スロットル・バタフライ
EFIが出現する前は、空気と燃料がキャブレターに一極集中したため、スロットルと言えば事足りた。
しかし現在はEFIのお陰で、空気の供給と、燃料の供給が分かれたのでややこしくなった。現在の意味で
スロットルとは、空気の供給量を決めるバルブの事である。
スロットル・バルブには大別して二つの方式がある。一つはスライド式で、円形の孔が開いたプレートが
空気の吸入管を塞いでおり、プレートがスライドすると通路を開放する方式である。変り種としては、写真機の
絞りを応用した方式で、開口部が吸入管の中央に開く物も有る。もうひとつの方式がバタフライ式で、吸入管
にある円盤を回転して流量を調節する。
スライド式は全開時において、部品が吸入管内に残らないので空気抵抗が無い。レーシング・エンジンの主流を
占めていたスタイルだ。ところがターボ時代になると、応答性や過渡特性で優れるバタフライ式を採用する
エンジンが増えてきた。というよりバタフライ式が主流となった。
スロットル・バルブの設置位置は様々だが、ターボより上流に置くと、バルブを閉じた時にも空気抵抗が無い
ので、長い間タービンが空転し続ける利点がある。なにしろターボは一旦止まると目覚めるのに時間を要する
から、空転している間に減速区間を通過して再びアクセル・オンすれば、低速域からターボの恩恵に与れる。
ただしスロットル・バルブ⇔エンジン間の距離(容積)長いと、今度はエンジンの応答性が鈍くなる。
逆に、スロットル・バルブをターボよりも下流に置くと、バルブを閉じた時に送り込んでいた空気が詰まる
状態になり、タービンの空転を妨げる結果となる。
デサイナーは、エンジンの応答性を採るべきか、はたまたターボの応答性を採るべきか、暫しハムレットの
心境に陥る。ルノーはターボの応答性を採り、スロットル・バルブを上流に設置した。
面白いのはBMWである。BMWは上流と下流にスロットル・バルブを設けてECUで制御した。
写真にあるのは上流のスロットル・バルブだが、下流側は各インテーク・マニホールドに設置されている。
ホンダの場合は下流に設置していたようだ。
(Fulcrum 著)