Aru-Tareta-Hibi
 
Drug informational site

HOME

糖尿病とくすり 

※糖尿病のお薬や糖尿病の薬物療法全般に関してのご質問は、「お薬相談」の「お薬質問フォーム」にて承っております。

糖尿病の治療方法
1.食事療法 2.運動療法 3.薬物療法


 
糖尿病の治療において、薬物療法はファーストチョイス(第一選択)ではありません。
まず、食事を改善し、日々の運動を実践したのち、それでも血糖値が下がらない場合に最後に行われます。
糖尿病は他の病気のように薬さえ飲めば治る病気ではないので、段階を踏んだ治療を根気強く行っていくわけです。
 糖尿病の治療は医師を中心に、治療全般のケアを看護師、栄養指導などの食事療法を栄養士、運動療法を理学療法士、そして薬物療法には薬剤師という風に様々な職種がかかわります。

糖尿病の薬物療法
〜内服とインスリン注射の2種類があります〜

経口糖尿病薬
1.血糖降下薬
: 直接または間接的に血糖値を下げる薬剤群。以下のような種類があります。 

スルフォニル尿素薬・・・・すい臓にはたらいて、血糖値を直接下げる。
(代表薬)オイグルコン、ダオニール、グリミクロン、アマリール
(副作用)低血糖

ビグアナイド薬・・・・糖が体の中で新たに作られたり、吸収されたりするのを抑える。 
(代表薬)グリコラン、メルビン、ジベトスB
(副作用)消化器系症状、肝障害

αグルコシダーゼ阻害剤・・・・食後の血糖値の急上昇を抑える薬   
(代表薬)ベイスン、グルコバイ
(副作用)腹部膨満感、放屁増加

チアゾリジン系薬・・・・体の中で糖が利用されるのを促したり、糖の合成を抑える。   
(代表薬)アクトス
(副作用)心不全、肝障害、浮腫

フェニルアラニン誘導体系薬
・・・・すい臓にはたらいて、血糖値を下げる。即効性があるが効果は弱い。
(代表薬)ファスティック、スターシス
(副作用)低血糖、腹部膨満感、放屁増加

2.インスリン注射
インスリンはそもそも、人間の体の中にもある物質ですが、糖尿病の方は何らかの原因でこのインスリンが作られなくなったり、利かなくなったりしたため、外から注射することによって補ってやる必要があります。次のような場合、インスリン注射が適応になります。
 ・飲み薬の効果が不十分な人
 ・1型糖尿病の人
 ・妊娠などにより、飲み薬を服用できない人
また、インスリン注には、以下に示したような種類があります。

種類/作用

発現時間

最大効果

持続時間

速効型(〜R)

30分

1〜3時間

8時間

中間型(〜N)

90分

4〜12時間

24時間

混合型(〜30Rなど)

30分

2〜8時間

24時間

持続型(〜Uなど)

4時間

8〜24時間

24〜28時間

 インスリン自己注射の手技:ペン型製剤の場合

1.まず手をきれいに洗います。
2.必要な道具を準備する。〔注射器、注射針、消毒綿ほか〕
3.注射器を振り、中のインスリンを混和する。(中間型、混合型、持続型製剤の場合)
4.注射器ゴム栓部分の消毒をして、注射針を取り付ける。
5.約2単位の空打ちをする。(空打ちの意味は、空気抜きの他に注射針がしっかり付いているか、インスリンが正常に出るかの確認です。)
6.注射部位の消毒をする。
7.単位を合せて、注射部位をつまみ注射する。
8.注入後は約5秒間待機してから注射針を抜きます。これは、注入ボタンへの入力とインスリンの出方に時差があるためです。
9.後片付けをします。針はキャップを付けてペットボトルなど蓋のある丈夫な容器に入れます。満杯になったら病院に届けてください。

注射部位について

腹部 → 上腕 → お尻 → 太もも 
の順に吸収がよい。つまり腹部の吸収が最も速く安定している。
最近では、腹部のみに注射部位を限定して注射したほうが、インスリンの効き方が安定して血糖値の安定にもつながることが報告されています。

注射手技の簡略化について

最近インスリン自己注射の手技の簡略化を言われる方や実際に簡略する方が増えてきたように思います。
確かに、消毒や空打ちなどわずらわしい操作が多いのがこのインスリン注射の実情です。しかし、これらの操作にはちゃんと意味があるのです。
当方の施設において、インスリン使用患者さんに調査したところ36.4%(3人に1人)にインスリンが出なかった経験があることがわかりました。
このような注射器操作上の事故は、空打ちを行うことによって回避できる場合が多いのです。
そもそも、インスリンの自己注射は病院で行う治療の延長なのです。インスリンは毎日行う注射であるため、それを患者さんに指導した上で任せているのです。病院で行う種々の注射の前の消毒不要論を訴える人は皆無ですよね。それと同じで、いくら個人責任で行うものだとしてもやはり最低限必要な操作は安易な考えで省略しないでほしいものです。

