この作品は、『いろいろ』で開催した夏コミ行けない人祭りに参加してくださった方々に作って頂いたものです







 『にゅるり!勃ち姿のあいつ〜ストッパー不在暴走伝説〜













 

 

 

 

 

「ねえ、兄さん。ちょっとモニターになってくれない?」

 

このくそ暑いなかでも、それを感じさせないような涼しげな笑顔を湛えて、アルフォンスは俺に声をかけた。

 

「なんだ?」

「うん。僕の会社で今、企画中のこれなんだけどね、ちょっと試してもらって意見を聞かせて欲しいんだ。」

 

そう言ってみせた弟の手には、いくつかの入浴剤らしきものが乗せられている。

アルフォンスは製薬会社の関連企業に勤めて、化粧品や石鹸などの開発に携わっているので、時々そのモニターを俺にさせるのだ。

 

「入浴剤か?じゃあ、夜に風呂入るときに入れればいいんだろ?」

「えー、ダメだよ!これ試した後で、僕、詳細な報告書も書かなくちゃなんないんだよ?そんな遅くじゃ徹夜になっちゃうよ。」

 

「ねえ、今使ってくれないかなぁ。」テーブルに座ってスイカを食べていた最中の俺の背後に密着してお願いされる。

真夏の扇風機だけでしのいでいるこの部屋で、体温を持った生き物に密着されれば、それはもう暑い事この上ない。

 

「おい、あちーよ!離れろ!」

 

俺が食べていたスイカを口から離して弟にそう言うも、やつは離れるどころか更にしっかりと俺の首の周りにその暑苦しい腕を回し、あろうことか頬まで密着させてきた。

外の気温よりも高いだろう弟の体温にひっつかれて、その触れ合った部分からじっとりと汗で湿り気が生まれる。

 

「暑いなら、お風呂に入ろう?これさ、液体だから水風呂にも使えるんだよね。」

 

そんな説明を、俺の耳元にダイレクトにしてくる必要がどこにある。

それから弟は、耳の奥に息まで入ってくる距離で「お願い。」と囁いてから、その中をペロリとひと舐めしてきやがった。

 

「ひゃあぁぁ!」

 

その暑苦しくてにゅるりとした感覚に仰天して、俺は思わず手に持っていたスイカを落としてしまった。

それは一度、ハーフパンツを履いていた俺の太股と膝の肌を、汁を撒き散らしながら直撃した後に、床へと落下した。

 

「ああ、ごめんね。驚かしちゃって。スイカの汁で足汚れちゃったね。僕が後片付けしとくから、やっぱり兄さんは風呂に入ってよ。」

 

申し訳無さそうな顔をしてそう言うアルフォンスの目が、やけに楽しそうなのをエドワードは見逃さなかった。

 

 

 

ぱいんさん

 

 

 

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あの顔はマジでヤベェ!絶対に、確実に、ロクでもない事企んでるぞアイツ!!!

 

テーブルの傍らにあった布巾で、俺の足に散ったスイカの汁を拭きながら如何わしい笑顔を向けてくる弟に、第六感が『逃げろ』と警鐘を鳴らす。が、弟の眼は既に本気モードで、もしここで俺が風呂に入らず部屋なんぞに逃げ込もうものなら、その後には目も当てられない恥ずかしい報復が待っていることは必至だ。

 

ドナドナの歌に出てくる、連れられて行く大牛のように、俺はトボトボと風呂場へと足を向けた。

 

 

 

 

 

シャワーで身体を流していると、後ろでガラスの扉がコンコンとノックされる。

 

「オウ。入浴剤持ってきたのか?」

 

何の気なしに振り向けば、そこには一糸まとわぬ姿の雄々しき弟の立ち姿が・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「兄さん。人の股間を凝視しないでくれないかな」

 

「だったらせめてタオルで隠せよ!!大体、昼間っから何を元気いっぱいにしてんだテメェ!!」

 

文字通り、弟の『勃ち姿』に度肝を抜かれた俺は、てっきり一人で入浴剤を試すのかと思っていたからこの状況に大いに慌てた。対して憎らしくなるくらい涼しげな表情で俺の手からシャワーのノズルを取り上げた弟は、男っぽい仕草で頭から水を浴びながら俺に意味深な目線を送ってくる。

