、ぼふんとシーツに顔を埋めて半分寝たふりを決め込んだ。しかし迂闊にも赤くなった耳が丸見えだった事に、この時の俺は気がついていなかった。
やがてキシ・・・・と、ベッドのスプリングが音を立てて揺れ、マッサージ師が俺の足元付近に膝を付いたらしいことが分かった。 「さあ、はじめましょうね。お言いつけ通り途中で眠った場合はそこでサービスを中断し帰らせて頂きますが、恐らくその心配はないかと思います。こんな事を申し上げるのもおこがましいですが、アナタ、僕に当たって幸運でしたよ」 何故だろう。その声はあくまでも柔らかで耳に心地良くさえあるのに、背中の中心をゾクリと悪寒に似たものが走った。俺は咄嗟に、今後ろを振り返ってそいつの表情を見てはいけない・・・・・・そんな得体の知れない恐怖に駆られていた。
このマッサージ師に揉まれ始めてから、一体どれほどの時間が経過したのだろうか。いつの間にかメインのライトが消され間接照明だけが灯る部屋の中を、俺はぼんやり見るともなしに見ていた。妖しい芳香を放つ謎のローションを体中に塗りたくられ、つま先から耳朶まで満遍なくマッサージされた俺に、最早時間の感覚はない。 「ああ・・・・・こんなに硬くなって・・・もう少し力を抜いてくださいませんか?」 何故このマッサージ師は、わざわざ耳の後ろで囁くように話すのか。そして何故俺は、ホテルに備え付けのバスローブどころかパンツまで脱がされ、無様に生まれたままの姿を晒しているのか。 「は・・・・・・んアッ、そこ・・・・・ちょ・・・」 「この仕事に就いてからというもの、多くのお客様の体に触れてきましたが、あなたのように敏感なカラダを持つ方に出会ったのは初めてで驚きます」
俺だってマッサージ師にマッサージを受けることは何度もあったが、こんな如何わしいマッサージ師に当たったのは初めてでぶったまげてるよ!
と言いたいセリフは喉チンコのところで止まっている。声を出そうものなら、言葉の代わりに屈辱的な悲鳴を上げてしまいそうだった俺は、丹田に気を集中させてケツの穴を締め、どうにかこうにか堪えていたからだ。言いたくないが白状しよう。
・・・・・・・・・・俺は、勃っていた。
だって仕方ねぇだろ!こいつマッサージ師のくせにタマ袋まで揉みやがるんだぜ?マジありえねぇよ! しかしそう思いつつ、この男をぶん殴って部屋から追い出すという選択肢すら考えつかなかったのが、俺の敗因だった。マッサージ師の手は妖しい技でもって、俺の体のそこここを縦横無尽に揉み捲くり、撫で回し、時には吸い付き、甘噛みし・・・・・・・・・・って、へ?????? 「ふ・・・・・ナ・・・・ッ!?あ、アンタッ何だよ?ヒトの体、舐めんじゃね・・・・アアンッ・・・!」 なんだ今のエロシネマ風な声は?俺の口から出たのかッ? ワタワタと慌てふためき、マッサージの中止を宣言しようと突っ張らせた腕を支えに起き上がろうとした瞬間、さっきまでの営業用スマイルは一体どこにやったのか、どこかサディスティックでさえあるエロい表情をしたオトコが喉の奥で低く笑った。 「フフ・・・・良い声・・・・・」 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」 そして、本能的な恐怖に身を竦ませる俺の目の前にあのデカい黒革の鞄を置き、何やら中を探って謎の物体を次々取り出し始めた。 コレ、何だっけ?過去見たことがあったような気もするし、初めて見たような気もする。 「何です?珍しそうな顔をされて。まさか初めて見る訳でもないでしょうに。こちらは、ごく一般的に使用されているサイズのローターですよ」 「ふうん・・・・・何だ。そうか」 きっとこの時の俺の頭は、どっかのネジが飛んでいたんだろうと思う。 「で、こちらの大きめのサイズのものは、上級者向きですね。挿入される側にもする側にもある程度の経験がないと、オーガズムを得るのは難しいかもしれません」 「・・・・・・・・ん?ソウニュウ?」 何やら不穏な単語が出たところで、ようやく麻痺気味だった俺の中の危険回避装置が反応を示した。よくよく考えれば(いや考えなくても)これらは通常のマッサージに使用する道具ではない。俺は努めて普通っぽく、こっそり尻を浮かせて逃げの態勢を取りながら尋ねた。 「そういや俺、アンタんトコの店の名前聞いてなかったよな?」 「先ほど申し上げたのですが・・・・では、改めまして」 そこで男は胸のポケットに入れていたアルミ製のカードケースから名刺を一枚抜き取ると俺に差し出し、再びあの営業用スマイルを頬に貼り付けた。
