※  『ある男の野望』をお読みになる前に



このお話は、キャラクターの性格、物語の背景・設定等全てがほぼオリジナルです。

兄さんはパニック障害持ちの潔癖症。アルフォンスは首相の息子で私設秘書。

その他登場する鋼キャラについても、オフィシャルでの性格を無視しています。




以上の点、ご理解いただけました方のみ、どうぞ・・・・・・・!



































ある男の野望 1

 

 









 『職業に貴賤はない』と言うが、それは嘘だと俺は思う。事実俺は、自分の親が営んでいる商売について、昔から人には決して話す事ができなかった。
 しかしながら自分は、未だ受かるかも分からない大学受験の為に追い込み勉強している一介の高校生だ。養って貰っておきながらこんな事を言うのは、とんでもない身の程知らずで親不孝なのだという自覚はある。しかし俺は将来、どうしてもコッチ系の商売とは関係のない、出来れば堅い職業に就きたいと考えていた。例えば弁護士事務所勤めとか、行政書士とか、社会保険労務士なんかでもいい。
 とにかく、今の俺をとりまく『この世界』から抜け出すためには、目の前にある『受験』という第一関門を何としてでも突破する必要があった。









 午前0時を回った狭く薄暗い事務所では、片隅にあるボロい石油ストーブの上に乗せたヤカンが蒸気を噴き出す音を延々と響かせていた。

 俺は散々書きこみをして白い部分なんて殆どない参考書を一度ふせると、コーヒーを入れる為に立ち上がり、壁に据え付けられている小さな流しの上にある戸棚に手を伸ばした。インスタントコーヒーの瓶とマグカップを取る俺の目前には曇りガラスをはめ込んだ小さな窓があり、それから射し込む妖しげなイルミネーションの光がチカチカと疲れた眼を刺激した。

 ここは、繁華街のど真ん中にあるラブホテルの事務所だ。俺の親は、こういったホテルや如何わしいパブなんかを数店舗持つ会社を経営しているのだ。そして俺が何故にこんな時間にこんなところで受験勉強をしているのかと言えば、それは養われている者の義務、『家業の手伝い』の為だった。

 

 

 

 事務机の上にあるビジネスホンの赤い内線ランプが点滅を始め、それにやや遅れるように耳障りな電子音が響く。うんざりした気持ちでコーヒーが入ったマグカップ片手に受話器を取れば案の定、フロント係のシン国人留学生アルバイト、リン・ヤオの軽薄そうな声が聞こえる。

 

 「あ、坊ちゃん。505から御呼びだってサ〜。流石に今日の出足はちょっと早めダネェ。ボクの予想だと多分この後立て続けに3件くらい入りそうだヨ。ヨロシクお願いしますネ〜〜」

 

 「・・・・・了解」

 

 こんなラブホテルばかりを何店舗もやってる会社の社長の息子に『坊ちゃん』もないからその呼び名は止めるように言ってもまったく聞き入れないリン・ヤオの『読み』は、大抵いつも正しい。

さらにうんざりしながら受話器を置いた俺は、スチール製のロッカーからデカイ衣装バッグを取り出すと505号と書かれたタグがついた鍵を手に事務所を後にした。

 

 

 俺の仕事は、和服で来たホテルの利用客の帰り際に着物を着せる事だった。特に今日のような『成人の日』や年始には、受験勉強などする暇がないくらい大忙しだ。

 

 

 クソ重たい衣装ケースを半ば引きずるように嫌々ながらも辿りついた505号室の部屋のドアの前。ゴンゴンと、少し無遠慮なくらい強くドアを叩くのは、コトが済んだ後の客がまた再び盛って始めてしまっている事がまれにあるからだ。そんな場面にウッカリ踏み込んで結合シーンを見せられるなんて、はっきり言って大枚貰っても御免だった。

 

 「どうぞ、お願いします」

 