 

「な・・・・・んだよ?」

 

精一杯の虚勢を張って顎を突き出した俺に、優雅な動きの指先で指示したのは、既に水がいっぱいに張ってあるバスタブの横に置いてある小さなボトルだ。いかがわしいピンク色のプラスチック製のボトルには、まだ製品化していない為か、手書きのラベルシールが貼ってあった。

 

「『愛の楽園』・・・・・・・・なんだそのうすら寒いネーミングは!?」

 

「まったくだよねぇ?仮の名前だとはいえ、ウチの課長の趣味を疑っちゃうよね。こんな名前の入浴剤がお店に並んでても、みんな引いちゃって誰も買ってくれないと思うよ」

 

言いながら傾けたボトルの口からこぼれ出す液体もまた、いやらしいピンク色だった。同時に強烈な甘い香りが広いとはいえない風呂場いっぱいに広がり、その嗅ぎ慣れない匂いの為か、俺は一瞬クラリとめまいを覚えた。

 

「・・・・と!大丈夫?ちょっと香りがきつ過ぎるかな?さ、ゆっくりバスタブに入って・・・?」

 

さりげなく腰を支えられ、弟に促されるまま真夏の空気に火照った体を冷たいピンク色の水に体を浸した俺は、まもなく訪れた自分の体の変化に慌てることになる。

 

 

らく

 

 

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何が変かって、一つはまず俺の身体が芯のほうからじわじわと広がる感じで熱くなってきたことだ、今、つかっているこれが水風呂であるにも関わらずだ。

そしてもうひとつは、俺を支えながら一緒にバスタブに入った弟のアレが更に大きさを増して俺の尻のあたりに当たっている。

 

いやらしいピンク色の液体は風呂の中に溶け込むと、うっすらとした桃色へと変わったが、この甘ったるい匂いだけは相変わらずエドワードの鼻腔を容赦なくついてくる。

それに追い討ちをかけるような背後のこの堅くなっているものの感触に、俺は鼻の中も頭の中もクラクラとしながら弟の方へ向いた。

 

「おい。だから、なんでお前のナニは既にこんなにMAXなんでしょうか!?」

「え?そんな事言われてもなぁ、僕の一存ではどうしようもないことだよ。こればっかりは。」

 

弟よ、そんな首を傾げつつ可愛く言ってもだめだ。表情を可愛くしても、兄ちゃんの尻にあたるものが、あまりにも猛々し過ぎるんだ。

 

エドワードが胸の中でそんな独白をしている横で、アルフォンスは兄の肩や腕に風呂の水を擦り込むように手の平を動かす。

 

「この仮称『愛の楽園』はね、コラーゲンがたっぷり配合されているんだよ。だから肌にもとてもいいんだ。兄さんの肌もすべすべになるよ、って言っても兄さんがもう十分綺麗な肌をしてるのは、僕はよく知ってるけどね。」

 

エドワードの肩や腕を行き来していたアルフォンスの手は、当たり前のように次には首と胸を這い出した。

耳の後ろから胸元へと、つつと降りてきた弟の手が、水の冷たさで既に尖っていた兄のその部分に引っかかるように通り過ぎると、エドワードはビクンと身体を震わせて、バスタブの中の桃色の水に波状を起こした。

 

「ひゃぁ・・・ぁ・・・アル、こっ、これの効能って美肌効果だけなのか・・・ぁ・・・?」

 

自分の身体の変化からそれだけではないと察したエドワード。

この水に入ってから、だんだんと腰のあたりからムズムズと落ち着かない熱とも焦燥感とも説明のつけようがない感覚が広がってきている。弟の手の平と指の動きだけが、やけにリアルに感じられる。

 

「これ?このネーミングからも分かると思うけど、もちろんそれだけじゃないよ。ほら、どう?どんな感じになってきたか、ちゃんと僕に教えてくれないと。」

 