 注射器操作上の事故について

@注射液の凍結について(画像:凍結したインスリン製剤
インスリンは通常、未使用のものは冷蔵庫(2〜8℃)で保管する必要がありますが、開封したものは常温保管でかまいません。
しかし、誤って冷凍庫に保管した場合や、冷蔵庫内でも噴出し口付近(約−20℃)に保管した場合には凍結する可能性があります。
また、寒冷地方では冬場に常温でも凍結する可能性が十分にあるので注意が必要です。(※岩手県では実際ありました。)
インスリンを凍結した場合何がいけないかというと、機械的な点で言えば注射器の破損や注射針取り付け部のゴム栓の劣化や破裂があげられます。
一方、内部のインスリンの成分自体はというと特に変化はありませんが、懸濁製剤(中間型、混合型、持続型)のインスリンを持続して効かせる成分が壊れるため、インスリンの効く時間帯がずれてくることが考えられます。そうなると、いつもの時間に血糖値が下がらなかったり、逆に思わぬ時間帯に効きだしてそのまま低血糖を誘発する可能性がありますので、やはり一度凍らせた製剤はたとえ残量があっても使用しないことがよいでしょう。

A注射器内への血液の逆流について(画像:血液が逆流したインスリン製剤
注射器内に血液が逆流すると、濃さはさまざまですがインスリンの色調が褐色に濁ってきます。
血液逆流の原因としては、操作面で言えば注入ボタンを途中で止めてしまった場合や注入ボタンに加える力を途中で弱めてしまった場合が考えられ、一方身体面では注射部位を圧迫しすぎた場合や毛細血管の多い部位に注射した場合などが考えられます。
いずれにしても、一度血液が混入した製剤の内部で雑菌が繁殖することが最も怖いことなので、この場合も使用しないことがよいでしょう。

B注射器内への空気の混入について(画像:空気が混入したインスリン製剤
注射器内部へ空気が混入する原因は様々ありますが、最も多いのが注射針を付けっぱなしにしていることによるものです。
注射針の交換は原則的に注射毎になりますが、交換することを面倒がったり注射針の節約のため注射数回に1ぺん交換するという患者さんもいらっしゃるようです。(※実際には病院で支払う医療費の中には注射針の代金は請求されませんが。)
空気が混入した場合には、空打ち操作により中の空気を押し出せばよいですが、ごく少量の空気の混入は無視してもかまいません。もちろん注射による体内への空気の注入は少量であれば全く問題ありません。これはインスリン注射が皮下注射であるためです。
ただし、空気の混入が比較的多くなってくると、注射の際に空気の分で必要単位数に満たない、という意味でこれもまた問題です。


低血糖について
糖尿病の薬に関する副作用で最も多いのが低血糖です。
糖尿病の方は、普段は血糖値を下げることに一生懸命になると思います。
しかし、血糖値は下がりすぎてもよくありません。
血糖値が下がりすぎると様々な症状が起こります。この症状のことを低血糖症状といいます。

<低血糖の症状>
人によって差はありますが、血糖値が70r/dlを下回ると症状が現れます。


低血糖の対処方法
血糖が下がったので、糖分をとって上げてやればいいことになります。
しかし、いくつかの注意点があります。

・普段から砂糖などを持ち歩くようにする・・・・いつどこで起こるとも限らない。また、糖尿病手帳を持ち歩く。
・糖分をとってから回復しても、30分後位に再発することがある・・・・食事が近いときには食事を採り、それ以外は適当な捕食を採るようにする。
・低血糖の知識を持っていないと、対処法がわからずどんどん症状が悪化する・・・・重症化すると意識を失い死を招く。
・アルコールは低血糖症状を重症化させる・・・・経口糖尿病薬およびインスリンはアルコールとの相性が非常に悪い。
・上述の「αグルコシダーゼ阻害剤」を飲んでいる方はブドウ糖以外の糖ではとっさの時効かない!

※ブドウ糖を持っていないときには、ブドウ糖を含む缶ジュースなどでも代用できる。
(低血糖の時には、10〜20グラムのブドウ糖をとるのがよいとされています。)

商品名

ブドウ糖含量(グラム)

コカ・コーラ(350ml)

12.95

ファンタ・グレープ(350ml)

20

ファンタ・オレンジ(350ml)

18.9

HI-C オレンジ(350ml)

15.35

薬剤師からの提言(お願い)
糖尿病のお薬を飲んでいる方やインスリン注射をしている方への薬剤師からのお願いです。

フローチャート : 代替処理: @薬またはインスリンの名前を言えるようになる。
A何の薬かを知る。(簡単な効能が理解できるようになる。)
B指示された薬の飲みかた、インスリンの打つ時間を守る
C薬を飲み忘れたとき、インスリンを打ち忘れたときの対処法を知る。
D低血糖の症状、対処法を知る。
E薬には飲み合わせがあることを知る。
 

 

 


 