「ドリルコーポレーションの私、代表取締役をしておりますアルフォンス・エルリックと申します」 「おお!エルリック!すんげぇ偶然だな。俺もエルリックっての!エドワード・エルリック」 待て俺、呑気に自己紹介している場合じゃねえ!このシチュエーションで『ドリル』って、マジ洒落になんねぇよ! 冷や汗でだくだくになり血の気が引いているだろう俺の顔を、慈愛に満ちた(ように装った)笑顔で覗きこんだドリルコーポレーションの社長は、仕事を始める気満々な様子だ。 「ご心配なく。『貫通後も翌朝からお客様の快便をお約束します』が当社のモットーです」 ヤベェ、こんな清々しい笑顔未だかつて見たことねえ!と思いながらも俺は叫んだ。 「そんなこと爽やかにお約束してもらわなくても俺はもともと快便だ!ほじくらんで結構!」 「そう言われましてもねぇ・・・既に料金を頂戴しておりますし、掘らせて頂けないとなると業務に支障が・・・・」 「そんな奇怪なモン片手に『掘る』ってゆーなッ!」 「ああ、コレですか?もしかしてご覧になった事がない?」 社長の手に握られている見たことのない物体に、俺の好奇心が疼いた。見たところ材質はシリコンだろうか。先端から下にいくにしたがって少しづつサイズが大きくなっていく球状のものが縦に六つ並んでいる、乳白色のその物体。 「・・・・・ねぇよ。何なんだそのだんご6兄弟みたいなの」 「あははは!上手い事言うなぁ。そう言えばそんなネーミングがぴったりですね。・・・・・・・では」 そこで、おもむろに眼鏡を外す社長の声のトーンが明らかに変わった。 「この一番小さい“長男”から、まずは馴らしていきましょうね」 「へ・・・・・・・・?」
そうして無情にも、未知の掘削作業は開始されてしまったのだった。
どこかでケータイが鳴っている。聞き覚えのない着信メロディに、俺は目を開いた。するとすぐ横では、何かデカくいて温かいものがごそごそと動く気配がする。 ・・・・・ん?昨日俺、ダチんとこに転がりこんだんだっけか? 「はい、エルリックです。・・ええ・・・・う〜ん、そうですね・・・・・午後一には会社の方に出られるかな・・・・・うん・・・・・うん、いいよ。それで頼みます。じゃ」 その男の声を聞いた事で眠気は一瞬にして吹き飛び、思い出したくもないのに脳内を駆け巡る昨夜の場景の数々に俺はリアルで泣いた。
昨夜の出来事を簡潔に説明すると、四つん這いにされ、大事な息子を扱かれ、ケツの穴に何かを塗りたくられ、指でほじくりまくられ、ローターを突っ込まれ、乳首に耐えがたい刺激を与えられつつアナルパール(だんごの正式名称だそうな)6兄弟の長男、次男、三男を・・・・・そのあたりで、俺の記憶は途切れている。
「ウッウッウッ・・・し、信じらんねぇ・・・何で出張先のビジネスホテルでこんな仕打ちを受けなきゃなんねぇんだ・・・」 そう咽び泣く俺の声は、無残なまでに嗄れていた。 「エド・・・・可愛いヒト。そんなに泣かないで。また虐めたくなってしまうよ」 昨夜のデスマス営業口調がウソのような甘ったるい囁き声が、さらに俺を奈落の底へと突き落とす。 「そんな馴れ馴れしい呼び方すんな!可愛いヒトとかキモいコト言ってんじゃねえ!っぎゃ〜〜!こっち来んなぁぁぁぁぁ!」 昨日スーツ姿でいたときは高さばかりで細身に見えていたのに、脱いでみれば鍛えている事が一目瞭然な身体が野性味溢れるタックルをかましてくる。そうなるともう、俺のカラダなんぞまるで木偶のようにされるがままだ。
