ノッキング

 エンジンとは熱エネルギーを動力に変換する機械の事で、松本零士の言葉を借りるならば、正しく

エネルギー・コンバーターである。問題は、熱エネルギーを直接動力には変換しかねるので、その仲立ちを

する流体が必要となるが、要はガソリンと空気の混合気体がそれに当たる。

 

 自動車教習所に行くと、「エンジンは吸気→圧縮→燃焼→排気」(エンジンの基本原理は、運転免許の

テキストを参照頂きたい)と習うが、実は混合気体の圧縮と燃焼には直接的な関係は無く、圧縮しなくても

燃焼は可能である。しかし燃焼の前に混合気体を圧縮すると、燃焼時間が短縮され、熱エネルギーの変換効率が

向上するので、排気ガスとして外部に排出される熱量が減少する。

 

 ところで、混合気体はある温度、ある圧力に達すると、外部から点火しなくても自ら燃え出す性質がある。

この現象を自己着火と呼ぶが、燃焼室内で混合気体の一部が自己着火すると、局部的に圧力が上がり、衝撃波

が燃焼室内を跳ね回る現象が起きる。いわゆるノッキングもしくはデトネーションである。

 ノッキングを起こすと、火炎が伝わらずに燃え残った混合気体の薄い層が、衝撃波で破壊されるため、燃焼室

の壁面が直接加熱される。最悪の場合はピストンの焼き付きガスケットの吹き抜けピストン・リングの

破損に繋がる。

 

 過給は、エンジンを大型化せずとも、混合気体の圧力を更に高め、高出力を生み出す手段であるが、しかし

「過ぎたるは及ばざるが伍し」であって、過給もやりすぎるとノッキングの最たる原因となる。

 (Fulcrum 著)