四コマ・ストーリー『コンピュータは奇妙な同居人』

NO.012「合わせディスプレイ」

 あの晩は二人とも酔っ払ってたからなあ。
 同僚の雄一と二人で酒をしたたか飲んだ日だった。あいつがふと口にしたんだ。
「なあ、そういや今日って、十三日の金曜日だよな」
「あ……そういえばそうだな」
 雄一はにんまりと笑って続けた。
「ほら言い伝えがあるじゃんか、十三日の金曜日、真夜中に合わせ鏡をすると……ってやつ」
「悪魔が出てくるってやつか? 聞いたことはあるけど……、ただの迷信じゃないか」
「思ったんだけどよ、あれをディスプレイでやってみたらどうなるかな」
「どうなるって……、何も起きないだろ。迷信なんだから」
「試しに、やってみないか? 本当に何も起きないか」
「ばかばかしい。やってみるだけ無駄さ」
「おんや〜? そんなこと言って、怖いのかぁ?」
「まさか、子供じゃあるまいし」
「んじゃ、やって見ようぜ」
 やめとけばよかったんだけど、勢いで二人とも引っ込みが付かなくなった。
 ちょうど僕の部屋にはディスプレイが二台あるんだ。その二台を向かい合わせに置いて、その上にカメラを置く。そして、画面にお互いのカメラで捉えた画像が映るように調整する。
 これで、合わせ鏡と同じになるわけだ。
「さてと、もうすぐ真夜中だぜ。何が起きるかな」
「……何も起きるわけないだろ」
 時計が真夜中を打った。
 その瞬間、ディスプレイから一瞬光が飛び出したような気がした。でも、その後何も起きなかった。
「ほらな、何も起きなかっただろ。ばかばかしい、もう寝よう」
 ところが、次の朝になっていつものようにメールをチェックしたら、一通もメールが届いていないのに気が付いた。
 おかしい。一晩にメールが一通も届かないなんて、まずないことなのに。
「おい、テレビのニュース見たか?」雄一が部屋に飛び込んできた。
「世界中でメールが届かなくなる事故が続出、だってさ。もう大騒ぎだ」
 それを聞いて、僕はあることを思い出した。
「なあ、雄一。コンピュータでメールを送るのに使うソフトウェアって……」
「なんだ?」
「あれ、通称『デーモン』って言うんだよな……」