アルフォンスが俺の耳に唇を寄せて、普段よりもやや低い声音で囁くと、見た目にも分かるんじゃないかと思うほどに俺の下半身が反応した。

 

 

 

 

ぱいんさん

 

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水渡さん



 

 

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ピンクに変化してはいるが、透明度は水であった頃と変わらず、俺の身体の変化を隠すものは何もない。脇腹を撫でていたアルフォンスの掌が、ゆっくりと下降をはじめる。思わせぶりな吐息を零し、肩口に顎をあずけてきた。

 

「元気なのは、僕だけじゃなくなってきたね。」

 

その嬉しそうな囁きすらも、じんっと響くかのように急速に頭を擡げ始めた自身に戸惑う。エドワードが思わず膝を擦りあわせ隠そうとすると、下腹を撫でていた掌が自然な動きでそれを遮った。しかし決してそれに触れることなく内股を撫でる。もどかしくて身体を反らせれば、目の前には、母譲りの優しげな笑顔。男らしい色素の唇から綺麗なエナメル質の歯が覗き、奥にチロリと見える舌。

近づいてきたので、当然唇に落ちると思った感触が、鼻先に掠められるに留まった。

あぁ、俺はどうしてしまったのか。

全身の皮が薄くなったような、水の揺らぎまでもが、なんというか、…直接クるのだ。

 

「ね…、どんな感じ?」

 

お兄ちゃんは、お前の会社が心底心配です。

何処の層がターゲットの、どれくらい展開予定の、何が成分の品なのか!それよりも本当に普通の会社なのか!

 

「ぁ、熱い…」

 

「そう、どの辺が…?」

 

頭の中では散々叫んでいても、実際口をついてでる声はなんともか細く欲に濡れている。そういった俺の変化に気付いているのに、どんどんとアルフォンスの腕はそっけなくなり、思わせぶりだった内股を這っていた掌も、今は膝が閉じないように添えるだけになっていた。

 

「…何か、変だ。熱くて…」

 

「熱くて?」

 

背後に息づくアルフォンスのそれは確かに衰えず熱を保ったままあるのに、呼吸が乱れ余裕をなくしてきているのは俺だけで焦った。その間も全身をなんとも形容しがたいものがじりじりと這いあがってくるようだ。くすぐったいような、もっと堪らない何かへと続く導火線のような。

 

「アル…、むずむずする…っ」

 

「それじゃあ報告書が仕上げられないよ。どう変なの?例えば…」

 

膝に添えてあった掌が水の中へと消えた。もう限界まで張り詰めたエドワードの情には触れることなく、その奥へと添えられる。谷間を辿り、秘められたそこへと辿り着くと、ツプリと爪の先だけが沈められる。

 

「ん、あっ!」

 

「この辺りはどう?何か変化あった?…教えて、兄さん」

 

 

 

水渡さん

 

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少しだけ差し込まれた弟の指に、明らかに物足りなさを感じてジリジリする。

欲しいのはもっと奥、奥のほうだと俺のそこが訴えてきているが、そんな恥ずかしいことを自分から言い出すなんて出来ない。

 

「ねぇ、ちゃんと答えてくれないと困るな。どうなの?」

 

その入り口付近ばかりを出たり入ったりしていて、一向に求めている場所まで来てくれない。

 

「あっ、なんか・・・熱い・・・かんじ・・・。」

 

「そう、ここが熱いんだ。それで、他にはどんな感じがするのかな?」

 

背後から、自分よりも落ち着いている声がすると、また指が抜かれてしまうぎりぎりの場所まで戻ってしまった。

 

「あ・・・あ・・・もっと・・・・・・っ、ゆび・・・!」

 

「ん?もっと?指をもっとどうして欲しいの?」

 

「ふぁ・・・もっと奥まで・・・指っ!」

 

エドワードが羞恥に頬を染めながら、絞りだすようにそう言うと、「奥までね」と言ってアルフォンスの指が一本だけ奥まで入り込んできた。

 

「ひゃああ・・・」

 

その奥まで差し入れられた感触に、腰から生まれた快感が背中を走って、エドワードの触れられていない自身までがぴくりと一度跳ね上がった。

身体全体にまで快感がまわると、うすピンクの水が今度はぱしゃりと音を出す。

 

「すごいね、まだ指一本しか入れていないんだよ?」

 

優しい声の中にも、やや揶揄の色を乗せてアルフォンスが囁く。

 

「もっと指増やした方がいい?ちゃんと言わないと調査にならないんだからさ。はっきり言ってごらん?」

 

これは一体何の調査だったのだっけか?