「昨日この部屋のドアを開けた瞬間、僕は恋に落ちたよ。ああ・・・・こんな事って初めてだ」 ・・・俺だってこんな無体を受けるの初めてだ。 「最初は慣れてる素振りをしたくせに、ベッドに横になっただけで耳まで真っ赤にして・・・・」 ・・・勝手に俺の行動を捏造しないでくんねぇか。 「これは仕事だと何度も自分に言い聞かせてどうにか途中までは堪えていたけど・・・・ゴメンね、結局アナタを抱いてしまった」 ・・・え?抱・・・・・・?ちょっと待て。 「でも、初めてなのに、あんなに悶えて泣いてドロドロのぐちゃぐちゃになって悦ぶアナタだっていけないんだよ?僕、本気で腹上死するかと思った」 この期に及んで何という言いがかりか。俺は逆上した。 「ざけんな!オマエがわざとエロい触り方してくるからじゃねえか!あんな如何わしい揉み方するマッサージ師なんて・・・・・つか、だ、だ、抱いたって?抱いたって一体なんの冗談だ!」 「え?まさか覚えてない?そうか、あなた途中から殆ど意識が飛んでたもんね、フフッ。あのね、ウチのサービス種目は、性感マッサージと器具を使用した擬似セックスの提供までで、本番行為は含まれてないんだよね。だけどアナタがあまりにも僕の好みで素敵だったから・・・つい。でも大丈夫、責任は取るよ!僕はもうアナタ一筋だから、こんな稼業からはキッパリ足を洗って・・・・・」 一人勝手に今後の人生計画を語り出した男を放置したまま、俺の怒りの矛先はあの使えない部下に向かった。 「・・・・・・・あの野郎・・・・フレッチャー・・・・・」 歯軋りをしながら携帯のボタンを押すと、数回の呼び出し音の後、神経を逆なでするような能天気な声が聞こえてくる。 『あ!課〜長〜ぉ。お早うございます。どうでしたぁ?昨夜のマッサージ。あそこ、腕の良い整体師が揃ってるってスッゲー評判なんですよ!トリムコーポレーションったら、健康雑誌とかでもでっかく取り上げられたりしてるから、昨日みたいに急に電話してすぐにやってもらえるのって滅茶苦茶運が良い・・・・・』
ピッ。
俺は通話終了ボタンを押すと、深呼吸をした。 トリム?いや待て。この目の前の金髪の男は、もっと不吉な社名を名乗らなかったか? 「と、・・・ト、・・・トリル?ドリフ?・・・なんだっけか?」 拳を唇にあてて唸り声を上げる俺のすぐ後ろから、「ドリルコーポレーションですってば」と脂っこいような甘ったるいような声が言う。 「ドリル・・・・・トリム・・・・・・・アイツ間違えやがった・・・・ありえねぇ・・・・」 項垂れる俺の横で、男が笑う。 「ああ!よくいるんだよね。104でトリムコーポレーションって言うと、ドリルコーポレーションに聞き間違えたコミュニケーターがウチの番号を教えちゃうらしくて」 それは極めて重大な問題ではないだろうか。つか、風俗業が堂々と電話帳登録なんぞしてんじゃねえよ紛らわしい! 「でもこれをきっかけに新たな世界に目覚めてリピーターになってくれるお客さんが殆どなんだよね。お陰でウチ、結構流行ってるんだよ」 なんという末期な世の中だ。そもそも、何故俺だって直ぐに間違いに気づかなかったのか?そして途中から不審に思いつつもすっかりコイツのペースにはめられて・・・・・挙句、本当にハメられてりゃあ世話がない。
「さあ、エド。東京に戻ったら直ぐに指輪を作りにいこうね」 「は?指輪?何で?」 まったく脈絡のない単語についていけない俺の身体を引き続き抱え込みながら、ゴリゴリと暴力的な頬ずりをしてくる男の次の言葉に、俺は号泣することになる。
「昨日愛し合いながら約束したじゃない。戻ったら直ぐにマンションを引き払って僕の家に住むって。戸籍上の結婚は無理でも僕の奥さんになってくれる?って聞いたら、嬉しそうにウンって言ってくれたよね?嬉しいよエド、愛してるよ・・・・・もう一生離さないから覚悟してね」
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