四コマ・ストーリー『コンピュータは奇妙な同居人』

NO.018「未来シミュレータ」

 だいぶ前に地球シミュレータってのがあったけど、今度は未来シミュレータかよ。
 スーパーコンピュータってのも、次々に凄いのが出てくるな。
 ふ〜ん、「未来シミュレータのモニター募集」か。先着千名様に、あなたの明日の運命をお届けします、だって?
 なんとなく怪しい感じだったけど、俺はこういう変なものに弱い。早速モニターを申し込んでしまった。
 三日後から、「あなたの明日」というメールが毎晩届くようになった。
 なになに、「明日、あなたは部長から急に出張を命じられるでしょう。行き先は○○市の××工業です。午後から雨が降りますので、傘をご用意ください。なお、帰りの電車は事故により四十分遅れます。可能なら一本早い電車をご利用ください」
 占いみたいだな。にしては、やけに内容が細かいけど。
 次の日に起こったことは、ぴったりシミュレータの予測したそのままだった。会社に着くなり、××工業への出張を命じられた。出先に着いた頃から急に空が暗くなり、大雨が降り出した。残念ながら一本早い電車にするのは間に合わず、予測どおり事故で止まった電車の中で待たされることになった。
 しかし、こりゃ本当に予測がぴったり当たるんだな。さすがに「未来シミュレータ」なんて名前が付いてるだけある。
 夜遅く家に帰ると、また同じ「あなたの明日」というメールが届いていた。
 お、明日は企画会議で資料が必要になるのか。予定に入ってなかったから、ここで資料を用意していけばポイント稼げるぞ。
 てな具合で、しばらく俺は未来シミュレータの予測を利用してうまくやってたんだが。
 ある日、「あなたの明日」メールを見た俺は驚いた。
 「都合により、あなたの明日の行動予測はお届けできません」
 コンピュータの故障か何かかな?最新型のコンピュータでも故障はあるもんだなぁ。
 だが、その次の文章を読んで俺は凍りついた。
「……なお、明日からの配送はありません。ご利用ありがとうございました」
 おい、それってもしかして……
 俺は、両手ががたがたと震えて止まらなくなるのを感じていた。