そう考えながらも欲には逆らえない。俺がいくら素直に頷いても、アルフォンスの指は増やされない。じんわりと目が滲んできた顔を後ろにいる弟に向けた。

その表情も金の瞳もやさしく微笑んでいるが、ちゃんと言葉にしなければやらないと、その目が伝えていた。

 

「指・・・もっと増やして・・・ア、アルっ!」

 

心の中では悔しさで一杯だったが、身体の欲求には勝てずに言葉を口に乗せる。

 

「よくできました。」と言って、アルフォンスはさらに指を増やして、俺の中にずぶずぶと突き入れてきた。

 


 

ぱいんさん

 

 

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「う、ああああああああああああ!!」

 

いつもと同じようで、まったく違う感覚が背筋を駆け上り、一気に脳髄を刺激する。視界が真っ白になり、自分が目を開けているのか閉じているのかさえ分からないまま、耐えることなどできずに獣のような悲鳴を上げ続けた。

 

後ろから回された弟のもう一方の手は俺の胸から臍の間を行ったり来たりを繰り返すのみで、決してその下へと伸ばされることはない。思わず無意識に腰が揺れる。そしてひとたびそうしてしまえば、その動きを止めることなどできなくなる。耳元に吹きつけられる、熱い吐息混じりの含み笑いが益々俺の温度を煽る。溶けそうだ。

 

「フッ・・・・・・企画の段階では半信半疑だったけど、こうしてみると効能は中々良い線いってるのかな?」

 

「・・・・・・・・あ・・・・・・効、能・・・・・・って、イア・・・・・ッ・・・・」

 

中のアノ部分を指で挟み込まれるようにグリグリとされて、またのけ反る。

 

「効能?今さら聞かなくたってもう分かってるでしょ?・・・・・・・ほら」

 

笑いを含んだ低い声で言って、弟の手が俺の手首を掴み俺の勃ちあがって放置されたままの熱源に強引に導く。

 

「自分で扱いて」

 

「・・・・・・・・・・!?」

 

突き放すような命令口調で言われ、言葉を失う俺だったが・・・・・・・・・・・・まさか、信じられない。

 

あろうことか俺の手は、弟に言われるままに自分の性器を握りこんで自らを解放へと促すべく動きだしたのだ。

 

 

 

 

らく

 

 

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一端触れてしまえばもう止められなかった。

俺は前屈みになり、激しく一心に解放へと向かい自身を擦る。

水面が細かく振動する音と、俺の荒い息だけが浴室で響いていた。

 

「はっ、ぁんんんっっ〜〜〜〜っ」

 

アルフォンスの指はそんな俺の様子には構うことなく、束ねるようにした数本の指を、深々と体内に埋め込んでは、内部を堪能するようにバラバラと気侭に蠢かせた。堪らず大きく喘ぐと、甘い香りが肺いっぱいに吸い込まれて咽そうになる。頭の芯がクラクラとして、貧血を起こした時のように瞼の裏にチカチカと何かが点滅した。

アルフォンスの指と共に水が体内に入ってくるのが判る。熟れた剥き出しの粘膜に、少し温度の低い水が気持ちいい。…そう、何もかもが気持ちいいのだ。

これが「効能」なのか。

 

あと少し、あと少しで過ぎて苦しい疼きから解放されるというところで、アルフォンスの腕がエドワードの動きを遮った。

 

「なっ!離、っせぇ!」

 

振り払おうと暴れるが、がっちりと固められた手首はまったく自由にならず、固く張り詰めた自身から引き離される。

同様にもう片方の腕も捕らえられて、背後の男を恨めしく振り返った。

噛み付いてやろうと思ったら、逆に噛み付かれるように口付けられる。

肉厚の舌が歯列を辿り、噛み合わせの隙間にねじ込まれて、無意識に逃げを打つエドワードのそれにざらりと絡められる。

 