 こんな場に不似合いなほど、妙に事務的な冷たい男の声が聞こえた。俺は鍵穴に鍵を差し込みドアを開けると、出来るだけ余計なものを見ないように気を付けながら薄暗い照明の部屋を奥へと進む。

 

 覚悟していて慣れているとはいえ、独特の空気が充満する生々しい事後の場に踏み込む気持ち悪さを仏頂面の下に隠しながら、シャワーから出てきたばかりでタオルだけを巻いた女に軽く会釈し、手早く衣装ケースを広げた。

 

 「・・・・肌襦袢はご自分で着ていただけますか。羽織って軽く前を合わせるだけでいいので」

 

 「え・・・・・男の子・・・・?」

 

 俺の声を聞いた途端、驚いた表情でタオルを巻いた胸元を手で隠すようにしながら女が言った。

 

 言いたくはないが標準より小柄な上、男っぽいとは言えない顔つきをしている俺は髪を長く伸ばしている事もあり、声を出さなければ女に間違われることが頻繁にあった。普段からそんな自分に辟易していた俺だが、本意でないとはいえこの仕事の際には逆に『相手に抵抗感を与えない』この外見が役立っていることを、少なからず便利だと思っている。

 

 「ええ。ですから、肌襦袢と裾よけまではご自分でなさってください。お客様のお着物はこちらですね?帯の結び方は何かご希望がありますか」

 

 モジモジしだした女に構わず、一方的に肌襦袢と裾よけを押しつけると、俺は背を向けてソファの背にぞんざいに掛けてあった趣味の悪い辻が花と使い込まれている様子の全くないゴワゴワと扱いづらい袋帯を、作業しやすいように畳む。

 

 「君、高校生?こんなところでアルバイトかい?」

 

 その声に目をあげれば、先ほど部屋の外で聞いた冷たい印象の声の主かと疑いたくなるような柔らかな表情を浮かべた若い男が、ソファに座っていた。

 

 まだ髪も濡れて殆ど裸同然の状態でいる女とは対照的に、まるで情事の後とは思えない清潔さを漂わせた男の様子に俺は違和感を覚えた。グレイの艶のある少し見ただけでオーダーメイドの高級品だと分かるスーツに、きっちりと結ばれた品の良いネクタイ。歳は二十歳そこそこといった頃だろうか。サラリーマンにしては妙な貫禄があり、かといってそっちの筋の人間というにはあまりにも品があり過ぎた。短く整えられた金髪に、聡明で怜悧な光を放つ金の瞳。それでいて同時に優しげな印象も受ける恐ろしく整った顔立ちは、一度見てしまうと目を逸らすことを忘れて魅入ってしまいそうだ。ソファの背もたれにゆったりと背中を預けて優雅に長い足を組むその物腰は、俺がこれまで殆ど接した事などない上流階級の人間が持つものだった。

 

 着付け師とはいえ場所が場所だけに妙な勘違いをする客も多くいて、同伴した相手も交えての3Pに誘われたり、自分達のセックスを横で見ていて欲しいと懇願されたり、下手をすると『一回の値段』を交渉されることもあった。まさかこの男がそんな連中と同じ事を言い出すとは思えなかったが、俺は極力自分へ興味を持たれないようにする為に視線を落とし、熱心に作業の準備をする振りをしながらそっけなく答えた。

 

 「ええ・・・・まぁ・・・・そんなトコです」

 

 ようやっと肌襦袢と裾よけを着け終わった女に、用意していた長襦袢から着せ始める。成人式で初めて和装をしたらしく、全く着せられる事に慣れていない様子だったから、やり辛さに内心舌打ちをしつつ、出来るだけ相手の身体に接触しないように手早く着せていく。しかしその間中、男の視線が絡みつくように自分に向けられているような気がして、俺は居心地悪さに妙な汗をかいた。

 

 凝ったアレンジはせずに定番の立矢結びで帯揚げ帯締めをすると、俺はさっさと衣装ケースに紐やクリップなどをしまい、軽く会釈をして部屋を出ようとドアへと向かった。

 

