■献血で異常がでた場合にお知らせする病気について

梅毒 | B型肝炎 | C型肝炎 | HTLV-I

  これらの病気のお知らせがきた場合、ショックを受けられると思います。病気についての正確な知識を持つことで、それを乗り越えられると思いますので、同封の案内に従って、説明を受けられてくださいね。以下は病気についての簡単な説明です。

「梅毒」について

  主に性行為によって感染し、全身に広がる病気です。抗生剤が見つかるまでは淋病とともに代表的な性病でしたが、原因となる細菌が、抗生剤がよく効くので減少しました。しかし、近年増加傾向にあるそうです。献血の検査では平成14年度は0.2%の割合(10827本)で陽性でした。梅毒は初感染から、10〜90日(平均3週間)は症状や検査で感染の確認ができません。(しつこいですが、検査目的で献血しないでね)

   
治療せずにいるとどうなるのかというと大きく4期にわけられます ■第1期は小さなしこりができて、それがしばらくして潰瘍になる時期です。
■第2期は、ばらの花びらのような湿疹が全身にあらわれ、また、やまもも(揚梅)の実のような発疹があらわれるというのが「梅毒」という名前の由来になったようです。脱毛も症状としてあり、ヨーロッパで「かつら」が流行ったのはそのせいであったとか。
■第3期は、「鼻が落ちる」ような全身に皮膚症状があらわれる時期。
■第4期は、「脳梅毒」に至り、進行性麻痺となります。

  梅毒はコロンブス一行がアメリカ大陸の発見とともにヨーロッパに持ち帰り、世界にひろまったという説が有力です。 わけがわからない時代、この病気は、なすりつけられた国の名前で「フランス病」「ナポリ病」「スペイン病」「ポルトガル病」などとよぱれ、日本では「琉球病」、琉球では「南蛮病」といっていました。それほど爆発的に流行し、また「馬鹿と天才は紙一重」といわれるように、脳梅毒に冒された天才の、痴呆一歩手前の状態で「芸術」がうまれたのだ等といわれるようになりました。ベートーベンの死因は脳梅毒という説がありましたが(難聴もその一症状として)、2000年になって鉛中毒という説が有力となりました。シューベルトも梅毒が死因といわれています。が腸チフスとも。古代ローマ皇帝のネロの大虐殺も脳梅毒に由来する誇大妄想といわれています。ニーチェの発狂の原因も梅毒性の精神異常という説があります。 現在では、第3、4期に至ることはまれですが、早く治療しましょう。早期であれば、完全に治すことができます。

B型肝炎、C型肝炎について

  B型肝炎、C型肝炎は共に肝硬変→肝臓の癌になることがあるので、治療が重要です。たとえ肝癌になったとしても、早期であれば、やっつけることができます。継続して医療機関(船橋市・鎌ヶ谷市の病院案内)の診察を受けて、症状を軽減させ、進行をくいとめる、または遅らせていくことが大切です。平成14年度に市町村の肝炎ウイルス検診で「現在、C型肝炎ウイルスに感染している可能性が極めて高い」と判定された方は受診された方の60人に1人、約3万人でした。平成14年度肝炎ウイルス検診の実施概況等について
ウイルスによる肝炎について簡単に説明したあと、B型肝炎C型肝炎について説明します。

■ ウイルス性の肝炎について ■
  肝臓の細胞にすみつくのが好きなウイルスがいます。それを追い払おうとして身体が攻撃するので肝臓で戦闘がおき、住民である肝臓の細胞もろとも空襲を受けているといった状態です。ウイルスの種類によって、Aから順番に名前がつけられました。次々と新しい型が発見されています。G型が発見されたのは1995年で、簡単な検査法はまだありません。C型肝炎は1989年頃発見され、1990年より正確な検査法がどんどん開発されています。その他肝炎を起こすウイルスにはサイトメガロウイルス・EVウイルスなどがあります。

A及びE型肝炎は、食べ物でうつります。特に魚介類に注意が必要ですが、いつまでもウイルスが身体にすみついた状態(慢性化)にはならないとされています。発展途上国に旅行する時は、A型肝炎の不活化ワクチンが有効です(日本で1995年から)。献血は治ってから6ヶ月たてばできます。本人ではなくて、家族に患者がでた場合は、家族内でうつすおそれがあります。1ヶ月経過して、本人に症状が出ていないのを確認してからの献血になります。E型肝炎について厚生労働省から「E型肝炎に関するQ&A」が平成15年8月にでました。

B及びC型肝炎は、人から人にのみ血液でうつします。性行為、注射針を介して、母子感染などによります。特にC型肝炎は医療器具がまだ使い捨てでなかった時期や輸血、鍼治療、入れ墨によりかかったケースがほとんどです。肝臓に癌がおきる時、これらのウイルスが原因となることが90%以上です。

