痕跡器官
乗用車に乗ると経験するが、発進時や加速時にホディの後部が沈込む現象がある。これをスクオッド現象
と言うらしい。(なにぶん古い文献における日本語訳の発音表記はあてにならない。或いはスクワットかも
知れない)要は加速時に、タイヤの回転に応じた反動トルクがホディを捩るために起こる現象である。
ウィング・カー(グラウンドエフェクト・カー)が出現する以前のF1には、それなりのサスペンション・
ストロークがあって、前後のフニャフニャを打ち消す事は、当時としては大きなテーマであったようだ。
アンチ・スクオッド(アンチ・ダイブもしかり)機構として最後まで残ったのが、ラディアス・ロッドで
ある。(下図の青い棒)
ラディアス・ロッドは、リア・タイヤを支えるアップライトとボディを繋ぐ四本一組の連結棒だが、各ロット
の長さを微調整する事で、ドライブ・フィールはかなり変ったらしい。「あちら立てば、こちら立たず」の
性格が強い代物だったが、各ロッドの取り付け角によっては、沈込みを捻じ伏せられたようである。
ティレル P34 (コスワースDFV)
このモデルにもラディアス・ロッドは残っていた。
文献を紐解くと、珍語が見え隠れする。ラディアス・ロッドの長さ調節で変化するドライブ・フィールの因子
は、バンプ・ステア ←→ ロール・ステア らしいが、この二つの言葉は何を意味するのか不明である。
なにか情報があれば御高説を仰ぎたい。
ラディアス・ロッドはウィング・カーの出現とともに無くなってしまう。詳細は後述するが、
このウィング・カー、サス無しグルマと揶揄されるほどサスペンション・ストロークが小さく、スクオッド現象
なんてものが無いのだ。その後に続くフラット・ボトムはウィング・カーよりも強力なダウン・フォースを
得ているし、現在のステップド・ボトムはフラット・ボトムの比ではないのである。
ただし、フラット・ボトムやステップド・ボトムがウィング・カーと異なるのは、従来通りボディが、常時
地面と接するのではなく、四つのタイヤでのみクルマを支えている点である。 (Fulcrum 著)