「兄さん、教えて。どんな感じ?」

 

教えてと言うが、答える間を与えない。腫れるかと思うほど唇を吸い、唾液をたっぷりと絡めた舌で粘膜を擽る。

いつしか向かい合う形になっていて、アルフォンスの膝を跨ぐように腰を下ろしたエドワードの腹には、恐ろしく育った弟の熱が当たっていた。捕らえられていた腕は導かれてアルフォンスの首に回されている。立ち上がった胸の尖りが、位置こそ違えど、お互いの肌で擦れ、むず痒いようなもどかしさを下肢へと伝えた。

 

「…アルは、どんな、感じだ?」

 


 

水渡さん

 

 

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普段は小憎らしいくらいに余裕綽綽とした優しげな目許が、暴れ出そうとする欲望に耐える為にか僅かにゆがめられている様子に、俺はひどくそそられた。思わずゴクリ、と喉があさましい音を立てる。

 

「理性が崩壊した・・・・・って、感じ」

 

「ハハッ・・・・い、つも・・・・・・崩壊して、ンじゃん・・・・・」

 

いつも俺ばかりが翻弄されてまったく余裕のない状態に追い込まれてしまうのに、今日は入浴剤に含まれる成分の所為か、アルフォンスまでが苦しそうな表情を浮かべている。柳眉を歪ませ、熱い吐息には時折官能を刺激するような声が混ざる・・・・・俺の中にある『雄』が悦んだ。

 

もう一度、今度こそはと、再び弟の唇に甘く歯を立てながらむしゃぶりついた。頭の後ろに回される手を掴んで外し、そのまま水の中で触れあうような距離にある互いの昂りを纏めて握らせる。

 

「ん・・・・・アア・・・・・・・・アル・・・・・同時に・・・・イこう・・・・ぜ・・・?」

 

「兄さん、僕に・・・・・合わせられる、かな・・・・ッ?」

 

「余裕ぶってン、じゃねえ・・・・・俺がイかせて、ヤル・・・・・」

 

二本共を纏めて擦り上げていた弟の手に、さらに自分の手を重ねて、痛みを感じる程強く握り込んで目茶目茶に動かした。瞬く間に目の奥で鮮やかな色彩のフラッシュが点滅して、耳は音をまったく拾えない状態になる。

 

「ア、ア、・・・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・・!も・・・・」

 

「・・・・・ン、ク・・・・・・ッ」

 

いよいよ同時に熱を放つ時が来た・・・・・・と、背中を駆け上ってくる歓喜に全身を震わせたまさにその瞬間。

 

「イ・・・・・ッ!アアアアア!?」

 

その部分から手が外されると同時に根本を強く握り込まれた俺は、悶絶した。歯を食いしばり、薄く開けた瞼の隙間から憎らしい男を睨みつければ、獰猛な笑みをたたえた悪魔が舌なめずりをして俺を見ていた。

 

「な・・・・・・放せ・・・・・・ウア・・・・・ン」

 

「可愛い兄さん。よりによってセックスの最中に、この僕を手玉に取れるとでも思ったの?」

 

両手を後ろでまとめて捉えられたまま、片方の足の付け根の下に入れた手でグイと持ち上げられ、俺の後ろに最大限に育ち切った弟の熱い切っ先が狙いを定める様にあてられた。

 

「自分で挿れて、自分で動いて。僕をイかせてくれたら、この手を離してあげる」

 

「そ、なの・・・・・・ウア・・・・・ッ!」

 

先端部分を強く押し付けられて、水で冷やされたソコに熱い肉が入りこんで来る感覚に身震いした。しかし同時に前を強く掴まれている痛みに、さらに歯を食いしばる。

 

この弟が見ている前で、自ら挿入して腰を揺すれというのか。そんな破廉恥な事をしてしまえば、この一時は良くとも後で我に返った時、どれだけいたたまれない思いを味わうことになるのか・・・・・・。

 