D型は日本では多くありません。B型肝炎との混合感染です。

■ B型肝炎(Hepatitis B)について ■
  ウイルスは外殻と内部(コアcore物の中心部)にわけられて、それぞれの場所に「侵入者だ」と身体にばれる信号をいくつかもっています。その信号を「抗原」と呼びます。その「信号」を持つ物を「指名手配犯」として、特別にとりしまる為に、身体の中では「抗体」という「指名手配書」がつくられます。献血ではHBs抗原(B型肝炎ウイルスの外殻にある表面surfaceの頭文字sを持つ抗原)、HBs抗体(HBs抗原に対応する抗体)とHBc抗体(B型肝炎ウイルスの内部にあるcoreの頭文字cをもつ抗原に対応する抗体)、およびNAT検査(ウイルスの核酸を増幅する検査)をしています。平成14年度のHBs抗原は0.1%(5924本)で陽性でした。HBc抗体は1.3%(76581本)で陽性でした。HBc抗体はいろいろな型がありますが、持続して感染している方の症状悪化時にあがるタイプがあります。HBs抗原にくっついて、やっつける中和抗体HBs抗体のできた方は、B型肝炎に2度とかかりません。(ワクチンの注射もこの抗体を作ることが目的です。)
  B型肝炎は母から子へとうつると、赤ちゃんは免疫力が未熟なので、ずっとウイルスがすみついてしまい、保菌者(キャリア)となります。(今では、ワクチンの組み合わせで赤ちゃんにうつさずに済むことができます。夫婦の間もワクチンで予防することができます。)。献血はできません。治療は今のところ完全にウイルスを消し去る薬はありません。がウイルスの中でも毒性の少ないものに変えていくことはできます。この状態をセロコンバージョンといいます。B型肝炎のキャリアの10%くらいの方が慢性肝炎→肝硬変→肝癌になるそうです。90%の方は症状がでないで一生を過ごせます。
  大人になってから性行為などでうつった場合は、急性肝炎になり(重症化することがあります)、その後ウイルスを身体の中から追い出して治ります。(という、これまでの考えを否定する研究結果がでました。ウイルスがわずかながら残り、感染の可能性があるということです。献血に際しての基準が変わるでしょう。8/17読売新聞参照)献血も治ってから6ヶ月で可能です。が依然HBc抗体が高ければ検査で不合格になることがあります。

■ C型肝炎(Hepatitis C)について ■
  C型肝炎は母から子へとうつるタイプは少なく、夫婦の間でうつるタイプはまれです。今のところ有効なワクチンはありません。ほとんどが人から人へ血液を介してうつったものです。昔は、予防注射の針を一人一人使い捨てにせずに、何人か順番に打っていました。病院の注射でも使い捨てではありませんでした。輸血もC型肝炎ウイルスの検査が開発される前は、ウイルスが混じっていた可能性があります。鍼治療、入れ墨、覚醒剤などの注射でも感染した可能性があります。ですからC型肝炎は若者に少なく、年をとるほどかかっている人が多くなります。大人になってうつると急性肝炎になりますが、その50〜80%が慢性肝炎(いつまでも、ウイルスが身体に住みついて、戦闘状態が続いている)になります。献血はできません。慢性肝炎であっても、9割の方が何の症状も感じずに過ごしています。けれどもそのうちに肝硬変、肝癌へとじわじわ進行していきます。そこが怖いところです。平成14年度のHCV抗体の陽性率は0.2%(8804本)でした。インターフェロンなどの治療が効きますが、きかない場合十数年以上の歳月をかけて癌になっていくことがあります。癌になっても早期発見で治療できます。継続して診察・治療を受けていくことが大切です。 詳しくは、厚生労働省の「C型肝炎について」をどうぞ。

HTLV-Iについて

  癌の原因は一つにきめられませんが、関係の深いものがいろいろあります。放射線・紫外線・たばこ・アルコール・遺伝的素因(がん遺伝子・がん抑制遺伝子など)・ウイルス・発癌性物質などです。その中で癌に関係するウイルスがいくつかあります。ウイルスにかかったら、すぐ癌になるというわけではありません。たばこを吸ったら必ず癌になるというわけではないのと同じことです。例えば子宮頸癌ヒトパピローマ(乳頭腫)ウイルス(HPV)というのがあります。HPVというのは、人に乳頭腫という「いぼ」をつくるウイルスですが、いくつも種類があり、16型というのが、癌になる危険の高いタイプです。 肝癌B・C型肝炎ウイルスについては、上記をみてね。 胃癌ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)EB(エプスタイン・バー)ウイルスも関連があります。ちなみにEBVは日本人では、3歳までに80%、大人では90%がかかり抗体を持ちます。愛知県がんセンターの「がんの知識」の質問コーナーを参考にされてみてください。
成人T細胞白血病(ATL)HTLV−1(ヒトTリンパ球向性ウイルスー1型)はその一つです。
血液、性行為、母乳によりうつります。性行為による感染は、男性の精液中のリンパ球により まれにうつります、男性から女性へというものです。ほとんどは母乳により感染し、ずっとウイルスがすみつく、キャリアになります。(母乳は高温あるいは低温にすることで、ウイルスの感染率を減らすことができます。)感染した人のごく少数が、中年以降に発症します。日本では九州地方に多いそうです。このウイルスにかかっていた場合、40歳以上の抗体陽性者のうち1300人に一人の割合で、発症するそうです。低い発症率です。あまり心配されないでくださいね。国立がんセンター成人T細胞白血病リンパ腫 の解説を参考にされてください。このウイルスを身体から追い出す薬(あるいは治療法)があればいいのですが、いまのところ、まだありません。発症する人と発症しない人の決め手となるものもわかっていません。「笑う門には福きたる」と申します。笑うことで、人間は免疫力があがるそうです。免疫力があがれば癌の細胞をうちまかせます。他の人にこのウイルスをうつさないようにする「生活上の注意」を守って、身体にもし異変を感じたら診療をうける。あとは笑って過ごして、免疫力をあげましょう。

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