@薬またはインスリンの名前を言えるようになる。
自分の飲んでいる薬や、注射しているインスリンの名前を知っていることは、例えば旅先で体調を崩したときなど主治医以外の先生の診察を受ける際に役に立ちます。「何か薬を飲んでいますか」と尋ねられたときに、糖尿病の薬であることを告げることができればその後の治療がスムーズになされるはずです。
糖尿病の薬やインスリンの名称は日本国内ばかりか海外でも共通の場合が多いのです。インスリン注はその作用時間によって色分けしてあります。例えばRは黄色、Nは緑、30Rは茶色という風に。実はこの色は全世界共通です。名前が覚えづらい時にはまず色さえ覚えておけば大丈夫ということになります。

A何の薬かを知る。(簡単な効能が理解できるようになる。)
薬の効き方を知って飲むのと、何の薬か全く知らないで飲むのとでは効果が異なります。
うそのような話ですが、昔小麦粉だけで作った薬を「この薬は今度開発された乗り物酔い止めの画期的な新薬です。」と告げて実験したところ、「確かに効いた」と答えた人は何と全体の58%と半数以上もいたそうです。これはアメリカのビーチャー博士らが行った有名な実験で「プラシーボ効果」と呼ばれるものです。この実験から、薬は「効く」と思って飲んだほうが、効果的であることがわかりますが、一種の自己暗示の世界でもあります。
この話と同様に、何の薬か知らずにただ言われるがまま薬を飲むだけでは、その薬に興味が無いのと同じで、その薬がどう作用しようが知ったことではないということになってしまい、効果も半減してしまう?かも知れません。

B指示された薬の飲みかた、インスリンの打つ時間を守る
例えば、スルフォニル尿素薬は食前、αグルコシダーゼ阻害剤は食直前、インスリンは食時30分前注射というふうに決まった用法があります。
これはただ適当に用法を指示しているのではなく、ちゃんと理由があってのことなのです。スルフォニル尿素薬は食後の血糖値の上昇を抑えるために食前に服用します。また、αグルコシダーゼ阻害剤は食物の分解・吸収を遅らせて食後の血糖値の急上昇を抑えます。ですから、この薬は食後に飲んだ場合には全く効き目がありません。また、インスリン注はある一部の種類(超速攻型)を除いては食前30分となっていますが、これはインスリンを注射してからその作用が現れ始めるのがちょうど30分後位なのであえて30分前と断っているのです。ですから、インスリン注射の場合は30分より早すぎても遅すぎても問題です。このように、自分勝手に好きな時間に薬を飲んだり、インスリンを注射すると薬が効かなかったり、思わぬ副作用が起こったりしますので糖尿病の薬のような作用の強い薬の場合は用法を守るということが非常に大切なことなのです。

C薬を飲み忘れたとき、インスリンを打ち忘れたときの対処法を知る。
Bで用法をきちんと守ることを説明しました。しかし、人間というものは完璧な動物ではなく、間違いや失敗をするものです。間違いや失敗から学ぶことのほうがしっかり身につきます。
一般的に飲み忘れたときの対処法としては、思い出したときすぐに飲む、時間をずらして飲む、その分はあきらめて飲まない、などの方法がありますが、糖尿病の薬やインスリン注射の場合には簡単にはいきません。
薬を飲み忘れたときやインスリンを注射し忘れたときの対処の仕方は薬の種類によっても違いますし、またその人の血糖値や体調の状態によっても異なってきます。従って、その詳しい対処の仕方は、主治医の先生に確認しておくようにしましょう。

D低血糖の症状、対処法を知る。
低血糖の症状および対処法については、上述していますのでそちらを参考にしてください。

E薬には飲み合わせがあることを知る。
血糖降下薬を飲んでいる方やインスリンの注射をしている方にとっては、特にアルコールとの飲み合わせが問題になります。
よく、民間の雑誌などには、焼酎は酒の中でもカロリーが少ないから糖尿病の人でも飲んでよいとか、少量のアルコールは血糖値を下げる効果がある云々の記載を見かけます。これは全くのデマです。アルコールはカロリーが高いのですが、栄養価はゼロです。
アルコールは血糖値を不安定にさせるばかりか、薬を飲んでいる人やインスリン注射をしている人がアルコールを多量に飲むと、低血糖になりやすくなります。しかも、上述で説明した低血糖の初期段階を経ることなく、突然の意識低下を来たし、そのまま死亡するケースもあります。

民間療法について一言!

「血糖を下げる!」、「糖尿病が治った!!」などという文句を新聞の折り込み広告などでよく見かけますが、皆さんは信じますか?もしそれらが本当ならば、製薬会社が目の色を変えて、たちまち薬に変えてしまうでしょう。残念ながら、今の医学では糖尿病を治す薬は1つもありません。
 一般的に民間薬は高価なばかりか、薬効がはっきりしない成分も含まれていて、経口薬との飲み合わせによってどんな副作用が起こるかわかりません。それよりは、主治医の先生の指示を守って食事療法・運動療法につとめ、国によって厳重に安全性や効果が試験されてやっと出来あがった薬を飲んで治療した方が安心ではないでしょうか。


>TOP

Copyright (C) Aru_Tareta_Hibi, All Rights Reserved.