飛行機と自動車におけるエンジンの違い
またもや、物理の話で恐縮極まりない。
馬力は別名、仕事率という。率とは速さの事である。つまり、馬力とはトルク(力)と回転数(速さ)の積
となる。
飛行機は、回転偏向力の影響を嫌うので、進行速度に関わらずプロペラ(エンジン)の回転数を一定に
保つようにしている。つまりトルク(力)を変化させる事で馬力を調整している。
自動車は、固い地面を蹴って走るため、進行速度に関わらずエンジンのトルク(力)を一定に保ち、
回転数(速さ)を変化させる事で馬力を調整している。
どちらにしても燃料の管理によって馬力を調整しているのだが、飛行機と自動車ではセオリーが逆である。
また、飛行機は基本的に、離陸すると着陸まで出力80%で一定速を保つことが多く、戦闘中の小競り合い
でも極端に出力を変動させる事はない。だから排気管内の圧力も安定している。この事はターボが安定して
回転する条件を保証するものに他ならない。
これに対し、自動車は、カーブの度に減速と加速を繰り返し、出力が安定することが無い。だから始終
ターボが停止すると共に、加速時の応答性がエンジンの回転数に伴わない。この現象を、一般にタイム・ラグ
もしくはスロットル・ラグ、或いはターボ・ラグと呼んでいる。
ニキ・ラウダの弁によれば、低回転時のエンジンの応答の悪さはひどいもので、エンジンは異なる二つの
性格を持っていた。7000rpm 以下では、アクセル・ぺダルを床まで踏んでもエンジンは目を覚まさない。
しかし、そのままアクセル・ぺダルを踏み続けて 8000rpm に至ると突然暴れだすそうだ。従ってコーナーの
出口では回転数を稼ぐ必要があったそうだ。
(Fulcrum 著)