 「あ、待って、君。少し・・・・いいかな?」

 

 まさか声をかけられるとは思わなかったから、俺はいつもの仏頂面を崩して驚いた表情で振り返ってしまった。

 

 「な・・・・んでしょう?」

 

 ところが男は俺に何か用があって呼びとめたのでは無かったらしく、困ったように笑いながら先の言葉を濁していた。

 

 「ええと・・・・・そのー・・・・・困ったな。ごめんね、忙しいのに」

 

 「・・・・・・はぁ・・・・・」

 

 「ただね、男の子が着付けできるなんて凄いなぁと、思ってね。それも手品みたいに目の前で瞬く間に着せていくでしょう。本当に感心したよ。この仕事は長いのかな・・・・って、君くらいの年じゃそんなに年数積んでる訳もないか」

 

 殆どひとりごと状態で熱心に話しかけてくる男の後ろでは、女があからさまに面白くなさ気な表情を作っていた。別に客同士のあれこれを取り持つ義務などないが、出来ればこの店の中でゴタゴタは避けたかった俺は、滅多に出さない必殺の営業用スマイルを炸裂させた。

 

 「お客様。間もなくご利用時間が終了となるようですよ。またのお越しをお待ちしております。ありがとうございました!!」

 

 言うなり踵を返しロックを外した状態にしていたドアから足早に部屋を出、従業員用のエレベーターへと向かう俺の耳に、まだ何か言ってくる男の声とそれに重なるように女の金切り声も聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 事務所へと戻りながら、何となく今の客の事を考える。

 

 やたらと綺麗な男だった。立ってみるとかなりの上背もあったし、何よりそこらの人間にはない品格が漂っていた。それに比べて一緒にいた女は、どう見繕っても十人並みか、もしくはそれよりもやや劣るレベルだった。立ち居振る舞いや言葉使いにも、特に性格が良いという印象も受けなかった。

 

 「まあ、オンナの趣味なんざ人それぞれだもんな」

 

 一度会ったきりの客の事などどうでもいいさ、と事務所のドアを開けた途端鳴りだした内線の音に、俺の頭からその客の事は綺麗サッパリ消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 「坊ちゃん、今日はホント大変だったネ〜〜〜!12時間で28人も着せたヨ!お疲れサマー」

 

 相変わらずヘラヘラと掴みどころのない薄ら笑いを浮かべて馴れ馴れしく俺の肩を揉んでくるリン・ヤオの手を乱暴な仕草で撥ね除け、事務所の机にぐったりと突っ伏した。父親が経営するホテルや妖しいパブは全店舗がこの界隈にあるのだが、自宅は当然ごく普通の住宅街にある。しかしそれが電車で帰るとなると乗り換え有りの駅から徒歩20分という『陸の孤島』とも言える場所なのだ。俺は昨夜からこの正午まで完全なる徹夜での連続労働で、その上頻繁にかかる『御呼び』の度にクソ重たい衣装ケースを引きずりながらこのホテルの中だけでは飽き足らず、数件離れた別のホテルにも度々行かなければならなかった。受験勉強どころかゆっくり座る暇もなく、まるでボロ雑巾のようになっていた俺は、この状態ではとても家へとたどり着く事は不可能と判断し、ひとまず近隣の比較的『安全な』カプセルホテルで仮眠でもしようかとよろめきながら立ち上がった。

 

 「あ、坊ちゃん。カプセルホテルとかネカフェ行くなら、丁度801号室のジャグジーが故障してるから使用不可になってるヨ!ソコで寝たらドウ?」

 

