ハイノーズが空力的に有利な理由
ウィングカーが禁止となり、1989年以降 3.5リッター・ノンターボ時代を迎えて、グラウンド・エフェクトが期待できず、
馬力もない。(「インチキ自動車考古学」を参照) フラット・ボトム時代の最初の頃は、サイド・ポンツーンを切りつめるべきか
否かの議論で、ゴードン・マーレーやロリー・バーンが奇抜なデザインを競った。
そして、結局は「極、当たり前のカタチ」に納まった。
Benetton B186 (1986 年) Ferrari 641/2 (1990 年)
この時期になると、フラット・ボトムとは言え、ウィングカーに勝るグラウンド・エフェクトを獲得する。アンダーパネルは
正に「魔法の絨毯」だ。しかし、マシンの低重心化には拘っていた。
ところが、この年1990年にティレルから、その後の設計思想を根本から覆すハイノーズ 019 が登場した。
ハイノーズ自体は、未消化ながらも前年の 018 からお目見えしたが、例の逆ガル・ウィングは 019 からだ。
ハーベイ・ポスルスウェイト、ジャン・クロード・ミジョー、両名が打ち出したコンセプトは、
「フラット・ボトムのマシーンは、床下の気流によって多くのダウンフォースを得ているが、前部にノーズ部が有る以上、
乱れの無い気流を大量に送り込むのが困難である。そこで、ノーズを邪魔にならない上方に片付けよう」
というものである。その後、ジョン・バーナードがベネトンで作ったB191(1991年)では、ティレル019 のアイデアを
昇華してバナナ・ノーズを発案した。これが現在主流となるノーズの源流である。
Ferrari F1-2000 (2000 年)
ところで当コーナーでは、ハイノーズが空力的に有利な理由を検討してみたい。
(Fulcrum 著)