「無理だ・・・・アル・・・・!意地悪、すんなよ・・・!」

 

涙目で懇願しても、流石は俺の弟。柔和な容貌と正反対の内面は、この上なく魔性のものだった。にっこりと不気味なほど邪気のない笑顔を作ると言い放った。

 

「さあ、泣いてないでとっとと奥まで突っ込んで腰を振るんだよ。出来るよね?」

 

 

 

 

らく

 

 

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「アル!」

 

情けなくも目頭から溢れたものは目尻を伝わって零れる。相手は片手だというのに、後ろ手に固定されてもがいても腕は自由にならず、とっくに臨界点を超えている情は果たすことができないよう根元をきつく戒められて、快楽の袋小路に、エドワードは腰を揺らめかせた。

鬩ぎ合う葛藤が、今後のこともなんでも、どうにでもなれと劣勢へと傾きかけたその時、

 

 

………気に入らない。

 

 

過ぎる快楽がそうさせたのか、それとも腹立たしさのスイッチが近くにあって誤作動したのか、むくむくと怒りが頭を擡げてきた。

確かに、アルフォンスも限界なはずなのだ。

本人もそう告白していたが、得意のポーカーフェイスを保てずに肩で息をしている上、押し当てられた滾るそれが、普段以上であることは間違いなく何よりも証拠だ。この入浴剤に身を浸している時間だって同じなのだから、身を持って体験している形容しがたい狂おしさに違いはないはず。

 

エドワードは体重を後ろにかけ、バスタブへ首を凭せ掛けた。沈みそうになり少々焦るが、アルフォンスが覆いかぶさるような体勢になりつつ、それでも解放しない腕で支えられる。

片足をその愛しくて憎らしい男の肩にかければ、自然と開く形になる我が身に添えられた欲が少しだけ深くなるのを感じ、思わず喉を鳴らした。

 

「…なぁ、お前は欲しく、ねぇの?……俺の…奥の方。」

 

吐息で濡れる距離で囁く。体勢を入れ替えた振動でタプリタプリと大きく揺れる水に身体が撫でられるようで、それだけで息が上がる。

 

「その手にはのらないよ。兄さんが全部やらなきゃ。」

 

自身を諌める指に力が入り、エドワードは短い悲鳴を上げた。思わぬ力だったのか、アルフォンスは慌てたように少し緩めるが解くことはない。

 

「なぁ…、俺もう限界…、アルの、欲しい」

 

エドワードは乾く唇を舐めて、この水面のようにゆらゆらと欲に揺れるアルフォンスの瞳を見つめる。

肩にかけた足を更に折り、近づいた唇に口づけた。反応を返さない舌を舐め、下唇を噛む。唾液の絡む音が浴室に響いた。また少しだけ熱が下肢に深く埋まるのを感じる。

待ちわびるかのように、我が身が戦慄いた。

 

「兄さん。」

 

「根元まで呑み込んでやるよ。――――来いよ、アル」

 

 

 

 

水渡さん

 

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互いの息が絡み合うほど間近で、アルフォンスが妙に男くさい笑いを浮かべた。

 

「まったく・・・・・・可愛くて憎らしい人・・・・・・・覚悟して、今日は手加減しない」

 

「・・・・お前こそ、吠え面かくなよ」

 

「ふふ・・・そんな強気な兄さんが、これからどれだけトロトロになるのか、見ものだね」

 

言いざま耳元に寄せた唇で耳朶を甘く挟み、ふたたびにゅるりと舌を挿し入れる感覚に全身が泡立った。

 

「ひ・・・・・ウ・・・ッ」

 

「耳まで弱いんだね。全身性感帯ってアナタみたいな人の事を言うんだろうね?その意地っぱりな態度、どこまで持つのかなぁ」

 

まるで拷問を楽しむサディストのような笑みを刷いた唇をぺろりと舌先で舐めながら、獲物を狙い定めるような視線を俺に向けてくる。だが、ここで目をそらす訳にはいかない。自他共に認める勝気な性格も大いに手伝って、俺はわざと水の中で腰を揺らめかせ弟を挑発した。

 

