一発の銃声が変えた世界
西洋に那須与一が居たかどうかは知らないが、一人の青年が放った一発の銃声は、その後四年に渡る大戦に
発展した。1914年に第一次大戦が始まった当初は、「小さな小競り合いは、クリスマスまでにカタがつく」と
誰もが信じていた。しかし880万人の戦死者は、戦場における兵員の損失では第二次大戦を上回る。
戦争拡大の一因は、両軍の指導者が戦線の実態を把握せずに、圧倒的な軍需物資を投入し続けたからだ。
勝利を至上命題に掲げる作戦が戦争指導を引きずり、政治が戦争に奉仕する変な現象が金に糸目をつけぬ開発
に拍車をかけた。科学技術の発展において、中でも冶金技術は長足の進歩を遂げ、小型、軽量、高出力の
エンジンが普及するようになる。
飛行機は言うに及ばず、タイタニックなどの巨大動力船や大型建築、鉄鋼生産の向上、自動車や家電製品
の普及、そして電気通信の実用化など、今日の基礎的な技術は、すべて第一次大戦の前後に芽が出ている。
その戦後から第二次大戦に至る20年間にそれらが成熟して、次々に企業化していった。
第一次大戦の新しい特徴は、飛行機や潜水艦の登場により戦闘の場が立体的になった点である。加えて
本格的な戦闘車両が出現した事である。これ以降、いわゆる近代戦と呼ばれる飛行機と戦車による戦闘の
形態が確立し、大量破壊と大量殺戮の図式が定着した。これを支えたのが自動車工業である事は否定の手段
が無いだろう。 (Fulcrum 著)