小田原建築探偵〜大阪万博編      
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万博徒然草11 ブリティシュコロンビア館の材木。

「モミの木は残った。」

どうだ見てくれこの厚さ。大阪十三(じゅうそう)
の喫茶店のカウンターテーブルに形を変え
た、ブリティシュコロンビア館の”モミの木”。

テーラーを営んでいた御主人が万博終了
後木材商経由で入手しこの店を開店した
そうだ。

この木がなかったらこの店を開店しなか
ったかも知れないと言う運命の木。その為
この店の店名プレート、皿にもブリティシュ
コロンビア館の姿が描かれ、カウンターテ
ーブルの厚
みの部分真中(写真真中付近)
には特注の円形プレートが埋め込まれる。

写真に見る様に驚くべきその厚さ。約15セ
ンチくらいある無垢の木が奥行き約9メート
ルに横たわる。この様な木材を現在入手し
ようと思っても困難な事だろう。


登る事も出来たブリティシュコロンビア館は
会場内でも人気のパビリオン。社員旅行で
家族より先に大阪万博行きを果した父の撮
ってきた写真には、このパビリオンに登る姿
が写っていた。

世界最高の木造建築と呼ばれたパビリオン
の一番長い部分は約50メートル重さ約26
トン。

その長さ故、輸送面でも苦労しカナダバンク
ーバー島で伐採された樹齢約270年のモミ
の木は神戸港から会場迄全700メートルの
輸送団を組み、深夜20日間かけて運搬され
たそうだ。

前述のベルギー館の瓦と同様このパビリオ
ンを構成する木材も、はるばる海を渡りやっ
て来たのだ。半年間の為の本物の材料。

半年間の為の”本気の材料”。このパビリオ
ンについて当時の建築関係者は次の様に
コメントしている。

”人工美の多いパビリオン群の中で美しく

雄大な自然美を誇る当館が人気を集め
ているのは嬉しい限りだが我々の心血を
注いだパビリオンが僅か六ヶ月にして消
え失せる幻の万博都市と、その命運を共
にするのは本当に惜しい。
「モミの木は残った」そうなる事を念じて
いる。”

この方が、モミの木がどの様な形で残っ
て欲しかったのかは定かではないが
この木が店主のその後の人生と共に歩
み30年以上も、様々な人の様々な会話
を聴き、現在も生きているという事実。

長年の時間が生み出した表面の風合い。
太陽の搭”生命の樹”、スイス館”光の樹”
と並ぶ大阪万博の三大神木。こちらは直
接触れる事が出来る。

ほお擦りする事も出来る。耳を付ければ
1970年、会場の雑踏が聴こえてくるかも
知れない。「モミの木は残っている」凄い。

ブリティシュコロンビアのモミの木
やはり大阪の寺院の床にも使用
されているとの事。今度行ってみよう。