「アル・・・・・・そっちこそ強がったって無駄なんだぜ。お前のコレ、今にも爆発しちまいそうじゃねえ?どうせなら、兄ちゃんの中で弾けてみたいだろ?やせ我慢は身体に悪いぜ。オラ・・・・・・・『欲しい』ってひとこと言ってみな」

 

 

 

らく

 

 

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「ふ・・・っ、欲しいって言えって?兄さんこそが僕のこれが『欲しい』んだろ。ほら、セックスで僕に勝とうなんて悪あがきはやめて、素直に自分から腰を沈めて飲み込みなよ。」

 

ギラついた目で俺を捉えたままに、俺が挑発して揺らしていた腰にお構いなく、あいつの方も自らの腰を軽くグラインドさせてくる。

俺の中に浅く埋まっていたアルフォンスの切っ先が不測的な動きで入り口を回転した。その不規則な動きで自然と俺の中にもう少しだけ迎え入れられる。

 

「・・・ぁ・・・ふっ」

 

俺の奥の部分は、ずくずくと血流が集まってるのかと思うほどに熱が澱んでいる。そこを早く貫いて掻き回して欲しくて仕方なくて、思わず息が上がる。だけど、口では余裕ぶっているアルフォンスだってかなり追い詰められているはずだ。表情は眉間に影を作って息遣いだっていつもよりやや早い。

途中まで入っているソレが、かつてない程に固く漲り脈打ってるのが俺には伝わってきている。それが何よりの証拠だ。

 

俺は尚も片足を弟にかけた状態で腰を浮かせると、小刻みにそこを揺らして挑発を続けた。するとアルフォンスも、深さはそのままで更に腰に回転を加えて刺激を与えてくる。

 

「ア、ル・・・おまえ、早く観念・・・しろ!」

 

「兄さんこそ!欲しいんだろ?これがっ・・・!」

 

両方向からの不規則かつ小刻みな動きが、お互いの欲を最大限まで引き出し渇望させる。

 

正直、エドワードはもう限界だった。欲しくてどうにもならない。

今日もまた弟に負けるのは悔しい事この上ないが、そんなことよりも早くこの熱い塊で自分の最奥まで貫いて欲しい。

 

--------早く! もっともっと俺の中に!

 

「っく・・・ぅう!」

 

「あああああぁぁ・・・ン!!」

 

エドワードが全てのプライドと理性を捨てて、アルフォンスへと腰を沈めたのと全く同時に、耐え切れなくなった弟もエドワードへ腰を突き上げていた為に、二人の予想以上の衝撃でお互いが深くまで沈み込み、それぞれに強い快感をもたらした。

 

「あ・・・・・・はっ・・・・・・ぁ」

 

「・・・っ、兄さん、今のは引き分けだねっ・・・。でもどう?欲しかったものがもらえた感想は?最後までちゃんと感想聞かせてよっ。」

 

「お前こそ・・・どうなんだよっ?いつもよりもっと・・・お前の、大き、ぃっ!・・・俺の中、気持ちよすぎて・・・先にイキそうか?・・・あぁぁっ!」

 

この期に及んでまだ口の減らないエドワードの良いところをアルフォンスの自身で擦りあげてやると、その表情が快楽に歪んだ。

頬を染めて喘ぎ始めた可愛い顔が水につからないように、激しく抜き差しを始めながら、エドワードの熱を根元で握っていた方の手を解放して射精を促しつつ、背中から支えてやる。

しかし相手もかなり強情だった。指を離されたエドワードの熱源は、少しだけピンクの水に白色を漂わせたが、全てを開放させはしなかった。

 

「ふっ・・・あぁ、んんぅ!・・・・・・んふぅっ!」

 

腰を揺すり上げながらアルフォンスが唇を重ねてくると、エドワードもそれに応えて自ら舌を絡ませた。

激しく舌を舐めて吸い上げて、苦しくて大きく息を吸い込めば、再び鼻腔の奥に甘すぎる香りが直撃して、体中の快感が更に煽られる。

 

どちらも相手を先に達かせようと負けじと腰をぶつけ合い、うすピンクの水がちゃぷちゃぷとバスタブの中で断続的に波打っている。

 

