インター・クーラー
燃焼とは、言わば「短時間に起こる酸化反応」の事だから、分子密度が高いほど、より短時間に反応し、
分子の数が多いほど強い熱を発生できる。そのためエンジンに高い効率を求める時、真っ先に施される手段が
つまりは作動流体(混合気体)の圧縮である。圧縮を助長する補助機器がターボだという事は折に触れて
説明してきた。
この事を、気体の状態方程式に当てはめて説明すると次の様になる。まず気体の状態方程式は周知の如く
P(圧力)×V(体積)=n(分子の数)×R(気体定数)×T(温度)
である。この式に当てはめて考えると、
今の目的(高出力化) : n(分子の数) を増やす事
手 段(ターボの仕事): P(圧力)×V(体積) を増やす。
しかし結果を見ると、どうしたものか、増大するのはn(分子の数)ではなくT(温度)の方なのだ。
そこでT(温度)を抑制してやると、めでたく望み通りn(分子の数)の増大を見込めるわけだ。
(R(気体定数)は無視する。その上で、例えば 4×9 を 12×3 に置き換える事を想像してみよう)
T(温度)を抑制するため、吸入した空気を冷却する装置が、インター・クーラーである。
ターボで圧縮された空気は、180 〜 200 ℃ に至る。このため、エンジン冷却水の温度が 95 ℃ と
しても充分に冷却効果を期待出来るため、初期のターボF1では、水冷&空冷の二刀流が流行った。
吸入した空気はインター・クーラーにより、燃焼室の手前で 60 ℃ 前後(ホンダ RE168E の場合は
40 ℃ という記述もある)まで冷却されてから燃料と混合される。
なお、T(温度)が小さければ、例の自己着火を抑制しノッキングを防止するためにも有効なのだ。
また、厳しい燃費対策の一助ともなる。
(Fulcrum 著)