海馬桶の中身
「ターボはノッキングとの闘い」というのは既に聞き飽きた台詞だが、ここでやっぱり出てきた特殊燃料の
裏技がある。通常のガソリンの場合、プレミアムと呼ばれているハイオク燃料でオクタン価は98〜100といった
ところが相場である。しかしF1ではガソリンなる文言は使われておらず、リサーチ・オクタン価で 102 以下
で、鉛含有量がいくつ未満だの窒素含有量がいくつ未満・・・と決まっているのだ。リサーチ・オクタン価で
102 以下というのは、航空燃料とハイオク燃料の中間あたりに位置する。
ホンダの場合は、トルエン:84% ノルマルヘプタン:16% で、これの比重は 0.84 である。一般の
ガソリンは炭素数が4〜10 のハイドロ・カーボンによる混合物で、これの比重は 0.75 である。ガソリンは
32 ℃ で蒸発が始まり、蒸発が終わりが 150 ℃ と広いのに、件のターボ用燃料は 100 〜 108 ℃ と狭い。
そのため、インター・クーラーで吸気を冷却する一方で、燃料は加熱する必要がある。ホンダの場合は、
冷却水を利用して、燃料を加熱したようだ。加熱装置はエンジンのVバンクの間に置かれていた。ルノーの
場合も、燃料ポンプをVバンクの間に置いていた。
吸入空気温度が低いと充填効率は向上し高出力を得るが、ターボ用燃料はガソリンに比べて揮発性が低い
ので、吸入空気温度が低すぎると、燃焼状態が悪くなり、リーンで燃焼しづらくなる。つまり燃費が落ちる。
そこでインター・クーラーの効率を、どのように設定するかで頭を抱え込む事になる。
(Fulcrum 著)