小田原建築探偵   
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別府湯煙旅情〜幻のビルマ館 万博遺跡 蟻地獄13



Tさんは、その後しばらくの間おじさんの別荘に
行くたびに竜を見て「凄い」と感じていたそうだ。


数年後、その別荘に行く事も無くなりTさんの心
の中からも竜の存在が薄くなって行き、やがて
消えた。


あれから、もう直ぐ30年の2009年。Tさんの
心にふと、浮かんだ事。


「あの竜って、未だあそこに、あるのだろうか?」


虎のマスクを付けた男と出会い度肝を抜かれた
あの日の夜。その日の昼間、同じ様に度肝を抜
かれた2頭の竜。


「行ってみよう。」

Tさんは、あの日の場所へ車を走らせた。


「いた。...竜だ。」


しかし...何と言う...姿。

あの時の竜であって、あの時の竜でない。

長い年月は竜を風化させていた。色鮮やかな
竜の衣は退色し、飾りも落ち、穴が空いていた。

Tさんは、その時初めて思った。

「この竜って一体何処から来たのだろう?」


改めて、この竜の由来を知りたくなったTさんは
近所に住む知り合いの女性に尋ねてみた。


女性は「詳しくは解らないが大阪万博の時のもの
を、ある人がもってきたらしい」と教えてくれた。


「ビルマだかネパールだかコロンビアだか解らん
けど..何だかそこの国のものだって話だ。」


「おおさか ばんぱく?」

「おおさかばんぱくって?....何?」
Tさんのカテゴリーに大阪万博の四文字は無い。


家で「大阪万博 ビルマ ネパール コロンビア」
などキーボードに打ち込んでみた。


1970年大阪でもの凄い祭りが開かれたらしい。

当時の日本人の二人に一人が行った計算になる
らしい。

太陽の塔の写真は何度か見た事があるが、この
祭りに興味を持った事はない。


その内、「ビルマ館 誰か見た人いませんか?」と
関東で大阪万博ビルマ館を探している、もの好き
な男のサイトが引っ掛かった。


そこには、紛れも無くTさんがあの日見た様な
鮮やかで怖い竜が写っていた。


Tさんは、そのもの好きな男にメールを送った。

「あんたが探しているものって、これですか?」


”ビックリ”とか”驚き”とか、”直ぐ行く”の文字が躍る
返信が、あっと言う間に帰ってきた。数日後男も
本当にやって来た。


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