新しい波

 戦前のグランプリの性格は、自動車メーカーが研究開発をする場であり、自社技術を誇示する場であった。

戦後の決定的な特徴は、小さなチームがメーカーから独立してグランプリに参加し、勝てるようになった事だ。

その意味でグランプリは、よりスポーツ色が濃くなってきた。

 第2次大戦後に吹いた新しい波を強力に推進した主役は、英国のエンスー 注)どもだった。1950年代に

入ると英国緑がグランプリの過半数を占めるようになる。スペース・フレーム、モノコック、ミッドシップ・・・

次から次に新技術を持ち込むことになる。その大きな要因はエンジンだ。いかに経験と技術を持ち、限りない

情熱を傾けても、小規模集団には必要とされる資金と設備を用意することは全く不可能である。しかし英国には

優秀なレーシング・エンジンであるコヴェントリー・クライマックスFPFという市販品があった。

 クライマックスは、クーパーが開発したスペース・フレーム、ミッドシップに附けてオーストラリア人の

ドライバー、ジャック・ブラバムを得て1959年、1960年のグランプリを13勝している。これをもって、

戦後グランプリにおける新しい波は結実したとも言えるだろう。

 惜しむらくは、その後、3リッター時代を迎えると、経営が傾きグランプリを去った。

                                         (Fulcrum 著)

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注)Enthusiast:熱中している人、(…)狂、(…)ファン、狂信者

 これをモータージャーナリストの 渡辺 和博 氏が、自動車雑誌「NAVI」に寄せた一昔前の記事の中で、

面倒くさくて「エンスージアスト」を「エンスー」と略した事に端を発するらしい。

 今では車好きや旧車に詳しい輩、メカにうるさいなど、とにかくやたらと車に関して詳しい物好きを指す言葉

として定着している。