V型と直列の比較
F1ターボ時代にあって、エンジン・サプライヤーとして双璧をなしたメーカーと言えば、V型6気筒の
ルノーと直列4気筒のBMWという図式になる。この両者を比較すると、以下のようになる。
全般的に見ると、V型6気筒は種々の意味で直列4気筒に勝っているようであるが、BMWとしてはF2で
5回もワールド・チャンピオンを獲得したからこそ、直列4気筒に拘るのだろう。直列であるだけに細身の形状
ではある。しかしフランジの断面が小さいエンジンは、構造部材としては使えず、2次フレームを必要とする。
直列4気筒の強味は、ボア径(シリンダーの直径)が大きいため、類い稀な大トルクを発生できる。
細かい事を言えば・・・
グラウンド・エフェクト時代に間に合った、もう一つのターボと言えば、フェラーリの 126C である。 前年までの水平対抗を
捨てて、ルノーと同じ、V6ターボに参入したのは1980年の事で、この時までオール・イタリーに拘ったため、依然として
セミ・モノコックだったが、1982年にはイギリス人のハーベイ・ポスルズウェイトを迎えて、アルミのハニカム構造による
フル・モノコックとなった。 余談だが、この頃のビルヌーブ伝説がメジャーとなり、今日に至る。
フェラーリの 126C は「クラウンド・エフェクトたる物、床下が命」とばかり、ターボ・ユニットをエンジンの
真上に担ぎ上げた点がルノーとの相違点である。写真が悪くて恐縮だが、後から拝むとカウルの切り欠きから
二本のエキゾーストが見えるが、右のエキゾーストが左バンクの排気を受け持ち、パイプ同士が互いに交差する
レイアウトである。熱い物は上に置けば空気に曝されて善しと言う意味と、ウェイスト・ゲートが一つに纏まる
(エキゾーストの間に見える銀色の部品がウェイスト・ゲート)とか、そんなところに利点を感じたのだろう。
これだとブースト圧の調整も上から手を伸ばしてチョコチョコと出来るので整備性も良い。
ただ、レースの写真を見ると、ターボ・ユニットのケーシングが真っ赤に灼熱しているから、狭いVバンクの
隙間に「焼き栗」を二つも置くのはナンセンスだったのだと考える。フラットボトムになった途端にルノー式の
レイアウトにした。
(Fulcrum 著)