 見も知らぬ男女があさましく汚らわしい行為に耽ったベッドで眠るなんて普段の俺ならば絶対にしないのだが、如何せん、今日の俺は疲れ過ぎていた。大体これ以上迷っていれば、そのカプセルホテルやネットカフェに辿りつく体力さえも費えてしまいそうだ。ふと目を走らせたこの事務所の冷たく堅い床で横になるという勇気ある決断も出来ず、不本意ながらリン・ヤオの進言に大人しく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 実のところ用途がいまいち分からない奇怪な形状のイスを横目に熱いシャワーをザブザブと浴びた後、着替えの服や下着の事をすっかり失念していた俺はわずかに逡巡したものの、仕方なく下着を着けずに備え付けのバスローブだけを着てベッドに倒れこんだ。

 

 いつもなら如何わしさを演出するだけの不潔な薄暗い照明が、今の俺には逆に心地よくさえあった。トロトロと強烈な眠りに引き込まれながら、施錠した筈のドアが開く音を聞いた。リン・ヤオが追加の『御呼び』を知らせに来たのだろうか?しかしどの道この状態では、俺に出来る事など何もないから、そのまま気にせず睡魔に身を任せていたのだが、やがて身体が持ち上げられるような浮遊感を覚えた後、下に敷きこんでいた薄手の羽毛布団がふわりと掛けられた。

 

 「疲れてるんだね、エドワード。それにこんなに冷え切って・・・・可哀想に。僕が温めてあげるよ、可愛い人・・・・」

 

 聞いたことがあるような無いような・・・・・ただ、とてつもなく心地良い声が柔らかく耳朶を掠め、大きく温かな何かが俺の全身を包み込んだ。きっと夢でも見ているんだろうと、そのまま温もりを求めて身体を擦り寄せ、俺は瞬く間に意識を手放した。

 

 

 

 

 




 

 

 なにやら荘厳でいて、しかし不思議に心地良いどこか耳慣れた気もするフレーズに呼び覚まされるように、意識が浮上する。

 

 慣れない感触のシーツに、やたらとスプリングのきいたベッド。そして今の時間が全く分からない、人工的な薄暗い照明だけを光源にする部屋。

 

 「・・・・・ん・・・・・」

 

 身動ぎして一度深く息を吸い込むと、それまで密着していた温もりに更に擦り寄って抱きついた。

 

 るーるーるーるーるーるーるー・・・・るーるーるーるる、るーるーるーる、るーるーるー・・・・・・・・

 

 抱きついた温もりから直接耳に伝わる旋律が、俺の頭がい骨をまんま震わせて脳髄を刺激した。

 

 ええと・・・・・なんだっけ、この曲。スゲー良く知ってんだけど、逆に知り過ぎてて何の歌だったのか直ぐに出てこねぇ・・・・。

 

 るーるーるー・・・るーるーるーるーるぅー・・・る、るー・・・・・・

 

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、キミガヨ」

 

 「うん。起きた?エド」

 

 国歌の鼻歌で目が覚めるなんて、なんてオツな事だろうか。

 

 「・・・・・っていうか・・・・なんでアンタがここに・・・・」

 

 一人で寝ていた筈が、何故男の身体に身を寄せるようにして目を覚まさなければならないのかと、俺は純粋に疑問を抱いた。しかもコイツは、昨夜一番最初の『御呼び』がかかった部屋にいた、あの金髪の男ではないか。

寝起きの腑抜けた状態でまだ動揺するにも至らない俺を尻目に、男はにっこりと優雅な笑顔を作った。

 

 「あ、どうも、お邪魔してます。ええと、実は私こういう者です」

 

 俺と同じくホテルに備え付けのバスローブを着ている男はおもむろに起き上がって、どこからか取り出した名刺を差し出してきた。

 

 「・・・・『民民自由党党首  第108代内閣総理大臣 ヴァン・ホーエンハイム 私設第一秘書 アルフォンス・ホーエンハイム』」

 

 アホの子のように、俺は名刺の文字を読みあげた。

 

 「うん。良ければ『アル』って呼んで?よろしくね、エド」

 

 「あ・・・・どうも、こちらこそ・・・・」

 