激しく抜き差しされる弟の欲望と、自らも腰を揺らしながら受け入れている秘部は、かつてない程の快感を生み出して、あっという間に絶頂へと持っていかれる。

 

「・・・ア、アル・・・!」

 

「・・・・・・兄、さんっ!」

 

「う!ああああああああああぁぁぁぁぁ−−−−っ!!」

 

「−−−−くっ!」

 

 

エドワードが堪えきれず痙攣するように絶頂を迎えると同時に、そのきつい締め付けによってアルフォンスもエドワードの中にその熱を全て注ぎ込んだ。

 

 

 

ぜえぜえと荒い息を繰り返しながら、しばらく二人は水の中で重なったままの姿勢で見つめあい、鼻先を擦りあわせてニヤリと笑いあった。

 

「結局最後まで引き分けか・・・。もう、兄さんったら強情なんだから。」

 

「そのセリフ、そのままお前に返してやるよ。」 

 

 

 

ぱいんさん

 

 

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みなもさん


 

 

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それから、ようやくバスルームから出たエドワードは弟と一緒にダイニングに戻ると、アルフォンスの出してくれた冷たい麦茶を飲みながら人心地ついた。

 

あの入浴剤のお陰で、精も根も尽き果てたような疲労感だ。

それに反して、バスルームでは同じく切羽詰ったようだった弟は、今はもう涼しげな顔をこちらに向けている。一体こいつは、どんだけタフなんだ?

 

そして弟は麦茶を飲み干すと、ニコリとその金の目を細めて「あ、そうそう。」とまた何処からか見覚えのあるプラスチック容器を取り出した。

 

見間違えるはずもない、さっきは濃いピンク色をした液体が入っていたソレと全く同じ形状のものだ。

しかし、今、アルフォンスの手にあるそれは、毒々しい程に下品な紫色と、もう一つはミルクのように真っ白いものが2つある。

 

「おっ、おっ、おまえ!?そっ、それは?!!!」

 

「いやだなぁ、見れば分かるでしょ?入浴剤の試作品だよ。」

 

俺が言葉を詰らせながら戦々恐々とその2つを指差すと、弟は天使の笑顔であっさりと言ってのけた。

 

「最初にこれも兄さんに見せたはずだよ。忘れちゃったの?」

 

さっきの風呂での一連の情事ですっかり失念していたが、確かに最初見たとき弟の手にあった入浴剤は一つではなかった。

一気に蒼白になる俺に構わず、弟は説明を始める。

 

「こっちの紫色の方がね『悦楽の扉』で、白いのは『乳白の昇天』。効能は基本的には大体同じなんだけど、微妙に配合は変えてあるんだ。」

 

そんな聞くのも恥ずかしいようなネーミングの書かれた容器を両手に持ちながら、微笑むその目つきと表情ははっきりと再び獲物を捕らえる獣の色を帯びていた。

 

 

「で、兄さん。明日はどっちのモニター調査をしようか?」

 

 

 

・・・・・・俺はまた明日も風呂で極限まで弟と我慢比べを展開しなければならないのだろうか?それとも、次は素直に調査された方が安全か?

というか、お前は会社で一体どんな商品を開発しているんだ?!

 

 

ぐるぐるとそんな事が頭の中を駆け巡った。

 

が、それよりも何よりも、取り敢えず俺は腰が砕けたように崩れて、だらしなく椅子にヘタり込むしかなかった。

 

 

 

 

ぱいんさん

 




  

 

 ≪終わり≫

 







  にゅるり!勃ち姿のあいつ〜ストッパー不在暴走伝説〜(タイトル考案:水渡さん、山崎ぱいんさん)の制作に参加して下さった方々。
  (何れも順不同)※( )は運営されているサイト名です。






  ≪文を書いて下さった方≫


  山崎 ぱいん 様 (蜂蜜Bomb)

  水渡 つぐむ 様 (プラチナ)

                  +らく

  ≪絵を描いて下さった方≫


  
水渡 つぐむ 様 (プラチナ)

  
みなも 様   (月の水風の花)
  
  


 素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m








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