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 小田原建築探偵〜 大阪万博編     
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35.万博本〜公式記録編


公式記録物語part5〜「古書展にて..」


「おやじ!走れ!頼む!ダッシュ!」

受話器越しに叫んでいた私だった。


2000年暮れ、未だ公式記録を入手する事
が出来ずにいた。


その日は新宿デパート恒例の古書市初日。


予め目録に掲載されている本の抽選結果
の問合せの電話の最中だった。

(古書市では大抵、店頭販売の他に開催
前に目録が作成され目玉商品が掲載され
各書籍に応募者を募り厳選な抽選により
当選者に販売すると言う方式が取られて
いる)


大体、この手の抽選に当たったためしが
ない。数冊応募した中に破格値で出品さ
れていた公式記録が含まれていた。


出品した古書店は万博本バブルの到来
を知らなかったのだろう。


参加書店が交代で抽選の問合せに対応
しているようだった。


運良く、万博関係者資料9点と言うのが
当選してしていたが公式記録3冊揃は
はずれていた。


この時対応した書店の店主が驚くべき事を
言った。


「同じものが会場内で15000円で出ている
のをさっき見た。申し込めばこの電話で買う
事が出来る。」


予想外の展開に興奮を隠しきれなかった。
まさにクリスマスプレゼント。


この、おやじがサンタクロース思えてきた。
購入の意思を示しすぐに確保してくれる様
頼み冒頭の言葉を叫んだ。


「お客さん、そんなに急がなくても大丈夫。
”あんな物”すぐに売れやしませんから」


呑気な奴!心の中で叫んだ。


このおやじも万博本の人気を知らないのだ。

今すぐ新宿に飛んで行きたいと心の底から思
った。”あんな物”ではないのだ。


「まぁお客さんが、それ程言うならすぐに確保
して来ます。後で又電話下さい。」


おやじは思っていたに違いない。

「今さら大阪万博なんて...けったいな客やなぁ。
しかも、えらい興奮しとったなぁ。」


すぐに確保すると言ったって、別に早足で歩いた
訳でもなかろう。


途中で顔見知りの古本屋のおやじと立ち話をして
いたのかも知れない。


15分後確認の電話に出たおやじは申し訳
なさそうに言った。


「お客さん、えらいすんません。売れてしもうてた。」

のろまな奴!心の叫びが出そうになった。

またもや入手失敗。


罪作りなおやじ。ドジなサンタクロース。
聞かなければ良かった。

網にまで入っていた魚に逃げられた気がし
た。短い夢を見させてもらった。


私から現在3万でも安いと聞いたおやじは
「へぇー」とスットンキョウに驚いた。


「オオサカ万博がブレイクしてる訳でんな」
ともほざいていた。


電話の向うで、トローンとしていたおやじ目が
キラッと光った気がした。