 俺の脳はすっかりテンパっていた。何しろ疲労困憊で寝不足な上、国歌で目を覚ますという未だかつてないシュールな事態・・・・・いや、それよりも。あの上流階級っぽい金髪男がいきなり俺の横にいて、デカイ身体にサイズの合わないウチのホテルのバスローブを頑張って着ていて、名刺を見れば最近この国の首相になったヴァン・ホーエンハイムの私設第一秘書で・・・・・・あ、それにコイツ、頭の左側のてっぺんに少し寝癖がついてるし。

 依然にっこりしている男と見合ったまま、暫し沈黙が続く。しかしやがて俺の脳が本格的に覚醒を始めた。

 

 「ッぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!な・・・・な・・・・な・・・・アンタ!?なんでこんなトコにッ!?一体全体なんだってんだ・・・・ッ!?」

 

 「ああ、落ち着いてエド。驚くのも無理はないよね、ごめんね」

 

 「エドって・・・!?なんでアンタ俺の名前知ってんだよ!?つーか勝手に馴れ馴れしく呼んでんじゃねぇよ!」

 

 会ったばかりで素性も知らないヤツが(名刺は見せられたものの、いきなり総理大臣の秘書だなんて言われて信じる程おめでたい人間ではないつもりだ)目が覚めたら隣で眠っていたなんて、誰だって驚く筈だ。しかしこの男は、あたかも正当な理由があるとでも言わんばかりの素振りで落ちつき払っている。

 

 「チッ・・・・・リン・ヤオの奴、仕事サボりやがったな。モニター監視怠りやがって減給モンだ!」

 

 男の存在をさっさと無視した俺は、怒りも露わにベッドの脇にあるフロント直通の電話に手を伸ばした。しかしその手は男によってやんわりと、しかし力強く遮られた。

 

 「フロント係の彼は悪くないんだよ。僕が彼に無理やり頼んだんだ。君と知り合うきっかけを、どうにか作って貰えないか・・・とね」

 

 それを聞いてしまえば尚更、リン・ヤオの減給は確定だ。

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・アンタ・・・・・ソッチの趣味の人・・・?」

 

 明らかに自分よりも年上の相手に無礼を承知で人差し指を突き付けながらあからさまな質問をすると、男はおっとりと首を傾けて答えてくる。

 

 「え?僕はどちらかというと女の子の方がちょっと好きだな」

 

 ・・・・・・・つまり『バイ』か。俺はウンザリした。どういう訳か、俺は昔から妙に男に好かれる傾向があり、実はこれまで女よりも男に言い寄られる数の方がゼロ二つ分ほど多かった。

 

 「俺はオトコもオンナもどっちも好きじゃねぇ。おととい来やがれ」

 

 「そんなにべもない。流石に傷つくなぁ・・・・・」

 

 全く傷なんてどこにもついてなさそうな鉄面皮で白々しい事を言う男の相手をするのも時間の無駄だ。僅かではあるが先程まで泥のように全身に纏わりついていた疲労が軽減されていたから、すぐに帰宅して昨夜の勉強の遅れを取り戻そうと立ち上がった。

 その瞬間。

 

 「待ってエド・・・・・・・・・・・・・・・!」

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ!?」

 

 俺のバスローブの端を引き留めようとした男の手が掴んだのだが、結んでいた紐がゆるかった所為か一気につるりと剥かれた形になった。

 

 「うわぁあああああああああああああああ!!!!てめ・・・・ッ何しやがる!?」

 

 「あ、ごめん。故意じゃないんだ」

 

 「ッたりめーだコノヤロウ!!・・・・・・・・み・・・・見てんじゃねえよ!アッチ向け!それにソレ返せよ!!」

 

 男の視線を全身に受けながら、俺はその男の手に握られたままのバスローブを取り返そうと腕を伸ばした。しかしその行動がいかに迂闊だったかと、俺は間もなく死ぬほど悔やむ事になるのだ。

 

 

 

 




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